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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第十章 ナチュラル レッド 4
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第二話 表と裏とⅡ

「まぁ、そんなに心配しないで待っててくれよ。」

 て、ヤバ。ついいつもの口調が。

「あっと、その、俺は礼儀とか敬語とかはどうにも苦手で、ルナのじいさんが物凄く偉い人だってのは解かってんだけど、その……、失礼ばっかでスンマセン。」

 さすがに苦しいかな? (我ながら見苦しすぎだ。)


『なんだぃ、今さら。取って付けたように神妙にしおって。お前がどういう人間かはよぅく知ってるよ、いちいち気取るな、小賢しいだけだ。』

 声が半分呆れてらっさる。

 懐の深いじいさんで助かったか。胸を撫で下ろすって、こういう気持ちかもな。


『ではな、しっかりやってくれよ。』

「了解。」


 通信が途切れた。

 俺、生きて電脳ここを出られたら、敬語の勉強するんだ……。


『こちらパックス3、景虎、聞こえるか?』

 入れ替わりでなんだよ、いったい。


「聞こえてる。これから"N"のアジトに当たろうと思ってる、どうぞ。」

『残念だがそっちの見学は諦めろ。緊急事態だ。』

 なんかあったか?


「どうした? 何か不都合でも起きたみたいな言い方だな?」

『不都合すぎる事態だ、とにかくすぐにゲームに復帰してくれ。』

 声の様子が焦っている。よほどの事が起きたな。


「解かった、すぐ帰る。状況データをくれ。」

 来た道をUターンってだけじゃ済まなさそうだ、最短距離を割り出し、ルート査定。


 思考すれば即座に答えるナビゲートだ、新しいルートが設定され、リモートで俺のデータが目的地へと運ばれていく。多少の危険は織り込み済み。デッドレベル2? なんの事か解かんねーから無視。どうせデータ損傷率だとかで、俺自身のおつむがイカレるかも知れないから覚悟しとけよ、程度の意味だろ。


 リンクデータが高速で送り出される。俺の意識がコピー状態で目的地に再構築される。その感覚に伴い、こっちの俺は端っこから分解して消えていく。


『状況は一気にデッドリーだ。連中に勘付かれた、例のチャイナだ。ヤツの緊急発信からイタ公のダミーがバレたんだ。連中は即、人質の確認に走り、お前の細工に気付いた。』

「ルナと秋津は? 無事か?」

 どうせ、テントのプレイヤーたち……サクラやリラ達には手出し出来ないはずだ。

 待機中だった二人が気掛かりだが。


『ああ、二人は大事を取って後退してもらっていたからな、今のところは無事だ。洞窟のダンジョンへ戻ってもらっている。あそこなら手出しは出来ない。それよりマズい状態だ、テロリストどもは自爆装置を作動させた。』

「自爆装置!?」

 そんなモンがあるなら、先に言えよ!!


 俺の意識はほぼゲーム内に移動を果たし、ポリゴン再構築が始まった。

 あっという間に景虎がフィールドに出現する。周囲は土の壁だ。あれ? ダンジョン内部じゃねーか。


『余計な世話かと思ったが、二人に合流するポイントに微調整しといた。』

「お、気が利くな。」


『続きだが、自爆装置は電脳世界の自己崩壊プログラムだ。当然、本来のゲームプログラムにそんな機能はない。バグに見せかけてゲーム世界を消滅させるためのウイルスプログラムだ。それを仕掛けられて、発動された。』

「そんな事が可能なのか!?」

 思わず叫んじまった。"オクトパシィ"の連中か。

 

 秘密結社の登場ですっかり雑魚クラスに格下げちまってたが、連中も十二分すぎるくらいに危険な連中だったのを忘れていたぜ。なんせ半分キチガイだからな。


 パックス3は冷静な声で切り返しの言葉をまず寄越す。

『現にやられてるだろう、』

 そんで改めて状況説明の続きを始めた。


『バーチャル空間なんてのは、そのくらい脆弱なものだ、本来は。ゲーム世界はパッケージ構成でな、増築しまくった家屋だと思えばいい。そのパッケージを、作った順の逆算で新しい所から解体してるようなものだ。アップデートごとに新しく組み込んだパッケージプログラムから順番にバグで消滅させて、本丸である基本パッケージに迫ってきている。』


 基本パッケージってのは、つまり、ベータテスト以前からあった根幹データ、始まりの街外周ってところか。


「マズいぞ!? このダンジョンは確か後期アップデートで改築された分だ!!」

『だからそっちへ直接飛ばしたんだ、急げ景虎! すぐに脱出しないとそのエリアはリアル数時間ほどで消えるぞ!』

 だから、そういう事は先に言えって!


 いくら最新鋭のチートシステムだろうが、電脳世界の、最大規模のデリート命令文に巻き込まれないなんて保障はどこにもない。俺はまだしも、普通のプレイヤーでしかないルナや秋津はひとたまりもないぞ!


「ルナ! 秋津!」

『レーダー機能を使え、新装備が追加されているはずだ。』

 オケ。ギルドカードを取り出すと、トップ画像の中に幾つか"New"の文字が見えた。最新鋭の癖にこういうベタな事やるのはさすがメイドインジャパンだな。


 俺のデータが完全転送された途端、ダッシュで走る。視界の隅に見慣れないレーダー風の半円が現れた。


『そのフィールドの崩壊状況もリアルタイムで示せるはずだ。健闘を祈る。』

 だから、言うだけ言って通信切るなよ! 手伝ってけよ、ちくしょう!


 またノイズだ。今度は誰だ。誰でもいいから、手伝え!

『こちらパックス2、追加情報だ。システム介入でバグの速度を抑えるパッチが完成した。これから基盤エリアに仕掛けてくるから、速やかに二人を連れて戻ってくれ。』

「お前らの誰かが保護してくれりゃ助かるんだけど!?」


『それは無理だ。現状、ゲーム世界にはパスワードが掛けられ、新規参入が極端に難しい。もともと中に居たお前と、パスを知っているオクトパシィの連中だけが自在に侵入出来るだけだ。結社の方がそのパスを解明しているかどうかは解からない。もし解明していたら、後々厄介になるだろう。正規のゲームパスワードなどとはワケが違う、厳重なプロテクトが為されていると思ってくれ。』


 あっさりとまぁ。俺一人でなんとかしろってのは、誇張でもなんでもなかったってのかよ。

 あくまでサポートしか期待出来ないってことか。悠長に構えてられねぇな。



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