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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第九章 ハングリー ライク ザ ウルフ
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第八話 ネオ景虎Ⅲ

 再び、通信機能をONに。秋津と連絡を取らないとな。


「秋津、こっちはもうじき作業完了する。そっちはお馬さんと合流出来たか?」

『ああ。問題ない。さっきルシから連絡が来たが、適当に誤魔化しておいた。気付かれちゃいないと思うが、念のために確認頼む。』

「OK、こっちでやっとく。もうしばらく待機頼む。」

『了解だ。』


 【遮蔽シールド】展開、範囲は自分自身のみ。声以外の音響をカット、これで俺は世界から消える。

 現在の姿をファイリング、いつでもアメ公のフリが出来るようになった。あとは、【コピー】解除、元の姿に戻して、と。活動再開だ。


 この大テントは収容人数が50人だからな。外で見た4つのテント全部、最初に捨てられた"お荷物"さんたちと見ていいな。使えそうな連中は脅して協力させようってんで、向こうフィールドに集められているんだろう。


「サクラ、ここに隔離された全員を呼んでくるからお前から適当に事情説明をしておいてくれ。詳細は秋津から聞け。」

「秋津さん、無事なんですか、」

 ほっとした顔を一瞬見せた。やっぱこの姉妹と秋津は知り合いらしいな。


「ああ、今は一番の協力者だ。一時的にヤツとの間で通信手段を開通させる。他の皆はもう少し我慢しててくれ、外の敵に勘付かれないようにするのが最優先だ、頼む。」

 カードでスキル選択、サクラの通信プログラム周辺を小細工して、秋津とのルートを確立。

 よし、これで通信機能はONになった。


 次は、テントの設定をいじらないとな。

 しゃがんで、地面に手を着く。プログラム操作、外観は変化させずに、内面だけ5倍の容量に。

 テントがいきなり巨大化した。皆がどよめく。


「サクラ、それに皆。もうしばらくじっとしててくれ。しばらくは外部と遮断されるが、籠城の為だ、了承頼む。出入り口を一時的に塞いで侵入を阻むから。外で何が起きようと、動揺せずにここで待っていてくれ。そんなに手間は取らせない。よろしくな。」

 急がないとな。刻一刻と、スタミナゲージは減っているはず。


 テントの一画に別の出入り口を設ける。仮設の入り口で、全員を収容したら消す予定、と。

 そこを起点に、さらにツールを使ってプログラム操作。別のテントを繋ぐ。


 中へ飛び込めば、案の定で見張りが外に立ってんのが見えた。オープン設定だからな、ホロの出入り口は半開きだ。アメ公同様に引きずり込んでクリスタルで固めて、ポイ。こっちはテロリストとは違うプレイヤーだから、通信その他の小細工は必要ない、手間を取ってる暇もない。


 見張りを巨大テントに蹴り入れて、危ない奴から順にスタミナ回復措置……お、サクラとあの時の売春被害の団体さんたち。どうした?

「手伝います、」

「助かる。」

 女は強いね。


 インベにとりあえずで突っ込んでおいたスタミナドリンクが役に立ったな。女の子たちに渡して、危急のプレイヤーから順に飲ませてもらった。

 そんで、制限時間ギリギリのとこを余裕が出来た。手分けしてスタミナ切れを回避、順次、巨大テントへと誘導、すべてのテントを回ったら改めて全員のプログラム改変措置を行えばいいな。


 サクサク行くぜー。


 手早く済ませ、プログラム改変も完了。

 最後にこの空間を閉じた座標に設定して、ダミーの空間を演出。それぞれのテントにはミラーサイト状態でこのテントの状況の一部が映されているが、禁止措置で侵入は不可になる。これで、人質にされる心配はなくなった。セキュリティを破って外部からプログラムを操作しない限り、手出しは不可能だ。


「ごくろうさん、皆。あとは俺達に任せておいてくれ。」

 希望が見えて、皆の目が輝きを取り戻している。


「景虎さん、無茶しないでくださいね。無事に戻ってくることを祈っています。」

 おう、任せとけ。

 サクラは頬を染めて、わざわざ俺の前に立つ。コイツ、俺に気があるのかー。

 こっちまで頬が緩むぜ。


「景虎!」

 おおぅ、びっくりした!

 リラが、後ろから俺の腰のあたりにぶちかましで体当たりしやがった。


「お姉ちゃんを泣かせたら許さないからっ! ぜったい、ぜったい、帰ってこないとダメだから!」

 おいおい、不穏なフラグ立てんなー。

 思わず苦笑を浮かべちまったが、二人は割と真剣に心配してるみたいだ。


「心配すんな、任せとけ。」

 ちょうどいい背丈なんだ、ついついガキ扱いで髪をくしゃってやっちまう。

 今度は振り払わず、リラは俺の腰を掴む手にいっそう力を込めた。


 よし、秋津が言ってた"外"の様子を見ておくか。パックスの連中にもお勧めされてるしな。

 通信ON、秋津に。


「秋津、救出作戦、第一段階成功。次に掛かる前に、外を見ておきたい、5分だけ時間をくれ。」

『こっちは構わない、だが、お前が倒してログアウトした二人から情報が漏れる可能性もあるから急いでくれ。』

 そっちを忘れてたぜ、まぁ、大丈夫だろ。

 タイミングよくノイズが耳に飛び込む。これはウルフの割り込み電波だ。


『こちらパックス2、テロリストの方は処置が完了した。チャイナは問題ない、放置でいく。イタ公はダミーを置いてる。今も洞窟前でシェスタ中ってことになっているから、よろしく頼む。』

「了解、ナイスタイミングだ。聞いたか、秋津。そういう風に振る舞っといてくれ。」

『解かった、済んだら指示をくれ。』


 外の連中は一部断片データでしか中の様子を窺えない。解かるのは、テロリストの居る座標と音声データ、テロリストの通信会話記録、そんなところだろう。ウルフは先回りでイタ公のVR箇体を押さえ、拘束したということだ。外部での連絡を阻止した。

 まぁ、深く考えるとかなり怖いことが起きてるってことだけどな。考えたら負けだ。


 これでテロリストどもと秘密結社の連中は、秋津の籠城が功を奏して俺が洞窟に足止めされているというニセ情報を鵜呑みにしたはずだ。なんせ見張りのイタ公が連絡してこないんだからな。

 シェスタにこだわるイタ公で助かった。お昼寝タイムの2時間は通信遮断の状態でも疑われない。


 よし、秘密結社のアジトの座標をプログラムスキル【ダイバー】にセット。禁止命令文を無視して俺はどこへでも侵入することが出来るようになる。テント床のポリゴンに手をそえ、潜水の要領で"空間"へと飛び込んだ。

 ゲーム世界さえ離れ、俺は電脳の大海を泳ぐ。



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