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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第九章 ハングリー ライク ザ ウルフ
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第七話 ネオ景虎Ⅱ

 コールカードを見れば、【遮蔽シールド】とかいう便利そうな機能があった。

 これって、姿を消すってことか? レベルを"全体"に設定。条件は色々絞れるらしい、敵だけに感知されなくなるだとか、エネミーのみだとか。便利だね。


 設定をONにした途端、俺の身体は半透明になった。実際、他のプレイヤーやエネミーからは感知されない状態、透明になっているってことだろう。


 馬が嘶き、ピタリと歩を止めた。フィールドチェンジのすぐ手前。さすがは中身プレイヤーだけあるぜ、よく解かってらっしゃる。馬は図体がデカいからな、このまま飛び込んだら目立つこと請け合いだ。

「待っててくれ、」

 俺の姿は消えてても、声は聞こえるようにしてある。その他の音響は一切カットだ。


 始まりの街が見える草原フィールド。イベント用テントが見える、あそこにサザンクロスの連中が隔離されてるってわけか。そんで、寝返り連中が一か所に集められて、包囲状態。

 ルシフェルの姿はないな、その代わりに姫香が張り切ってやがる。


 真後ろに立ってやろ。


「いいこと? 貴方達は本当なら重罪人よ。裏切るなんて……許されることじゃないわ。けど、ルシーが貴方達を許すと言っているから、仕方がないわね。わたしも貴方達を許すわ。」

 芝居がかった態度で姫香は演説をし、聴衆はその言葉に一喜一憂する。完全に洗脳が戻ってやがる。


 もともと日和っただけの連中だ、圧制への反発心もなけりゃ抵抗する気概もないんだもんな。仕方ないか。

 その時その時で、強いヤツになびくだけだ。

 まぁ、すぐに引きずり戻してやるから、待ってろ。


 いつだったかに流しておいた"噂"がな、こういう状況になったら、活きてくるんだよ。

 ――景虎はルシフェルを殺して、自分が成り代わるつもりだ、――


 洗脳状態で思考がアヤシイ連中ばかりなのを忘れてないかい、て話だよ。連中にとっては、生き延びられるかどうかだけが重要になってる。そんで、俺はこういう時の為にあの戦争時、お前を公衆の面前で、わざわざ探し出して叩いたってことなんだよ。

 俺はお前より圧倒的に強く、それでいて、中身はさほど変わりがないと思われてんだ。


 『支配者はどちらでも同じ』そう思ってんだよ、大半の奴らがな。

 ……すぐに寝返るぜ。"日和見を癖付けて"やったからな。


 景虎で突っ込んで、まずは厄介なテロリスト3名を速攻で片付けなきゃいけない。

 1人はテントの入り口に立ってるアイツか。のこり2名の所在を知りたい。


 秋津が突っ込んできたら、ヤツの阻止に向かうために出てくるだろうから、残る1人。

 あのイタ公みたいに目立つ格好しといてくれたら手間がないのにな。


 お、あのヤロウ……いや、"ルシフェル"か。俺が"あのヤロウ"呼ばわりしてたのは、少なくともあんな人間じゃない。まだ人間らしさを残していたから、だから"あのヤロウ"なんて呼べていたんだ。複雑だけど。

 今のあのキャラを俺は"あのヤロウ"だとは呼べない。呼びたくない。嫌悪感で吐きそうだ。


 アイツの傍に居るのがテロリストの残り1人か。例の銃を持ってるから、一発で見分けがつくな。

 テロリストに始末を任せて、あの組織は闇に紛れているつもりでいる。密かに計画を進行出来ると。

 そんなに巧くはいかないんだぜ?


 通信が入った。今度はゲーム内の通信機能だ、秋津か。

『景虎、そっちはどうなってる? こっちはいつでもOKだが。』

 こっちは姫香の真後ろに居るからな、声を出すわけにいかない。メモ機能を使うか。


『こっちは潜入済みだ。兵糧攻めに遭ってるグループの監禁位置を特定してるから、そのまま待機で頼む。』


 監禁されてるグループを救出して、テロリストを2人まで片付ける、そしたら秋津が動き出す。作戦は完璧、まずは一人目のテロリストを人知れずで片付けに入るか。

 姫香の後ろを離れ、街の城壁をぐるりと回って裏のフィールドへ。こっちにもテントがあるな。計4つ、これが監禁されてる連中のものと見て間違いなさそうだ。


『ターゲットを捕捉した、これから仕掛ける。』

 都合よく、一人だけ離れてテロリストが見張りに立ってやがった。


 ツールの中から【潜入工作】群を開く。【ポリゴン操作】、さらに詳細の中から【コピー】を。

 俺の姿をテロリストに描きかえる。通信・連絡の手段は全てシャットアウトの【ジャマー】を張り巡らせて、準備はOK。


 アメ公が次の相手。中堅戦ってとこだな。テントの入り口、ホロを勢いよく跳ねあげて中へ。アメ公がぎょっとした顔でこっちを見てやがる。俺の姿は認識できないからな、いきなりホロが跳ね上がったと思ったか、あるいは中の誰かがやったと思うだろう。

 そして……。


「ジャップ! 大人しく出来ないのか、お前たちは!?」

 思った通り、短気な野郎だ。


 俺に続くようにホロを跳ね上げて、中へ入ってきたアメ公。

 するりと首に腕を回して固め、締め上げつつでチート銃を奪う。【遮蔽シールド】をOFF、姿を見せた俺を見て、アメ公は驚愕の表情を浮かべていた。絞め具合で口は利けなくしてあるからな、声は出ないだろ。

 自分自身に締め上げられる気分はどうだい、兄弟?


 銃のタイプを確認する為に撃ってみる。レーザーは黄色、そんでオブジェクトに変化なし、こいつはイタ公と同タイプのクリスタル銃だ。


「悪いが一足先に退場しててくれ。」

 自身の持ち込んだチート銃を半身に照射され、呆気なく中堅選手は敗退した。

 ログアウトされちゃ面倒だからな、固めてポイ、だ。隅っこに転がしとこ。ついでにプログラムも書き換えて、外との連絡手段を封鎖、これでオケと。


 見回せば、かなりヤバい状態のヤツが散見される。

 ツールから【数値操作】を選択、もうアイテムとかまるで必要ないぜ。隅の方で完全に寝そべってしまっている男キャラの傍へしゃがんで、まずはコイツから作業開始。

 手をかざせばゲージを満タンに、そのまま減らないようにプログラムを書き換えて完了。


「あ、あなたは?」

「しっ、まだ外に気付かれたくないんだ。協力してじっとしててくれ。」

 男プレイヤーは物分りよく頷いて、口をとじた。


「あ……もしかして、景虎、さん?」

 サクラも捕まっていた。俺って解かるのか、すげぇな。


 しーっ、と人差し指を彼女の唇にあて、ウィンクひとつ。待ってな、すぐ助け出してやる。

 隣のリラにも同じように手かざしで細工をして、コイツには頭ぐりぐりしといた。


「むーっ、」

 怒ってやがる。けど、すぐに俺を真剣な顔で見上げる。

「景虎、ぜったい勝って……!」


 多くは言わなくてもいい、それだけで通じる。

 頷いて、そんでリラの髪をくしゃりと掻きまわした。



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