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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第九章 ハングリー ライク ザ ウルフ
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第四話 金とヤクザと秘密結社Ⅱ

『この短時間で、ここまで"景虎"を使いこなしたプレイヤーはいない。スライム形状、ヒューマノイド形状、分裂リモート形状、全て含めての"景虎"というシステムだからな。元々の素地が優れている上に、非常に順応力が高いのだろう、お前さんは。』

 褒め殺しだね、照れるぜ。


「独自に構築されたシステマチックキャラということは……他のゲームにも自在に入り込めるという事なんですか?」

 秋津が質問した。俺は敬語が怪しいからな、コイツに任せとこう。

 スパイ専門の潜入プログラムってことなら、そういう事になるか? しかし、もう一つ肝心な点が不明のままで、秋津もそこには触れそうにない。


 気付けよ、なんでヤクザが米軍機密の技術やらに通じてんだよ、オカシイだろうが。

 ヤクザの親分がまた、不相応な内情を語り出す。


『ゲーム世界だけでなく、電脳上の疑似世界ならばどんなスペースにも潜入可能だ。また、そうでなくては作る意味がない。電脳の海を泳ぎ渡ることを可能とするスーパーダイバーだ。近年の諜報戦はサイバー空間にまで及んでいてな、セキュリティを破るのではなく、網目を潜るように探知の段階から敵を欺く方向へ変わっている。詳細のほうはよう知らんが、技術革新というものは人間の想像の遥か上を行くものらしいな。』


 電脳空間で密接に絡み合うプログラム数式にどう引っかけて別のプログラムであるスパイ機能を潜りこませるかなんて事は、さすがに専門家でもなきゃ意味がさっぱり解かりゃしないだろうさ。

 俺だって、一通り聞いただけじゃまるで理解できない。ヤクザと政府と財界の繋がりもな。


『どうしたい、景虎。何か疑問でもあるかい?』

「いや、サイバーテロ関係になんでヤクザが関わってんのかと思ってさ。」

 ルナが泣きそうな顔をする。すまん、俺はちとデリカシーに欠ける。


『それについては面倒くさい説明をせにゃぁならねぇな。だいたいのトコを掻い摘んで言うなら、日本の政権は任期があまりに短いとは思わねぇかい?』

 はいはい、充分な返答だ。


 日本を動かしてんのは官僚だったな、その官僚と深いパイプを持ってんのが経済界と。そんで、その経済界を陰で牛耳ってんのはヤクザなんだから、そりゃトップが繋がってんのは当たり前、か。

 俺が納得した顔をしたのを見計らって、会長はまた話の続きを始めた。


『"景虎"というシステムが搭乗者を選ぶという事は、これで理解がなされただろう。問題はな、景虎がそうであるように、電脳システムというものは個人差というものを考慮の上に成り立つという点だ。"人間は平等"と理想の上では語っているが、実態は違う。非常に個体差が激しい生命体だ。本来は固体ごとに調整しなければ電脳空間にコピー人格を置くことなど叶わない。ゆえにゲーム上では万人にリンクさせるためにあえて複雑なリンク構造を取ってはいない。無理やりに統一規格に嵌め込んでいるという事だ。ここまでは解かるな?』


 平たく言えば、生身の脳みそとバーチャル世界の電脳とを繋ぐセキュリティは、技術の進歩に反して緩すぎるくらいにユルイって事か。簡単にハッキングを許してしまう程度には。


『そこに目を付けた連中が居た。人間、最終的な到達目標は"永遠"ということだ、奴らは最初期の頃には電脳世界で永遠に君臨することを考えたが断念している。サイバー世界など虚実に過ぎんからな、そこの王になったところで得心などいくはずもない。次に考え出したことが……』

「乗っ取り。」

 俺がぼそりと呟いた言葉に、隣の秋津がいやに派手なリアクションで振り向いた。


「まさか! サイバー空間に構築される個々の電脳は、リアル世界のコピーに過ぎないはずだ。それがどうやって本体の入れ替わりに関われるっていうんだ!? 不可能だ!」

 嫌な仮定が脳裏によぎったんだ、だから必死に否定する。

 ルシフェルが、すでに、何者かに乗っ取られている可能性。


『それが可能になってしまった事が発端なのだ。開発陣は懸命にセキュリティの穴を塞ごうとしているが、利用しようという側の動きのほうが今回は早かった。先に言ったが、個体差が激しいのが人間の脳だ。誰の脳でも関係なしに乗っ取れるという話ではない。自身に近しい思考形態をした脳髄でなければ、入れ替えは難しい。』

「じゃあ、デスゲームを仕掛けた本当の狙いは……、」


『隔離だ。閉じ込めたプレイヤーは、いわばオークションの商品。後から思考形態の似通った脳を選び、パターンの一致したメンバーが買い取るという方式だろう。お前さん達は、売られたのだ、闇組織のメンバーにな。』


 商品はそこら中に居る、ゲームを利用する若い連中なら誰でもOKだ、そんでリアルでも整形の技術はアバターをいじるより簡単、元の自分にするくらいわけはない。

 細胞レベルだけは、現状の科学でも操作出来なかった。人は永遠の命だけは手に入らないと思われていたが……悪魔の技術が開発されちまった、てことか。


『先に言ったように、日本はVR技術によって立っている。VR立国だ。ゲーム市場も世界経済に深く食い込んでいる。それを大混乱に落としかねない計画が、今回の"ディストピア計画"なのだ。黙って奴等のしたいようにさせるわけにはいかん。壊滅させねば、日本の基幹産業の、ひいては日本経済の危機を招く。いや、表沙汰になるだけで、世界経済が大混乱に陥るだろう。完全に、潰さねばならんのだ。』

 "これはもはや戦争だ"と、ヤクザの親分は力説した。


「信じられない……、どういう仕組みにすれば、VR箇体で繋いでいるだけの生身の脳髄に、他人の意識を移しこめるというんだ。電脳世界にある意識はコピーに過ぎないんじゃなかったのか。」

 誰に言うでもなく、秋津が独り言のように吐き落した。


『コピーさ。ただし、本物と寸分変わらねぇ。VR箇体を通して、人間の脳波を電気変換してVR世界に流し込んでいるんだ、VR箇体はアダプタの役割で、電脳は生の脳髄のコピー。だからよ、実際に人の意識は電脳世界を闊歩しているんだ。そして、開発されちまった技術というのはな、兄さん、"脳髄上の意識の上書き"なんだよ。今までは不可能だった、それが、医療分野で偶然作られちまってな、転用を考え付いたキチガイが居たってことなんだ。』


 さらりと言ってくれるぜ。

 けど、どんな新技術にも事故は付き物。そうして、後からセキュリティというものは確立されていく。

 VR技術が更に向上する過渡期に起きた事件って扱いにされるんだろう。



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