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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第九章 ハングリー ライク ザ ウルフ
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第二話 秋津の説得Ⅱ

「もう、今はそれどころじゃないでしょ!? 早く、復唱してよ、ちゃんと!」

 ルナもいい加減で苛立ってたようだ、いつも以上に短気な様子でプリプリと頬を膨らませる。


 しかし……、ロックキーが寿限無って……、考えたヤツは相当のお調子者じゃないか?


 けれど、不貞腐れながら復唱した俺の言葉の終わりと共に、いきなり、身体が光を発した時点で信じざるを得なくなった。一瞬の光が収まると、俺の服装は今まで着てたものとまるで違うものに変化していたからだ。


「どんなに疑い深い人でも一発で信じるような仕掛けにしとくって、おじいちゃんが言ってた。」

 うん、まぁ、これは信じざるを得ないわ。


「すげぇセンスだな……、」

 秋津の褪めきった感想が痛い。恐る恐るで俺も改めて変身後の自分の格好を見た。


 なんだよ、この厨二装備全開ってデザインはっ。

 ベルトだらけ、どこのパンクロッカーだって感じに鋲がバシバシ打ってある。

 背中にはデッカイドクロと絡まる薔薇と棘。は、恥ずかし過ぎる……!!

 俺の元の服に戻してくれー!!


「大丈夫だよ、景虎。慣れたらどってことないから!」

 ルナ! おまえ、それ、慰めてねぇ!


「で? 今の状況はどうなってる? ルシのバックに居る連中の正体を知ってるみたいな口ぶりだったな、」

「うん、おじいちゃんに聞いてたからね、知ってた。」

 絶望感で溺れそうな俺を無視して二人は話を再開した。


 マテ、俺を無視るんじゃねぇ……!


 立ち直りきれない俺に、ルナが視線をチラリと投げた。

「景虎のバグも、本当はバグじゃないよ。もし、何か起きたら不死身のスライムを探せって、お父さんに言われてたんだよ。」

 え? 不死身はまだ解かるとして、スライムまで指定してただと? まさか?


「不死身って、俺だろ? どうして、俺がスライムにINするって……、都合が良すぎないか?」

「最初から、こういう時の候補プレイヤーは決められてたんだよ。今回はたまたま景虎が……ううん、虎太がINしてただけ。覚えてない? ゲーム中に、キャンペーンCM流れたんじゃない?」


 ……あ。

 そうだ、忘れてたけど。確か、あの日の前日、俺はメインキャラでINしてて。

 で、ペット経験値5倍キャンペーン中っていうガイダンスが流れてきて、ホームのCM見逃したと思って慌ててログアウトしたんだ。本当は馬の経験値稼ぎがしたかった。けど、スライムでしかIN出来なかった。

 不具合が時々あったから、あまり気にせず、そのまま……。


 他の連中にいちいちキャンペーンの事など聞きやしない、まさかあれ、嘘だったのか?

 俺のVR環境に小細工して、俺が疑わない程度に徐々に操作して、俺はまんまと不具合だなんて勘違いを起こしてこの計画に乗せられたってわけか?


「て事は、景虎は仕組まれてスライムINさせられたっていうのか?」

 俺より先に秋津が質問した。


「そうだよ、スライムの方が色々なチートを仕込みやすかったんだって。」

 そうか。だから、景虎とリンク出来たのか。最初からそういうプログラムなんだ。


 て、ことは……俺はバグじゃない……ログアウトも、出来るって事か……?

 はは、マジか。やった、希望が見えた。


「景虎、まずはスキル枠を覗いてみて。ダミーが無くなって、本当のスキルが出てると思うけど。」

 ルナに促され、俺はふたたびギルドカードを取り出した。


 ああ、本当だ。スキルは一人のキャラに20個程度だが、俺のは二段で40個の枠が取られている。

 けれど、そのほとんどは戦闘時には関連しないものばかりだな、どういう事だ?


 スキルは通常、意識しただけで発動する。目で確認したり、組み替えたりは、このカードで管理するシステムになっている。スキルが無ければその動作はリアルで出来ることであっても、ゲーム内じゃ出来なくなる。

 スキルの組み合わせがゲーム攻略には重要ということになっていた。通常の場合は、だが。


「景虎の戦闘用スキルはすべてパッシブで、表面には出てこないよ。ありとあらゆる格闘技術が組まれてて、自動でサポートしてくれるはずだよ。景虎はイメージするだけだって。そう言ってた。」

「完全にチート仕様、ていうより軍事兵器並みだな。どこぞの掲示板で軍事機密情報を扱ってるのを見た覚えがあるが、そこに出てた話みたいだぜ。」

 秋津が半分呆れ顔で茶化すように言ったら、ルナは真面目な顔で肯定してのけた。


「そうだよ。米軍兵器の技術転用をされたのが"景虎"だよ。」

 グゥの音も出なくなって、俺達二人ともが黙る。ルナは続けた。


「米軍と日本のトップ企業との秘密協定で密かに開発されていた技術が、景虎の中に活かされていて、有事の際に備える実験を繰り返しで行っていたのが最初なんだって。詳しいことは、後でおじいちゃんに聞いて。」

 ルナは足を拘束するクリスタルの塊を剥がそうと、押したり引いたりで、そして俺を見上げた。


「景虎、タスク上にあるスキル群は便利ツールで、そこに【解除】っていうのがあるはずだよ。早く助けて。」


 スキルタスクは突発状況下以外で使う便利ツールのみを集めたもの、いわば、スパイツール一式っていう扱いになるらしい。ずらりと並んだ特殊スキルはどれも、ジェームス・ボンドかイーサン・ハントあたりが使いそうなものばかりだ。


 【解除】のスキルをONに切り替えると、さらに細かい分類のなされたスキルが複数個、画面上に現れる。

 物理解除、暗号解除、幾つか並んだ中から【状態異常解除】を選ぶ。

 右手の平が淡い光を放つ。かざすと、ルナの足を固定するクリスタル塊が存在を薄めはじめ、消滅した。



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