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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第九章 ハングリー ライク ザ ウルフ
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第一話 秋津の説得Ⅰ

 洞窟入口は、中とはまるで違ってリアルの洞窟に近い外観をしている。

 フィールドのリアリティに合わせてあるからだ。


 けれど、一歩中へ入れば状況が変わり、一気に作り物臭い内装になる。四角い土の壁だ。

 ここはダンジョンフロアと呼ばれていて、インスタント・ダンジョンの生成拠点になる場所でもある。

 もちろん、エネミーは涌いてこない。


 意識を秋津のカケラへと移す。

 隙を見て槍に忍ばせたカケラを剥がして、反撃するしかないな。勝負は一度きりだ、おそらく。


 意識を飛ばせばすぐにランスの秋津と、ルナの姿が見え始める。

 そして、音声が。


「くそ、幾らなんでも遅すぎるだろ。ルシのやつ、何をしてるんだ、いつになったら連絡する気なんだ、」

 どうやら秋津とあのヤロウの間の連絡手段も復旧してるっぽいな。

 秋津はうろうろと一室内を行ったり来たりして、そうとうに苛立っている。


「だから、裏切られたんだって言ってるじゃない。」

「なんでお前にそんな事が解かるんだっ!?」


 なんだ、何かおかしいぞ。

 秋津の苛立ちは、ルナの挙動が原因なのか? ルナのやつ、何を言ってる?


「外と連絡が取れるんでしょ? あのイタリア人が居たから喋れなかったけど、わたしも、外と連絡が取れるんだよ?」


 なんの話だ? ルナ?


「秋津さん、狙われてる海藤帯刀の娘って誰か知ってる……?」

「そ、それは姫香だって、ルシが、」

「ううん、違うよ。彼女じゃないよ、本人が言うんだもん、間違いないよ。」


 ルナは下を向いたままでポツポツと言葉を紡ぎだし、秋津に聞かせている。

 秋津は、混乱気味なんだ、落ち着かない様子で行ったり来たりを繰り返す。

 俺もにわかには信じられない気分だ。本人ってことは、まさか?


「わたしが、海藤帯刀の娘だよ。18歳なんて嘘だよ。敵を騙すために、お父さんの部下がニセの情報を流したんだよ、ほんとはルナ、12歳だもん。」

「は、はは……、なら好都合じゃないか、この事をルシに教えたら……、」


「それをやったら、あなたは殺されてしまうよ。特定が出来ないから、計画は辛うじて阻止されているんだって、おじいちゃんが言ってたもの。」

「計画……て? なんの話だ、いったい! 外で、いったい何が起きてるっていうんだっ!?」


 どういう事だ? いや、それより、こっちの計画まで大幅に狂っちまった。

 今、ここで秋津を始末してルナと合流を図ろうと思っていたが、それが出来なくなっちまった。


 秋津を倒せば自動的に陣地へ戻って生き返りが起きる、この場から秋津は居なくなる、が、この話をルシフェルに聞かれるのは拙いような気がしてきたぞ。秋津をそのままにして説得なんて、今のカケラでしかない俺にはさすがに無理ゲーだ。


「お願い、秋津さん。景虎と合流して。このままだと、全員が殺されてしまうの。ルシフェルが連絡してるっていう相手は、テロ組織なんかじゃないの。もっと恐ろしい連中なの。信じて!」

 ルナは、きっと途方もない秘密を抱えている。


 それを、秋津も感じ取ったらしかった。


「……ヤツを呼べば、本当にすべてを話してくれるんだな?」

「うん。約束するよ。」

 ただならぬ状況ってのは、コイツもひしひしと感じていたはずだからな、賢明な選択だ。


 よし、本体にチェンジ。

 向こうでコール待ちだ、攻略パーティへの招待が飛んでくるはず。


 座らせておいた景虎にチェンジ。ゆっくりと瞼を上げる。

 呼び出しのアラームが鳴っている、久しぶりに聞くメロディーだ。


 俺はペットでINしてたからな、ギルドカードの携帯は出来なかったはずだ。景虎もオートブースターでルナの装備品扱いだから、カードなんか無いと思ってたが、あったらしい。色々と設定がオカシイキャラだからな、別に驚かないぜ。


 胸のポケットからカードを取り出す、これを取るのも久しぶりだ。ギルドカードなんて、デスゲーム中は何の役にも立たないからな。運営へのクレームや要望を届けるためのメール欄だとか、無駄な機能も満載だが。

 (そもメールだから即対応なんか望むべくもない、ただの不満逸らしのツールだ)


 スライド式の画面を操作して、コールの元を表示。パーティへの参加呼び掛け、届け人は秋津だ。

 OKを選択、"すぐに移動しますか?"と表記される明るい文字を指先で叩けば、これで時空を移動できる。

 浮遊感が過ぎれば、目の前に秋津とルナの姿がある。


「よぅ、そっちから呼んでくれて助かったぜ。奥の手を使わにゃならんところだった。」

「お前は本当にバケモノだな、まだ手の内を隠してるのか、」

 吐き捨てるような憎々しげな声。そんで、秋津はルナの方へと向き直った。


「さぁ、呼んだぞ。本当のところを話してくれ。」

「その前にルナを開放してやれ! その塊を取ってやれよ!」

 秋津が俺を睨む。

「それが出来るヤツは外に居た、」


 ちっ、あのイタ公か。

 秋津の言い方は、俺が倒したことを見透かしての嫌味だ。


「大丈夫だよ、景虎のツールに【解除】あるから。」

「え? そんなモンないぞ? 勘違いしてないか?」

 そんな便利そうなスキルはない、景虎のスキルはほとんどがクソなんだが。


「ロックされてるからだよ、ロックを外す鍵はわたしの剣だよ。持って。」

 差し出されたのは、例のチートの武器だ。サブウェポンの双剣は俺のインベには入らないからな、ナックルの方を片付けて……、改めて、ルナから剣を受け取った。


「装備して。じゃあ、解呪の呪文を教えるから、復唱してね。」

「ああ、」


「寿限無寿限無後光の擦り切れ、」

「ちょっとマテ、」

 緊張感が一気に大気圏外だ。


 固唾を呑んで見守っていた秋津までが、がっくりと肩を落とした。

 呪文考えたヤツ、出てこい、ぶん殴るっ。



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