表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第八章 ドリーム ノット アウェイキング
86/116

第十一話 次鋒戦Ⅱ

「仕切り直しだ、スライム君。」

 おどけた仕草でイタ公が宣言。そして優雅に腰を折る。挨拶だ。


「オクトパシィから派遣されてきたヒーローだよ! 君たちを救出に来たんだ!」

 なんのポーズだ、それ。

 古いアクションヒーローみたいに、腕を十字にして身体を斜めに身構えてた。


「あれ? あっ、そうか、その姿の時は喋れないのか。待っててあげるからさ、ヒューマノイドにチェンジしなよ! 君とお喋りがしたいんだ、素晴らしい日本のアニメ文化について語り合おうよ!」

 イタ公はマフィアの顔とマニアの顔との二面性キャラのようだ。ころころと表情が変わる。


 アホっぽい言動だが、実際は油断のならない空気が滲み出ている。


 時間稼ぎが主目的、魂胆は解かってるんだがここは誘いに乗っておく。

 時間がない、なんとかしてコイツを速攻で片付けなきゃならない。俺は"皮"を引っ張り出して、素早く口の隙間から潜りこんで景虎に変化した。今、この瞬間が俺の最大のネックだ、寝転んでしまっている。


「おー、景虎が登場したよ! ニンジャボーイ、かっこいいね!」

 黒づくめは忍者だと決めつけてやがるな。


「サンキュゥ、ニンジャボーイ。手間が省けたよ。」

 すぅ、と上がる腕、向けられた銃口。レーザーが発射され、起き上がりモーション中の俺の頭を固めた。


 続けて、下半身全体を。完全に動きを封じられた。

 目の前で皮を着ればこうなるのは解かりきっていたわけでな。もちろん、計算だ。一か八かだけど。


「あーあ。こんな簡単に済むってのに、呈さんは油断しすぎだよね。」

 そうだな。その意見には俺も賛成だ。


 あの野郎も油断したが、たぶん、アンタほどじゃない。

 俺が何を狙ってるか、おれの特殊性がどれほどのモンか、アンタは知らないのに慎重さが足りないぜ?


 ひっくり返ったまま、起き上がろうともがいてる素振りだけ、見せておく。


「いくら足掻いても無駄だよ、景虎くん。さて、秋津に連絡するとまたシェスタの邪魔をされちゃうからな。コイツの始末は後でいいや、一眠りしてから、連絡を入れるとするよ。じゃ、ボナノッテ(おやすみ)。」


 これはまた。

 好都合ってか、思った以上の油断をしてくれやがったぜ……!


 秋津に連絡するために、洞窟入り口、ダンジョンフロアに戻るだろうと踏んでたんだが、もっといい。

 昼寝の続きを始めやがった!


 正直、全体を固められたらアウトだと思ってたんだよな。どこか一部がクリスタルに覆われなけりゃ、勝算はある。コイツは"皮"だからな。


 景虎にリンクしていた俺の本体を収縮してスライムに戻る。そんで、ポリゴンのツナギ目をこじ開けて紙縒りのように細くした本体を捻じ込む。そのまま、糸状の俺は景虎の皮を脱出した。

 イタ公の始末をつけなくちゃな。そっと忍び寄り、袖口に仕込まれたレーザー銃を……。


「オゥ! 脱出したのか!? くそ、」

 気付かれた!


 身体を目一杯で伸ばす、銃口がこっちを向く。

 発射と同時に俺のフルスイング、細い糸状の俺は硬質な刃と化す。ピアノ線より凶悪だ。


「ぐ……!」

 肩から斜めに切断されたイタ公が、呻いた。


「そんな……VRの常識さえ覆すのか? 君は、いったい、……本物の人外生物ビジターか?」

 恐れを含む眼差しは、これで二度目。

 あの中国人よりはまともな台詞を吐いて、イタ公はログアウトした。


 驚愕するのも無理はない。

 VRとはいえ、俺は人間で、人間の"カタチ"を記憶しているはずなんだ。人型の意識があるはずなのに、粘体生物のスライムに馴染んでいるばかりじゃなく、糸のようにも変形出来る。

 手足の感覚はどうなってるんだ? て話だよ。要は。


 答えとしては、意識してない。

 手足を意識したら、ほら、自然とスライムは四肢をもった形に変化する。これが本来の俺だから。

 慣れってのは恐ろしいもんだね、もうペットINの補助機能以外の形状でも自由自在に取れてしまうんだからな。外観に意識が引きずられるってことなのかも知れない。


 普段なら、リアルで人間の形に慣れてりゃ、ゲームにINした時に違和感を感じるが、補助機能で脳の認識が慣れるまでは自動でサポートされる。イメージするんだ、俺の腕は触手になり、脳で考えたことが実行される。

 仮想現実でのロールプレイをプログラムが補佐してくれる。


 スライムが人型でもなんら問題はないだろうが、ゲームの制約でスライムってのは地べたを這いまわる粘体生物ってプログラム上の設定に縛られるから、だからあの姿なだけだ。人型を取ってんのは苦しい。

 うぅ、もう限界っと力を抜けば、ぐちゃっと潰れて元のスライム形態だ。


 だから、人間になるには"皮"が要るんだよな。


 クリスタルで固められた景虎の皮に近寄る。やっぱり、で読みは当たっていて、"皮"はクリスタル片を枕に横たわっていた。オブジェクト扱いだからな、エネミーは固められてたが、木々や地面のポリゴンに影響がないから、そうだと睨んでた。


 用心して、触手で絡め取って引っ張り、クリスタルから離す。

 氷が解けるように、クリスタルは目標物を失って無へと帰した。中国人の武器と違って、オブジェクトへの効果は無効に設定されていたらしいな。

 ふたたび景虎にINして、洞窟へ。


 イタ公を人質に取る作戦は失敗した。洞窟に立て籠もる誘拐犯と、どうやって対峙すりゃいい?

 こうなりゃ、いよいよ奥の手か。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ