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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第八章 ドリーム ノット アウェイキング
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第十話 次鋒戦Ⅰ

 ルナを救出するには、ダンジョンから引きずり出してくるしかない。

 強制で俺とパーティを組ませる、そうしないと同じダンジョン内部へは入れないんだ。


 これがリアルとゲーム世界の違い、厄介な幾つかの点の一つだ。


 フィールドダンジョンならば、途中参加がOKだ。誰でもフィールドに入るだけで同じ敵に相対する事になる。

 けれど、ここのようなダンジョン……インスタント・ダンジョンと呼ばれるシステムに則ったダンジョンの場合はまた別のルールに支配される。同じチームのプレイヤー同士でしか、同じダンジョンにIN出来ないんだ。


 パーティを組んだ者同士だけで攻略するクエストの扱いで、それぞれにプライベート空間が割り当てられる。

 別のパーティが同時にダンジョン入り口に侵入しても、別のメンバー同士は中で出会うことはないんだ。別の座標にダンジョンが展開しているから。


 つまり、人質に取られたルナの居る場所へは、別パーティ扱いの俺は絶対に到達出来ない。

 奴らのパーティに招待してもらう必要があるんだ。それも、パーティリーダーが承諾しなくちゃならない。向こうのリーダーは恐らく秋津だ、ヤツが俺を招かない限り、俺は同じダンジョン座標には行けない。


 このゲームの場合は、招待があれば攻略途中のパーティチームに合流することが可能だから、なんとか秋津を説得できればルナを救いに行けるんだが。

 完全に籠城だ、難攻不落の土中の城に籠もられた。


 なんとか連絡を取れれば……。

 ヤロウは秋津を捨て駒にしようとしている、それを教えて納得させるしかない。

 あのイタ公が通信手段を使えるとか何とか言ってたな、そう言えば。


 まずはヤツを倒して、秋津と話をする。意識を飛ばして、本体とチェンジ。

 土の中でも外の音は聞こえてくる。ゲーム序盤の散歩コースだ、小鳥のさえずりや長閑な公園にでも居るような、穏やかな音響に包まれる。


 方針が決まれば、ここで潜ってるのも時間の無駄か。

 お、イタ公の声が聞こえる。ちょうど近くに来てたのか。潜水艦のように土中のポリゴン断面を進んでいく。細く潜望鏡のように伸ばした触手の先で視界をクリアにした。


「んー、芝生に寝転んでシェスタ。最高だね。」

 無防備に寝転んでやがる。こっちとしては好都合だ。


 水中から獲物を狙う鮫のように、静かに標的に近付いて、そっと、伸ばした触手の潜望鏡も引っ込めて。

 地面ギリギリにほんの微かに覗く程度に引き絞る。

 するすると土中を進む俺の気配はスキルのお蔭で誰にも察知されはしない。


 ヤツの姿がじょじょに近付いてくる。

 目の前に来た。


「う、うわぁ!!」

 突然、土中から襲い掛かったスライムの【呑み込み】攻撃に、イタ公は慌てて身を起こす。

 目一杯に広がった俺は青い壁の状態で、そのままイタ公に覆いかぶさった。


 巨大な波と共に現れた肉食の大口がすっぽりと人間一人を呑み尽くす。

 滅茶苦茶に暴れてやがるけど、無駄な足掻きだ。攻撃力、防御力ともに最強のエネミーである俺に呑まれたが最後、絶対に抜け出ることは出来ない。俺のスキルを破るには、俺の防御を突き破る攻撃力が必須だからな。

 酸欠になってへたばれ。


 そういや、有名な台詞あったっけ。第二次大戦中、イタリア軍があまりにお荷物だった事を評して。

 "次にやる時はイタ公抜きで!"なんて揶揄されるくらい軟弱なお国柄だったらしいが。今はどうなんだ?


 パニ食ってたイタ公が急に動きを止めた。


 冷静さを取り戻したか。けど、それでもこの状況は覆らないぜ。

 腕をもぞもぞと動かして、なんだ? 顔面のギリギリあたりに銃口を……銃口!?


 ヤバい! チート武器だ!


 面の皮一枚って距離で、イタ公はチート銃をぶっ放した。黄色い光線が天に向かって伸びた。

 俺は咄嗟にヤツの頭部を覆った部分の粘膜を退避させて、光線を躱す。イタ公は自分に当たるかも知れないギリギリの距離で、手や足、胴の回りにレーザーを照射して、俺を引き剥がしやがった。


 くそ、これ当たったらどうなるんだ!?

 完全に奴から離されてしまった、なおもレーザーを撃ち放ってくるイタ公は落ち着き払ってる。

 俺に当てるためというより、俺を下がらせて距離を保つために計算してレーザーを撃っているんだ。


 ラストの三連射で完全に距離を取られた。


「焦った、不意打ちには注意してたんだけどな。ヒューマノイドだったりスライムだったり、本当に君は強敵の名に恥じないエネミーだ。いちゲームファンとして、君が他のゲームにも実装されることを願うよ!」

 爽やかというより、能天気な笑顔でイタ公が言った。俺はエネミーじゃねぇっ!


 ふと、異質なものが視界に映った。なんだ、あれ。


 氷漬けのようなジャムの姿にぎくりとする。ルナの足にくっ付いてたあのクリスタルだ、ジャム一匹がクリスタルに封じ込められて、固められていた。とばっちりを食らったんだ、ここらへんは割とジャムがうろうろしていたから。


 なるほど、あのレーザーに当たるとああなるってわけか。

 ルール無視はさっきの中国人よりひでぇな、衣装も武器も改造品かよ。マフィアめ。

 

 イタ公は軟弱じゃない。単に、先の大戦はマフィアが儲からなかったから手を抜いただけだ。

 ゴッドファーザーを産み落とした国は、伊達じゃないってか。



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