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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第八章 ドリーム ノット アウェイキング
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第六話 先鋒戦Ⅱ

「ぬぅ!?」

 一瞬だけ、オッサンの視界を遮ったらしい。この隙に乗じる!


 戦闘モードで発動する【加速】で一気に距離を詰める! と、見せて、身構えたオッサンの横をすり抜けた。


「あぃや! 逃げるのか!? 敵前逃亡はブシドーに反するよ!」

「俺、武士じゃねーし!」

 それにそもそも逃げてねぇ。

 まずは厄介なチート武器を封じさせてもらうわ、おっさん。

 付いてきな。


 耳の穴から触手伸ばして背後の視界も確保。

 やっぱりでガンガンぶっ放してきやがるオッサンの分解破壊光線を避けまくった。

 オッサンの驚愕のカオったらねーぜ。"なんで避けられる!?"てなモンか。


 そんで……、コイツだよ! 見えてきたのはアホ犬こと"暗黒竜"!


「そういう事か! 本当に日本人はズル賢いよ! 我々を見習って正直に生きたほうがイイネ!」

「いや、中国人には負けるから!」


 まったく口の減らない面白いオッサンだな、敵でなけりゃ友達登録申請したいくらいだぜ。

 さすがはプロってことで、説明の必要がない察しの良さだ。暗黒竜を盾に取って、そのチート武器を封じてやろうってぇ俺の意図はすぐにオッサンに通じた。


「アホ犬にもしもの事があったらどーするよ!? その武器、さっさと片付けな!」

「当てないように注意して使うから、心配無用だヨ!」


 アホ犬の索敵範囲ギリギリでの攻防。

 あいつが起きてきたら、それはそれでまた厄介だからな。見解の一致ってわけでオッサンも範囲には踏み込まずに、何とか俺を殺せるポジションの確保で躍起になってる。

 視界の隅、アホ犬がアホっぽい大あくびをしてやがるのが見えた。あいつ、静止画だけだな、カッコイイの。


 アホ犬を盾にとって、呈さんとかいうオッサンの攻撃を封じる。

 オッサンも軽いステップワークで、背後にアホ犬を背負い込もうとする俺の裏をかいて回り込んでくる。


 いつまでもこんな事はしてられない。焦ってんのは俺だけだ。オッサンにとっちゃ、時間が稼げている今は予定通り、あわよくば殺しておきたい、そんな程度だ、余裕が伺える。

 ……その油断が死を招くんだぜ、オッサン。


 一定の距離感で互いをけん制し合う横移動中心のステップ、そこから一気に距離を詰めた。

 オッサンの口元が余裕の笑みで歪められた。俺を捕捉できずにいたレーザーの銃口が、ピタリと照準を合わせた。加速の上乗せってヤツだ、俺は口を開け、奥の手を伸ばす。

 ポリゴン内部の俺の本体、スライムにも【加速】は適用されてんだよ!


 うねるように伸びた触手が、一瞬早くオッサンの腕に巻き付いた。

 強制的に肘と手首を折り曲げる。銃口が光を放った。


「ぐ、うぅ、」

 発射されたレーザーは、オッサンの半身を消し飛ばす。


 ついでにレーザーをもぎ取って奪う。

 オッサンは青褪めた顔をして、そんで肩から胴体までの半身が消えちまっている。胴のあたりに不気味な白い虚空が覗いていた。俺を見るオッサンの目には若干の恐怖が映る。


「き、キモい……、」

 頭吹っ飛ばすぞ、テメェ、

 呂律が回らず、もごもごと口が動いただけだった。


 あんぐりと開いた俺の口いっぱいに、スライムの半身がコンニチワだ。


「いや、本当に気持ち悪いよ、君。迫ってきた時にいきなり口の中からスライムが溢れ出たもんだから、竦んでしまったんだ、でなきゃ不覚を取らなかった。」

 うぅぐ、なんとか本体を呑み込んで、と。


 俺に負けた言い訳を始めるオッサン。仮にも戦闘のプロが、ドシロウトに負けたとあっちゃ名折れだからな、悔しい気持ちは解かる。なんで負けたか、その原因をはっきりさせたいってのもな。けど、こっちはマジで焦ってんだよ、付き合ってる暇はない。


「そりゃどうも。褒めてくれてありがとよ。そんで、アンタ等が操作したデスゲームだ、アンタ等だけはログアウト出来るようになってんだろ? さっさと帰ってくれ。そして二度と来んな。」

 断れば撃つ。銃口を向けてオッサンを脅した。


 別に俺は警察でもなんでもない。オッサンがテロリストだろうが、迷惑な正義の味方だろうが、知ったことじゃない。捕まえるのは俺の仕事じゃない。だから、逃がした。今、面倒は困る。


 オッサンがログアウトし、俺が残された。

 急がなきゃならない、あのヤロウは俺が確実に留守になる時間を狙ってやがったんだ。

 何を仕掛けるつもりかは知らないが、どうせロクな事じゃねぇ。


 アホ犬を起こさないよう、迂回して街フィールドを抜ける。

 プレイヤーは街を挟んだ両方の草原フィールドに分かれて、テントの設営をしてるから、どっちかに異変が起きているはずだ。くそ、どっちだ、間に合ってくれればいいが。


 まずは少人数が居る初心者フィールドへ。ここはこないだまで俺達が拠点にしてた場所で、大半のプレイヤーはこっちに居る。向こうは牛やら羊やらが啼きまくってて煩い、そのせいで安眠を妨げられると文句を言って、多くのプレイヤーはこっちに暮らしている。


「おい! 何か異常は起きてないか!?」

 城門から駆け出してきた俺の怒声に、模擬戦途中だったプレイヤー二人が慌てて首を左右に振って応えた。

 こっちじゃなかったか、


「ど、どうかしたんですか? 景虎さん。」

「いや、向こうが何か仕掛けて来るんだ、注意しといてくれ!」


 言うだけ言って、城壁の横を抜けて走った。今度は向こうの草原だ。

 何も起きてなきゃいいんだが。


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