表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第七章 エビルス アンド モンスターズ
72/116

第八話 女の嫉妬Ⅱ

「ちっと我慢しろ、」

 女の顎を抑えて、暴れることを想定して馬乗りになる。そんで、舌に突き刺さるナイフに手をかけた。


「あぁ、ぁ!」

 やっぱ触るだけで痛いか。けど。

 一気に引き抜いた。瞬間の女の抵抗はそりゃあ、すげぇもんだ。チートの俺が跳ね退けられそうになった。

 後はぐったりしちまって、動くのも億劫って感じだ。ステータスを見る、女の名は【渚】か。


 これがリアルなら何もせずに即で救急車呼んでるぜ。下手なことをしたらどうなるか解からないからな。

 幸い、というか、……いや、バーチャルだからこそ普通の一般人がこんな凶悪犯罪犯してんだろうけど、逆にバーチャルだからこそ、こういう荒療治を一般人に過ぎない俺でも出来るってことだ。


 凶器さえ引き抜いてしまえば、架空の世界の傷なんてモンはすぐに消えてなくなる。

 手足を拘束するのは、なんとテーブルクロスだ。悪用に関して知恵が回りすぎだろ、あの女ども。きつく結わえられた布地をほどいてやる。それでも動く気配のない女の手に回復薬を握らせた。


 女は肩で息をして、くぐもった声はやっぱりで嗚咽になってて、蚊の鳴くような小さな声で泣いてた。


「いいか。辛くなったら逃げて来い。少なくとも向こうには、姫香なんて悪魔は居ない。」

 いっそこのまま抱えて逃げてやろうかとも思ったんだが、まだやる事が残ってるんでな。悪い。

 女はのろのろした動作で俺の顔を見た。疲労困憊って表情だ。……大丈夫かな、


 人に見られる前にこの場を離れた方が賢明だな。

 誰かに見られてたとしても、この状況を放置する方が普通はおかしいと判断するだろ、普通は。

 けど、そう思う半面で、ここの連中はオカシイって頭の片隅で否定に走る。


 逃げてきてくれる事を祈り、その場を離れた。いつまでも俺が傍に居るって方が危険だからな。


 その後、途中、ばったりと出くわした数人と戦闘になった。


「げっ! 景虎!」

「逃げろ、ほら、あぶねーぞ!」

 森のくまさんとか、童謡にこんな歌詞があったよなぁ。


 注意してやりつつ、都合よく傍に生えてたオブジェクトの大木の根元に足を乗せた。

 ぐっ、と力を込めるだけで、地面からすっぽ抜けて倒れていく。

 倒壊する方向に逃げやがった、パニくってやがる。


 地響きと砂煙、大木が派手な音響と共に倒れた。

「ぎゃー!!」

 下敷きになって、ソイツ等が消えた。


「呆気ねぇなぁ。」

 消えた奴等が居た場所に呟いて、俺も傍を通り過ぎる。

 通路塞いじまったな、大木はそのまま枝葉と根っこが勝手に消えて、巨大な丸太に変化する。

 これも仕様ってヤツだ。残念ながら俺のちっせぇインベには入らないから放置する。


 居住区は城の周囲に細長く、その敷地を取り巻くような形で展開している。家々は中世風というか、どっちかっていえばアメリカンカントリー風な、素朴な外国の農家って感じだ。太い木の枠組みに土っぽい壁、とりどりのカラフルな屋根は板張り? ま、瓦じゃない事は確かだ。


 それが等間隔で建てられていて、丸みを帯びた三角錐の赤い屋根には風見鶏が風の方向へ嘴を向けてる。地面はすべて石畳で、白くペイントされた柵で敷地を囲んだ家々の庭だけは茶色い地面だったり、芝生だったり。


 で、ところどころでさっき倒したような大木の街路樹が石畳の合間に植わっている。俺が倒した樹木は丸太になって転がってるが、地面に開けたはずの穴には、何事もなかったようなカオでまたいつの間にか大樹が生えていた。


 家は全部同じってんじゃない、4種類ほどの外観があって、屋根の色は5色から選べる。はずだ。

 家なんてまるで興味なかったからな、こっちの勝手はさっぱり解からねぇ。


 普通のフィールドじゃないはずだが、プレイヤーの工作品もああいう風にオブジェクト化してられるもんなんだな。敷地内だけかと思ってたぜ。

 拷問で使われたナイフは木工スキルで作れる工芸品だ。中級までレベル上げてりゃ、テーブルウェアは一式揃う。ま、投げナイフ代わりにフォークやナイフ投げまくって廃品利用なんてのはデフォだけどもな。


 スキル上げでアイテム大量生産するのはこのゲームに限らずでお約束、で、作ったアイテムの始末に追われるってのもお約束のプレイスタイルだからな。俺もテーブル作っちゃあ、エネミーに投げつけてたな。

 武器の扱いに関連する内部ステータスに関わるから、仕方なくだ。


 そういや、景虎は何が作れるんだ?

 スキル欄の情報を開く。ええっと、【木工】MAX……土木工事用木槌……。

 今度殴り込みかけるときは、これ作って持ってこよう。挑発に最適だ。


 居住区の地図を作製するためにはスパイ必須だからな。システム上、区画がコロコロ変わりやがるから、一度は様子を見ておきたかったんだ。城の見取り図と合わせてな。

 お次は城に突撃だ。いずれ、こっち連中とは決着を付けないといけない、早期のうちに。その為にこっちの地形や陣の概要は把握しておきたいって事だ。


 いつまでもぐずぐずとお姫様ごっこには付き合ってられねーんだよ、姫香。


 そして、ルシフェルのヤロウがリアル世界でヒーローになりたいって言うなら、ならせてやるよ。

 取引材料としては簡単に調達できる、何の問題もない。合流して、俺の参加を許せばいいだけだ。


 ヤツが条件を呑まざるを得なくなるまで、後は追い詰めていく。

 あんまり欲張るなよ、ロクな事にならないって、俺に教えられたくはないだろ?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ