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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第一章 スコップウォリアー
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第七話 峠フィールドⅡ

 スコップは飾りですって勢いで、素手殴りのままダンジョンを進む俺達。ルナの出番はない。

 てか、ルナの持つチート武器は回数制限付きのものだったから、雑魚に使わせるにゃ勿体ないってことでさ。使わないように言っておいた。出回ってるチートにも色々とあって、業者もまぁ、色々と考えてるらしいんだよなー。


 攻撃力チートで、一撃必殺の武器なんて一度売ってしまえばそれきりになるだろ?

 それじゃ儲からないじゃん。


 けど、あんまり高価な物にしちまうと買うヤツが躊躇する。だから単価を下げて、その代わりに使用回数制限を掛けて、何度も売るって方式を取ったりするらしいんだ。で、ルナの持つチート武器もその類だったってワケだ。残り使用回数92回。

 だいたい使い捨てのゲームデータに2000円出すって、どーよ?


 そうこうするうちにだな。

 気付けばすぐ後方に、別のプレイヤーの姿が迫ってきてた。峠ダンジョンは、ダンジョンって言ってもフィールドタイプだから、普通に他のプレイヤーとも行き会うんだよな。エンカウント率が高いからダンジョンの括りに入れてるだけでさ。エンカウント、敵と出会う確率のことな? で、向こうから来るのは小柄な男性キャラのヤツだ。ソロかな?


「どーしたの? スライム景虎。」

「その呼び名やめろ、漫才師じゃねぇから。俺。」

 突然、攻略を中断して休憩モードに入ったからな、ルナが不思議そうな顔して覗き込んだ。

 デスゲ中にわざわざソロを貫くような酔狂な奴は、まぁ少ない方だと思うんだ。恐らくは、他人に声も掛けられないリアル引きこもりの新人か、ルナと同様につまはじき食らったチート様か、どっちかだ。


 このゲームのプレイヤーって、そんなに薄情な連中ばっかじゃないから、俺の勘だと後者かな。


「ルナ、交渉は俺がやるからお前は後ろに隠れてろよ。PKかも知れねぇ、油断すんな。」

 よほど問題あるヤツでもなけりゃ、こんな状況だ、誰かが声を掛けてる。この状況でソロってことは、油断大敵ってことだからさ。


「はぁ、やっと追いついたぁ。」

 同じフィールドに立って、相手のキャラはそう言ってにこやかに笑うんだ。まるで屈託のない笑顔でさ。

 小柄なはずだよな、いわゆるショタキャラってヤツでさ。ルナと同年代の設定のヤツだった。コイツもチームに入ったら、俺なんて遠足の引率してる先生にしか見えねーって。


 ショタは中身も男だったようで、頭上のアイコンは男を示す。

 黒の七分ズボンに黒く染色したプレートアーマー、なんか真っ黒ずくしの戦士職だな。中二か?


 背中にルナと一緒のツヴァイヘンダーを背負って、双剣を左右の腰に引っかけてる。セオリー通りの装備だな、こいつは使えるヤツと見た。スキルやレベル以外のリアル運動神経とか勝負勘ってのをプレイヤースキル、腕前っていうけど、こいつはそれが高そうだ。いいね! なんてこの時は思ったもんだ。


「よぉ。あんたももしかして、爪はじきされたクチか?」

「うん、そうなんだよね、チート武器持ってるのバレちゃってさ。」

 やっぱりな。どこか媚びたような態度だと思ったが、途中で放り出されたせいか。一緒に行動してた連中が元々の仲間だったのか、単なる行きずりかは解からないが、今は少々狂ってるからな。皆。


「結構、役には立ってたと思うんだよね。強いエネミーとか、頑張って倒してあげたりしたんだけど。」

 恩を仇で返された、てか。まぁ、よく聞く話ではあるな。道行きで人が増えてくうちに、チートが原因だってのを強く言う連中と合流したとか、そんなんだろう。


「そっちの女の子ってさ、チート武器使うんでしょ? 実はさっき、グリズリー倒すの見てたんだ。同じチート同士だし、良かったら始まりの街まで一緒に連れてってもらえないかなと思って。」

 中身までそうかは知らんけど、ショタっ子が必死に言うもんでさ。ちょっと油断した。あ、ちなみにグリズリーってのは敵エネミーな、ちょい強めの熊なんだけど。


「わぁい、一緒に行ける仲間が増えたよね、景虎!」

「まぁ、そうだな……。もともと俺らも、二人じゃ心許ないって思ってたとこだからな。」

 そんな感じに、一緒に行くことになったんだけど。コイツ、曲者だったんだよな。


 さすがにソロでここまで来ただけあって、このショタっ子はなかなか強いヤツだった。どんなゲームでもそうだけど、単純に操作するプレイヤーの技術ってのも強さのうちに含まれるわけでさ。

 ルナなんかは、このプレイヤーとしての技量ってのが低いから、チート武器でも使わないことにはちょっと強い敵が出ただけでボコボコ殴られてしまうわけだ。避ける行動ってのは、スキルじゃないから。


 ショタっ子の名前、『海人』ってウミンチュとかは呼ばない、カイトだそうだ。確かなんかのゲームの主役がそんな名前だったかな。漫画や映画、ゲームなんかの主人公の名前とか付けちゃうのは普通に多いんだ。


 で、このウミンチュがさっそく正体を現しやがってさ。

 さりげなく俺の後ろに控えるようなフォーメーションが、峠ダンジョンで戦闘繰り返してるうちに出来てきてたんだけど、俺自身はさほど気にしてもいなかったわけだよ。まさか、企みがある、なんてさ。


 普通に、俺の背後をカバーしてくれてんだろう、程度に考えてた。互いにその方が死角が無くなるわけで、しかもソイツってソロでやれるくらい戦闘じゃ使えるヤツなわけだろ?

 だから、油断してたんだ。


 何回目か、涌いて出たスケルトンと向き合った時のことだ。

 そん時だけ、なんでか今まで使ってたショートソードを背中の大剣と持ち替えやがってさ。

 ピン、と来たんだ。


 もしかして、とは思ってもいつ来るかまでは解からねぇ。で、戦闘が済んだ直後だよ、俺がホッとした瞬間に狙いを付けてやがったんだろう、ショタっ子がいきなり俺に攻撃を仕掛けたんだ。


「きゃー!!」

 ルナの悲鳴が聞こえて。

 そん時に見えた景色はなんて言うか、えも言われぬモンだったな、瞬間的に上から下に落っこちた感じ?

 頭半分からスパンって斬られて、目のある上半分が吹っ飛んだからだけど。頭部を斬り飛ばされたわけだが、なかなかグロい状態だ。切断面ってのは割とリアルなポリゴンが貼り付けられる。血肉の赤黒い色が見えた。


 一気に低くなった視点から見上げると、悪どく歪んだ笑いを浮かべたショタっ子と目が合った。


「へ、へへへ、巧く行った。やった、殺してやったぞ、」

 手が震えてるぞ、ぼーず。どさり、と景虎の身体がひっくり返る音がタイミングよく響いた。



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