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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第六章 ソード オブ ジャスティス
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第十一話 閑話休題

 閑話休題。

 スライムになって夜中の移動。この姿はいいぜー。牧草地帯は特に、草に紛れりゃ目立たないからなー。

 ようやく姫から逃げてきた、ヤッた途端に女房気取りってヤツだ。本当に処女ってのは面倒だよ。


 て、なつきと愉快な仲間たちが。なにやってんだ? こんな夜中に。(人のことは言えないが)


 そういや俺、あの4人とはずいぶん顔見知りになったわけだが未だに名前とか憶えてねぇな。ま、いいけど。

 野郎の名前を覚えるスペースなんぞ、俺の脳みそにはスライム知能ほどしか存在してないから。


 雑魚その1がなんかなつきに言い寄ってる。

 幹に耳あり地面に目あり、てな。フィールドで音もなく近寄るくらいはわけないぜぇ。


「なぁ、お前から何とか取り成してくれよ。景虎のヤツ、マジ、ヤバいんだ。」

 ああ? なんだ、俺の話題か。人気者は辛いねぇ。


 なつきを囲んで4人がそれぞれで訴えてやがる。


「お前も見ただろ? アイツ、女の子でも気に食わないってだけで、平気で放り出しやがんだぜ? 向こうになんて、今さら戻れない……、なのに追い出しやがった! 酷いとこだって知ってるくせによぉ!」

 ああ、酷いとこだよなぁ、確かに! で?


 なつきは首を傾げてる。もう、コイツ等への恐れはないみたいだ。完全に和解したようだな。

 普通、イジメっ子とイジメられっ子が和解するなんてのは有り得ないと思うんだが、なんせ状況が特殊だ、俺に睨まれてるって事で、連中、なつき以外に頼れる相手が居ねーんだよな。

 

 完全に立場が逆転したなつきが、へりくだった態度の4人に普通に返事をする。


「そうかなぁ? 景虎かれはそんな酷い人じゃないけど?」

「お前は騙されてんだよ!」


「そうだよ! アイツ、見た目が女ならなんでもいいってヘンタイだろ!?」

「男と女じゃ態度が180度違うんだぜ!? なんなんだよ、アイツ!」


 なにって、フェミニストなだけだけど? 面白いなー、コイツら。


「なつき、お前……まさかと思うけど、アイツと……いや! 聞かない! 忘れてくれ、こういう事はお互い触らないほうがいいんだよな!」

「はぁ、」

「けど、俺ら、友達だからな! 向こうじゃ色々酷い事もしちまったけど、でも、もう今は正気に戻ってるから!」

「アイツに言い寄られて断れなかったんだよな? そうだよな、ヘンタイだもん、アイツ。」

「えー? 別になんにもないけど……、なんでそうなっちゃうの?」

「いいんだ! お前は悪くない! お前は悪くない、悪いのはヤツだ!」

「えー……、」

「許すまじ! ヘンタイスライム!」

 おーおー、血気盛んてか、いきなり乱入してやろうかなぁ。


「もー! 景虎はヘンタイじゃないってば!」

「だから、それが野郎の手なんだって! 女の前だけ態度違うんだよ!!」

 いやいや、お前らの前だけだって。それ。


「俺ら、アイツに狙い撃ちにされたんだぜ!? 大喜びで奇声上げながら追いかけ回してきやがって! ヒャッハーって! ヘンタイ以外のなんだってんだよ!」

「むちゃくちゃ怖かったんだぞ、お前、知らないだろうけど!」

「えー?」

 さすがに信じきれずになつきが訝るのを、懸命に説得する4人。

 奇声なんか挙げてねぇだろ……、どこの世紀末モヒカンだ。脚色すんなよ、お前ら。


「俺らのこと、嫌いだから殺すって言いやがったんだ! 理由なんか別にないって! ひでーだろ!?」

「横暴だよ! イジメじゃねーかよ! なぁ!?」

 お前らが言うか。


 本当に面白い奴等だなぁ、お前ら4人。ヘタレ具合がお笑いレベルだ。なつきも今じゃすっかりお前らの事許しちまったようだけど、もし続いてるようなら処分すること考えてたんだぞ、俺は。

 仲良くやってるようで安心したけど。そうか、お前らにとっちゃ俺がトラウマか。(爆笑モンだ)


 散々、なつきに拝み倒しで捻じ込んで、4人はテントの方へ戻っていった。

 なつきは手を振って見送ったトコを見ると、別に用事があるとこを呼び止められたようだな。


「さてと。きのこ、きのこ、と。……あった!」

 真面目ななつきらしいってか。皆の気が緩んでダレてる時でも、せっせと食材集めをしてくれてたらしいな。

 声をかけようと近付いたとこへ、また別の人物がなつきに近寄ってくのが見えた。俺と反対の方角だ。


「あ。えっと、エリス……さん?」

 何か用件があるって察知して、なつきはしゃがんでたところを立ちあがって迎える。


「名前、憶えてくれたの? ありがとう。」

 一気に知り合いが減って、多少は落ち込み気味なんだろう、エリスの返事はしおらしい。

 孤立してるからな、ちょっと心配だったんだ。


「あの、差し出がましいんだけど、ずいぶん疲れてるみたいに見えるよ? 少し休んだほうがいいんじゃない?」

「ううん、ここに居ることを許してもらったんだもん、少しでも……、」

 エリスもなつきと同じ事を目的に林の中をうろうろしてたらしい。きのこを取りに来たのか。

 二人、しゃがみこんで、仲良くきのこを毟りだした。


 まぁ、二人ともあんまり無理せず、休む時はしっかり休んでくれるのが一番有難いんだけどなぁ。

 気持ちだけでいいよ、二人とも。


「ねぇ、あなたは景虎のことどう思ってるの?」

 突然の質問がエリスの口から問われた。まさかまだ諦めてない、てか?


「どうって?」

「誰かに聞いてみたかったの。彼の考え方に賛同できるのかって。」

「それは……、」

 なつきは言い淀む。まだスパイ活動を止めていないのかと訝っている。

 まるで独り言みたいに、エリスは返事を待たずに話し出した。


「たかだかゲームのデータに過ぎないって、彼に言われたの。ここには、守る価値のあるものなんか、何一つないって。」

「ふぅん……、」

 あん時の話か。寝物語に、そんな話もしたっけな。


「わたしは、そんな事ないって、ずっと反発してた。大事な仲間も居るし、皆で大きくしたギルドだって、育てたキャラだって……この姿は、わたしの自慢だから……否定されるのが苦しかった。」

「リアルもココも、ボクは両方大事だなぁ。どっちかなんて、選ぶのは嫌だよ。リアルにも友達は居るけど、こっちにはこっちの友達が居て、どっちも大事だもん。……みんな、そうだと思うよ。」

 なつきの声は、やっぱり優しい声だ。人を癒してくれる。エリスは頷いた。


「わたしも、むきになって反論したの。アイツに。」

「なんて言ってた?」

「ぜんぜん敵わなかった。この姿は、わたしの記憶の中にあるって。ギルドも、コレクションも。そして、バーチャルの友達は、同時にリアルにだって存在してる、リアルの鏡に過ぎない世界だって。……消えてなくなりはしないって。」

 そうだ。デスゲームと化した今にしがみつく意味は、ない。


「なんか、よく解かんない。景虎って、難しいこと言うんだもん、気にしなくていいと思うよ。」

 いや、そこは気にしろ、なつき!(せっかくイイ事言ってんのに!)


「……そうよねっ、」

「そうだよ! ボクは、こっちの世界も大事だから、ちゃんとリアルに戻りたいって思うよ。普通に遊んでた頃のココが好きなんだ、今のデスゲーム状態のこの世界じゃないもん。運営がちゃんとバグを直してくれて、また元通りになったこの世界で、ギルドの皆とまたクエストをやりたいんだ。」


「景虎らしくないよねっ、……誰かにとって大切なものは、他の誰にも、貶める権利はないって、ボクにはそんなこと言ったくせにさ。」

 あれ? そんな事も……言いましたかね、確かに。あ、駄目だ、俺。意見が矛盾してる。


「ううん、別に矛盾はしてないと思うわ。だって、思い出の中にあるのとデータの中にあるのは、基本的に同じことだもの。他人に認めてもらえるかどうか、認知されるかどうか。そして、認知したのはリアルのプレイヤーなんだから、ゲーム世界はただの箱庭だわ。」


 まるで心を読んだかのような、タイミングのいい返事をして、エリスはふっとため息を吐いた。

 吹っ切れたみたいな顔をして。



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