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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第六章 ソード オブ ジャスティス
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第九話 裁判Ⅲ

「これは未成年に限らず、成人に対しても同じことが言える。参加費のほうは微妙なラインだが、確実に世論じゃ道義を問われる内容だし、売買春に関しては完全に犯罪の域だと思う。ログが残されていない上に被害者たちが訴える気がないって事で、不問になる可能性が高いってだけだ。」


 場がさざめき出す。静かな波がだんだんと広がっていく。

 動揺した空気が、周囲を固める元々こっち陣営だった連中の間にも伝わっていった。


「一連の不祥事には、例の姫香とかいう有力者の娘ってのが関わってるって話だ。それが本当なら、例えば俺達が危惧する問題……週刊誌あたりにリークするバカが出たとしても、揉み消されて終わりだろう。あるいは確証のない推測論だけで警察は動かないかも知れない。」


 実際に、デスゲーム中における犯罪に関しては特殊事例という事で大目に見られる傾向が高い。被害届も出ていない事例にまで関ずりあってるほど警察も暇じゃないだろうしな。被害者の意思が尊重される。

 だが、"見逃し"ってのは、"露見していない"ってのとは、まるで違うことだ。それを誤解させないようにしないといけない。せっかく穏便に済ませようと配慮してるものを、問題にしてしまうヤツが出るのは防がないと。


 洗脳による精神的苦痛、イジメなどの暴力沙汰、恐喝、それに売春。少なくはない数で死者も出ている。

 表出したら間違いなく責を問われる問題ばかりだ。ゲーム内通貨だから問題ないなんて、誰が言いだした。

 だからこそ、あのクソ野郎は、自身は無関係という立場を固持してやがるんだろうが。


「ここで犯人捜しに決着を付けるつもりは毛頭ない。ただ、自覚があるヤツは覚悟をしておけ、と言ってるだけだ。リアルに戻った後で何らかの責任を問われるかも知れんが、異常事態での事件だからな、極力穏便に済ませようとはしてくれるはずだ。」

 皆が少しだけ納得した様子を見せた。見計らったように、そのタイミングでエカテ姐さんが出て来る。


「問題防止の一環として、名簿を作成しておくわ! もし、警察介入となった場合にも、スムーズに事が運べば、個人が特定される事態は防げるわ! 各名簿は他のグループには絶対に見せないでちょうだい!」


 危惧するのは、警察が捜査する段階でメディアに晒されちまう一事だ。名簿は、自己防衛の為に必要だ。外の組織がログデータを見れば、関係図が一目で解かり、けれど、内部のプレイヤーにその全貌は見えないことが理想だ。それでも、プレイヤーの中から事件をリークしやがるバカが出るのを防げるかどうかは怪しいんだが、な。


 メモ機能……俺がスライムの時に使うメモ用紙機能の他に、長文の議事録作成機能ってのもあって、今回はそれを活用する。本来そこにリアル情報を記入するのは原則規約違反の扱いなんだが、記入自体は出来るんだ。記録はVR箇体のメモリに保存されるから、万が一に備えるには打って付けだ。

 今は規約なんて、しのごの言ってられないからな。大いに活用する。


 エカテ姐さんは声を張り上げ、混乱しかけの集団を一気に引き締める。

 ここらへん、さすがは大ギルドの幹部だ。


「念のため、元々こっちの無関係グループも名簿作成するから協力お願い! グループごとに詳細な名簿を作っておく事は、後々の自己防衛に繋がるわ! 向こう陣営だった者はゲーム内での役割分担の詳細も記してちょうだい! 虚偽報告は駄目よ! 正直に! 自身の為だから!」


 青褪める者、悲観する者、周囲を仕切り出す者、それぞれで動きだし、ひと騒ぎになった。

 出来る限りはやったつもりだが、警察関係でもないシロウトにこれ以上は難しいよな。これ以上の大事にならないことを祈るばかりだ。


 サクラが近付いてきた。

「景虎さん……、」

「ああ、サクラか。なんだ?」


「あの、わたし達もなにかしておいた方がいいでしょうか? 皆で相談して、出来るだけの事はしようって、だから……、」

「そうか。皆、少しは前向きになってきたようだな、助かるよ。」


 サクラははにかんだような笑みを浮かべた。

 被害者たちは俺に談判してから後も、彼女等でしっかり団結してたってわけか。

 やっぱ女は強いな、いつまでも打ちひしがれてちゃいられないってなもんかな。


「他者には秘密にする方向で、君らだけの名簿も作成しておくといい。リアルに戻っても、いつでも連絡を取り合えるように。被害者同士で結束するんだ。運営ログはそのまま警察管理になるだろうから、プレイヤーに聞かれなければ、会話についてはそこまで神経質になることはないだろう。……リラのことは、お前が守ってやれ。」


 リラの名を出したら、以前は曇るばかりだった彼女の表情が、今は強い決意を見せる。

 しっかりとした頷きを返し、サクラはまた妹の傍へと戻っていった。


 リラの姿がある。まだ一人きりで居るのは辛いのか、あの時のメンバーと一緒だ。

 俺に気付いた。

 "いーっ"て。

 え? なんで俺、舌出しての拒絶されてんの?

 お姉ちゃんに叱られやがった。俺のこと睨んでやがる。"バーカ、バーカ"とゼスチュア返し。

 本格的に大人げないな、俺も。


「なにやってんのよ、あんたは。」

 エカテ姐さんに見られたー!!(orz)


「しょーもない事しないのっ、」

 こっちもゲンコツの真似で叱られて、それを見たリラが鼻で笑ってやがって。クソガキ。

 そんで姐さんは真面目な顔で強制的に話を切り替えた。


「騒ぎも落ち着いてきたし、各名簿の作成も順調よ。逃げた連中と合流した暁には、彼らの名簿も作成、それでいい?」

「上出来。てか、俺等に出来ることなんざ、そんな程度だよ。」

 あとは、警察にお任せしましょ。


 さー、やる事はやった。ようやくこっち陣地へお引越しだぜー。

 ステーキにジンギスカン、トリナベ。肉どもがのどかに啼いている牧草地帯が俺達の胃袋を歓迎しているぜ。



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