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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第六章 ソード オブ ジャスティス
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第七話 裁判Ⅰ

 こっちの夜空は明度が少し低く設定されて、街向こうより星の瞬くさまが綺麗だ。


「さて、懐かしいと思ってる奴らも多いと思うが、ここで通達しておいた案件を片付けようと思う。」

 俺が開催宣言を行うと、一斉にブーイングが挙がった。

 スパイ女どもが片付くまでは、これが裁判だってのは伏せておきたい。


「なんで俺らが閉じ込められなきゃいけなかったんだ、説明しろよ!」

「なんなんだよ! 降参したら今までのは無しにするんじゃなかったのかよ!」

「幹部待遇はどうなったんだ! 話が違うだろ!」


「まぁ、まぁ、静粛に。こっちも色々と調べることとかあったんだよ。閉じ込めに関しては、悪かったと思ってる、余計な小細工とかを防ぐために仕方なかったんだ。」

 少々声を大にして、連中に訴える。一度言っても聞きゃしねーから、何度か繰り返した。ここは穏便にな。


 降伏した連中をひと塊に集め、周囲をこっち陣営で囲んで即席の裁判所だ。

 俺とエカテリーナ、そんでネロが立ち会い。向こう連中に対峙している。


 場所はかつての敵陣営、街を挟んだ向こう側の草原、その外れの地点だ。すぐ向こうに居住区へ向かう街道が見えている。その街道出入り口の地点にも、エカテ姐さんが信頼する仲間数名が見張りに立つ。


 一見、のどかな牧草地帯、牛や羊ののんきな鳴き声はまるで場違いのような響きに聞こえる。

 最弱モンスターのスライムが、攻撃力5のニワトリと死闘を繰り広げていたりする。

 その場所が、今、不穏な空気に包まれている。


 物分りの悪い連中に、俺はもう一度声を荒げて叫んだ。


「悪かったっつってんだろ! その代わり、テントの中では御馳走三昧食わしてやったろ!?」

 俺がこの二日、どんだけ忙しかったと思ってんだ。

 500人からの飯作りでリーダーやって指揮して、材料取りに街に遠征して、女の子口説い、おっと。


 料理スキル、材料が足りなくても「【マズいステーキ】が完成した!」てな感じで、料理自体は作れるわけよ。塩コショウって材料はさすがに街に入って店に行かんと入手出来ないからさ。


 テントの中で、最初の夜はそういうわけで結構な歓声が上がっていた。


「そりゃ、まぁ。」

「うん、久しぶりに味の付いた飯食ったけど。」


 ようやくブーイングが止んだ。お前ら、向こう陣営に居た時にゃビクビクして過ごしてたくせに、なんだよ、その態度の違いは。たった二日で、洗脳弛んで言いたい放題になってる奴らがうじゃうじゃしてやがる。

 喜ばしいことなんだが、複雑な気分だな。


「なぁ、問題ってなんなんだよ!?」

「小細工ってなに!? わたし達、疑われてるの!?」


 中から声が掛かるくらいには自主性を取り戻している様子だ。

 エリスとその一党は後方で目立たないように息を潜めて見ていやがるな。


「静粛に。まず、一つ目の議題。この中に、向こうの陣営が送り込んできたスパイが居るんだ。」

 ざわめきが大きくなった。


「どうせ、こっちに寝返った連中に嫌がらせする程度だけどな。あとはデタラメ並べての勧誘。口車に乗せられて、またあっちの地獄へ誘い込まれるヤツが出たら困る。」

「誰だよ! いったい!」


 焦った声が上がった。やはり向こうの支配層の影響ってのは、まだまだ大きいんだ。

 恐怖が浸透していく。彼らはまだ縛られている。連れ戻されるかも知れない、恐怖。


「安心しろ。向こうはバレるわけがないと思ってやがるが、俺を甘く見るなってことだ。本来なら、この場に引きずり出した時点でボコボコにしてやるところだが、相手が女の子ばっかりなんでな、それは止めといてやる。」


 俺の宣言に、場がいっそうざわめいた。


「これから呼ぶ数人の女プレイヤーは、向こうのスパイだ。」

 順に、名を告げると示し合せておいたサザンクロスメンバーが、その女どもの腕を捕らえ、前へと引き出した。全部で4名。エリスの名は出さない。


「ど、どうしてわたし達が……!」

「嘘よ! 適当なこと言わないで!」

 足掻くねぇ。ネタは上がってるってのに。


「俺の目は節穴じゃねぇんだ。気付かれずに忍び込むくらいわけないって、あのヤロウは忠告しなかったか?」

 女たちが俺を一斉に睨みつけた。

 そんで、一人がエリスを指差して叫んだ。


「その子もスパイよ! 放り出しなさいよ!」

 人々がざわめく。エリスの顔色が青くなる。


「自分らが失敗したからって、彼女の芽も潰してやろうってか? エリスは懸命にやろうとしてんだ、努力しようとしてる、デタラメ言って、お前らが彼女の足を引っ張ろうなんてのは見え見えだよ。」

「嘘よ! その子もわたしたちの仲間よ!」

「依怙贔屓じゃない! そんなの!」


「エリスはお前らから逃げようとしてただけだ。イジメやるヤツに対しては寛大じゃねーんだよ、俺は。失せな。」

 問答無用だ。


「それとも、このゲーム自体から退場させてやろうか?」

 まだがなりたてる女どもに、最後通牒。剣を抜いて、威嚇して、ようやく黙った。


「覚えてなさいよ、エリス!」

 捨て台詞の相手が違ってんな。

「さっさと消えろ! 戻って、姫香ってあの腐れ女に言っとけ! 会ったらぶっ殺してやるってな!」


 意趣返しだ。ルシフェルのヤロウへのな。

 あのDQN女に絡みつかれて辟易しやがれ。


 ざわめく声に、向こう幹部連中への悪しざまな言葉が混ざりはじめる。

 あのヤロウを罵倒する声も聞こえた。聖人面して、内心はどうだか知れない、と。


 女どもが慌てた様子で走り去るのを見届ける。

 と、エリスが皆の前へ進み出た。まさか向こうへ帰りたくなったなんて事はないだろうが……。


「あ、あの! 皆さんに、聞いてほしい事があります!」

 決意の表情。必死の顔で、何を言うかと思えば。


「ルシーは、悪くないの! 騙されているの! 彼の傍に居たわたしが保障するわ、彼は何も知らないの! だから、だから、あの人たちのことも彼は関係ないの! わたしもスパイです、姫香に命令されて、わたしが景虎のこと誘惑したの! 強姦も嘘です、ごめんなさい! 皆さんを騙して、ごめんなさい!」

 困惑でいる皆の前で、エリスは必死にあのゲス野郎を庇う。


「ルシーを憎まないで! 彼は何も知らないの、本当に、スパイの件は姫香が独断でやったの! わたしは、彼の為になるって言われて……、ごめんなさい! わたしも追放して下さって構いません! だから、彼のことは誤解しないで下さい! 皆さん、本当にごめんなさい!」

 なんであんなヤロウが好きなんだ、なんてのはこの際はヤボなんだろう。

 蓼食う虫も、てのは、本人に言っても仕方ない。



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