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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第六章 ソード オブ ジャスティス
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第四話 罠Ⅰ

「あんなヤロウの事なんざ、さっさと忘れちまえよ。」

 元気付けるつもりで言ったら、ある意味予想通りの答えが返ってきた。


「ルシーはこっちで言われるほど酷い人じゃないわよ。ほんとは、優しいし、人を傷付けることを恐れて……こっちの人たちと争うことだって、彼は本当は嫌でしょうがないのに。悲しんでいるの、可哀そうな人なの。」


 恐怖支配に洗脳、ついでに恋愛感情まで加わったら、ここまで強固な盲従を生み出すってか。


 論点がズレてるよ。

 俺はなにもヤツの人間性を否定してなんかいない。気に食わねぇヤロウとは思っちゃいるが。

 やってる事に対する正しい認識を持とうと努めてるだけだ。

 家庭環境だの事件状況だの、情状酌量だのってのは、違うと思ってるだけなんだよ。


「彼と直接、話したこともないあなたには、きっと言っても解からないわよね。」

 冷めた目になって、エリスはそう言った。


 話してんのを聞きはしたが、会話ってほどのことはしてないからなぁ。

 話しても多分、解かりゃしなかったと思うけどもな。


「俺に相談ってのは?」

「じ、情報を提供したでしょ。」

 取引か。そういうモンは普通、応じてから話すもんだぞ。


「これ以上の話は、ここじゃ出来ないわ。ログが残るもの。だから、……ね。」

 そっと、俺の上腕に触れ、何事か訴える目で見上げてくる。そして、チラリと奥へ視線を流した。


 バグテントで痛い目を見てきたくせに、まだ利用しようって?

 やっぱ胡散くせー女だな。この女には用心が必要だ、なんか、引っ掛かる。


 周囲を窺ってから、エリスは俺の腕を捕らえて、先に立って歩き出す。

 バグのシチュエーション、林立する木立の中に手持ちのテントを放り投げた。

 そして無言で中へ入る。


 これもヤツの指示だとしたら、ずいぶんと酷なことをやらせやがる。

 俺に取り入ってスパイをさせるつもりにしても、俺に強姦の濡れ衣を被せてダメージ謀るにしても。


 ふむ。おおよそ、仕掛けるとしたらそれくらいしかねぇよなぁ。

 だったら。

 やっぱ、食っちまお。


 少し遅れて中に入った俺を、彼女は裸になった状態で待っていた。

 緊張したカオで、恥じらいなのか、腕で胸と前を隠すようにして座っている。正座を崩した横座り。

 隠そうとするあまり、前屈みになって縮こまってる。恥ずかしいのか、顔が真っ赤だ。


 女ってのはそれぞれで反応が違うよな。

 エカテ姐さんに恥じらいなんてもんは無かったし、マリーも同様、姫は確か後ろ向いてたっけ。

 他の女の子も様々だ。バグテントで脱いだ時の反応ってのは、性格がモロに出る。


 ……食いまくってますが、なにか?


「そ、そんなトコでぼーっと突っ立ってないで、座りなさいよ! ニヤニヤして、いやらしい!」

「視姦って言うんだよ、観られてると興奮しねぇ?」

「最低!」


「んなもん、先に脱いでるから悪いんじゃねーか。なんていうか、サド心を刺激するよなー、お前。苛めたくなるの解かるわ。」

「あんたって、噂通りの男なのね。女ったらしでヘンタイだわ。」


 おーっと、ヤロウと比べるなよ? 胸糞悪い。アイツは正真正銘の最低野郎だからな。

 それと女ったらしってのも、違う。もてあそんだ覚えはない、誠実に全員と付き合おうと思ってんだから。


「自分だけを見てくれとかって願いは聞けないが、それ以外でなら出来るだけ要望に添うようにしてんだけど? 気の多い男は嫌いか? だったら、深い入りせずにこのまま別れたほうがいいぜ?」

 勝手に近寄って、火傷しました、なんてのはさすがに責任持てないからな。


「ずいぶん、自信過剰なのね。わたしが惚れるみたいな言い方だわ。」

 エリスはまた、強気な視線で俺を見る。


「気が強い女は好きだぞ? 挑発されてんのかと思うとゾクゾクする。」

 特にこういう、なんか企み持った相手との駆け引きなんかはいいね。


「上目使いで涙目になって睨みあげてくるお前の視線は、煽情的で色っぽいよな。もっと泣かせたくなる。言われたりしねぇ?」

 片膝だけ床について、上から覗き込んだ。


 エリスは赤い頬をさらに赤くして、そっぽを向いた。照れてやがる。

 ルシフェルのヤロウとは寝たのかな。他人ひとの女となると、さらに燃えるね、奪い取ってやりたくなる。

 何が狙いかなんてのも、充分視野に入れて。俺を嵌めようと思ってるんなら、無駄だと思うぞ。

 女癖が悪いなんてのは、すでに周知だからな。


「なぁ。」

 細い顎に手をかけて、こっちを向かせて。

「なんか、お前見てるとやりたくなってきた。やらせてくれよ。」

「なにそれ? 酷い口説き方。」

 ちょっと拗ねた。俺の手から逃れて、顎を引いて、また上目遣いだ。


「……いつまで、服着たままなの。わたしだけこんなカッコで、冷めるわ。」

 誘い文句も女それぞれ。


「なんせ朴念仁なもんで。……脱ぐのは服だけか? 皮も?」

「ヘンタイ。」

 そう言うエリスの瞳のほうが、欲情で濡れた輝きを宿していた。


 んじゃ、食う。



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