表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第六章 ソード オブ ジャスティス
56/116

第三話 戦後処理Ⅲ

「向こうの状況を聞いた感じじゃ、あんたくらいのレベルは苦労しなかったんじゃねぇの?」

 俺が全ての情報を自力で取ってきた辺りを、この女に素直に話す必要はないわけで。適当なことを言っておく。


「そ、そんな事ないわ、参加費用は個人ごとに決められるから、役員の覚えが悪いと暴利で高額を吹っかけられるもの。わたしは、その……ルシーの傍に居て、目を掛けてもらってたから、嫉妬されていたし……。」

「役員って?」


 口調に少しキツさが戻る。しおらしいフリして騙そうとしても無駄だ、以前に会ってるからな。

 そんで、なんか奇妙な話が出てきた。そういや、この女、ヤロウの取り巻きっていう前に元側近なんだよな。

 色々と向こうの内情を聞けるかも知れん。先を促すと、エリスは話を続けた。


「攻略部隊を率いるのは直接ルシーたち幹部がやるから、そこには参加しない待機組を指揮する人たちが居るのよ。攻略組は100名足らず。残り700名を統括、管理してる連中よ。」

「ソイツ等が上納金を割り当てたわけか。」


 エリスがこくりと頷いた。

 この女がスパイとして、こういう情報を俺に流すには何らかの目的があるからだろう。一体なんだ?


 ルシフェルのヤロウ、何を考えてやがる?


「待機組には、ヤツの身内は関わってないってのか?」

 つまり、上納金だの売春教唆だのにヤロウは関わりないと言いたいのか?


「そうよ! 彼は暗黒竜の討伐計画に掛かりっきりなの! 彼が忙しいのに目を付けて、取り入って、好き勝手やってた奴等が居るのよ!」

 俺の言葉を聞いたとたんにエリスは目を輝かせて肯定した。


 だから、ルシフェルに罪はない、と。そう言いたいわけか。はいはい。

 ヤロウがそんなもん、気付かないわけないだろう。


 あのヤロウ、この女をどう使いたいんだ?


「で? ヤロウの事ならもういい。アンタはどうなんだ? なんで、こっち陣営に寝返った?」

「言ったでしょ、彼と付き合ってたから嫉妬されたって。役員のリーダーはリアル権力者の娘なのよ。彼女の腰巾着みたいな女たちで構成されてるのよ、役員議会って。」


 議会って名の支配層か。ルシフェル一味とはまた別の奴等だな。いや、双極というか。どのみちグル。


 二重構造で、ボス戦で使えそうなプレイヤーたちを攻略組、そこには届かない中堅プレイヤーを待機組に分けて、それぞれを管理する上層部を置いている。

 攻略組はルシフェル一味が直接管理し、待機組はそのナントカ議会ってのが管理してるんだろう。

 とはいえ、攻略組の中身もほとんど待機組幹部と一緒にうまい汁に群がってるだろうが。


「役員のリーダーってのは?」

「今、彼と付き合ってる女プレイヤーよ、姫香って子。さっき話してた銀行頭取の娘よ。」

 あー、あのDQN女、そういうのだったのか!

 今度こそ、衝撃が走ったわ。なんとまぁ……。類は友を呼ぶ、てぇヤツだな。


 ルシフェルはなまじ頭が切れそうで厄介だと思ってたが、姫香は……そうか、バカってのも厄介だもんな。

 担保だな、ヤロウの。俺に罪をなすりつけられなきゃ、あの女にすべておっ被せる算段か。

 それくらいしか使い道なさそうな女だったもんな。親がもみ消すだろうから、丁度良いってとこか。


「なに? 何とか言ってよ、だんまりで……不安になるのよ、」

 ちょっと考えに浸ってたら、エリスが上目使いで睨んでいやがった。泣きそうだな、切羽詰って裏切らざるを得なかったてのは本心か。……ちょっと可愛いとか思ってしまうのは、ほれ、男のサガだ。


 待機組の構造がなんとなく見えてきた感じだ。

 あのDQN女を頂点に、取り巻き女どもが揃いも揃ってバカばっかりなんだろう。

 で、実際に悪どいことを企画立案したのは、その下の奴等か。女どもに取り入って、計画を実行させた。

 徴収は自分たちがやるからとか何とか、適当に言って、上前を掠めてやがんだろう。

 そのポジションなら、名前は浮いてこない換算が高い。小賢しい、小悪党の典型的思考だ。


「ちょっと……!」

「ああ、悪い。今聞いた情報を整理してたんだ、無視してたわけじゃない。ごめんな。」

 お? ちょっと笑い掛けてやっただけで、頬を赤らめやがったぞ。


「い、いいけど。無視はしないで。……怖いの、向こうでもずっと無視されてたから……。」

 向こうのイジメが極限に近かったのは知ってる。多くのプレイヤーにトラウマ与えてんだろうなぁ。

 なんとなく、くしゃくしゃっと髪の毛を撫でてやりたくなって。こういうの、女は嫌がるんだっけ?


「やめてよ! 同情なんか要らないんだから!」

 跳ね除けられた。やっぱ、嫌なのか。髪の毛。


「悪いな。慰めてやろうかと思ったんだが、俺は朴念仁だから、やり方が解からんのよ。」

 肩を竦めてみせると、エリスはちょっとだけ笑った。


「変なヤツよね、あんた。……ルシーは、あんたの事をイカレてるって言ってたけど、そうでもないみたいに見えるわ。ほんとは、どっちなの?」

 イカレてんのはヤツの方だと返してやりたいとこだが、大人げねぇしな。


「イカレ野郎だと思っときゃいいじゃないか。こんな状況じゃ、正気のヤツなんて居やしないさ。皆、どっか普段とは違っちまう。仕方ねぇ。」

「そうよね、今は……仕方ないわよ、ね。」

 言い訳みたいに、エリスは呟いて下を向いた。表情を隠した。なつきみたいに、色々あったんだろう。


 ……口説いて食っちまおうかな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ