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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第六章 ソード オブ ジャスティス
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第二話 戦後処理Ⅱ

 まったくガメつい金の亡者どもがよー、後始末の大変さも考えずに好き勝手しくさってよ。

 リアルにまで響くような大問題残しやがって、ほんと、どうしてくれようって感じだ。

 目にモノ見せてやらにゃ、こっちの気が収まらんってんだよ。吊し上げてやらぁ。


 ムカムカした気分でだんまりを続けていたら、サクラの方から話を続けた。


「さ、裁判の席には、どうしても出なくてはいけませんか?」

 サクラの声はだんだん小さなものになっていく。議題に出す意味は理解したものの、その場へ引きずり出される妹の事を考えると辛いんだろう。


「わたしが代わりに出席しますから、あの、代表って形では……駄目ですか?」

「ああ、それでいいよ。確認してもらう必要があるってだけだから、君たち全員が出席する必要はない。もともと未成年者には遠慮してもらう予定だったし、希望者のみって事で構わない。」


 何人かが、目に見えて表情を緩めた。緊張した顔の子はまだ多いが。


「君らに意見陳述を求めるような事はないし、名前も伏せておく。リアルに戻った時に問題が起きないようにする、それだけの目的しかないから安心してくれていい。」

 ふと、以前、サクラがリアル情報を俺に告げようとした事を思い出した。まさか、な。


「……君らの中に、リアルの情報……本名とか、住所なんかを誰かに教えたって人は居ないか?」


 最初はパラパラと、次第に多くの手が挙がっていく。

 マジか。


「その時の状況を教えてくれ。サクラ、知ってるか?」

「は、はい。ルシフェルさんが、状況を把握しておきたいからって、全員のリアル情報の交換をしようって。」

 あのヤロウ。


「どんな感じだった? ヤツは何を聞きたがってた?」

「えっと……、住所のほかに、在学者は学校名とか、社会人なら会社と役職名を……。」


 斬り捨ての時のラインにするためか。リアルで地位のある人間を見捨てるのは得策じゃないからな。

 あん時、DQNに見えたがあの女、もしかして……。


「サクラ、姫香ってプレイヤーのこと、知らないか?」

「わたしは知りませんけど、……誰か、知ってる?」


 おずおずと、一人の女の子が一歩進み出た。

「知ってます、ルシさんの傍にいつも居る女の子ですよね? 第三銀行の頭取の娘だって、本人が自慢してましたから。ほんとかどうかは知りませんけど。」


 それでヤロウは傍に置いてキープしてやがったってことか。抜け目ねぇな。

 しかし、リアル情報を晒しちまったってか。イタタタ。頭、抱えたくなるな。洗脳のせいで正常な判断力が下がってるのはあるにしても、なぁ。


「え、ホントなの?」

「あ、それ、本当らしいよ。すごいお金持ちなんだって。」

 ひそひそ話というには丸聞こえな音量で彼女たちは話し出す。


「ルシさんは、彼女を特別扱いしてるよね、なんでだろ。」

 一人が不服そうに口を尖らせる。


「ちがうわよ、彼女のお父さんが有力者だから、邪険に扱えないだけだって!」

「偉い人が外にいるから、もしかしたら救助に力を貸してくれてるかも知れないって、前にルシさんが言ってたわ、依怙贔屓とかじゃないわよ!」

 とたんにヤロウを庇う複数の意見がどっと沸き上がる。まるで人気のホストを庇う女性客って感じだ。


 あのヤロウは絶対にボコる。決めたからな。


「解かった、とりあえず君らの陳情は聞いた。君らの名前は出さないし、テント内での詳細についても議題にはしない、代表で明日の裁判にはサクラに出席してもらう、それでいいな?」


「べつに……、証拠もないんだし、知らないって言い張れば……、」

 勢い付いたのか、黙っていた子の中から意見が挙がった。


「誹謗中傷の文書ばらまかれたり、家族に嫌がらせされたり、近所に言いふらされたり……、そういうのを耐えきれるっていうんなら、俺達も手を引いて構わないけど?」


 全員が黙った。


「そういう危険性があるって事は、脱出出来た後にも忘れちゃいけない。もし、何か起きたら、余計な事は考えずに即座に警察へ通報しろ、リアル情報のやり取りもしてしまってる、きちんと警察は聞いてくれるはずだ。」


 この子たちは重大性を理解していない。リアル情報を公開するなんてバカげた事をしちまってるくせに、さらに売春行為なんて危険極まりない事までやっちまった。ここまで麻痺するもんなのか? 信じがたい状況だな。


「で、交換したっていう情報は全員メモリに記録してあるのか?」

「いいえ、それはしてもしなくてもいいって、ルシさんが。」


 てことは、記録した奴も居るかも知れないってことだな。

「君らは?」

 お互いにこそこそと相談し合ってるところを見ると、大半の子はメモしてないってことだな。


「解かった、その辺も含めてこっちで処理する。今日はご苦労さん、解散だ。」

 うむを言わさず、解散を言い渡して彼女等に背を向けた。


 非常にヤバい状況だ。対処としては、全員のリアル情報を漏らさずメモっておくくらいしか出来ないってのに、それで追いつくのかよ? 個人レベルで出来る対策なんざ限られてるってのになぁ……。


 とにかく、俺が預かった以上は、考え付く限りはしないといけない。どうしたもんかな。


「ま、待ってください! 景虎さん!」

 他の子が引き揚げてく中で、一人だけ、俺を追いかけてきた子がいた。


 ん? なんかどっかで見た覚えがあるな?


 可愛いと人気の高いアーマープレートの胴部分に、他のシリーズの籠手やら腰装備をミックスで合わせている女性キャラだ。アイコンも女。さっきの一団に居たっけな?

 そうとう高レベルだし、優遇されてた層のはずだが。ステータスの名前欄には【エリス】とある。


 亜麻色の短いカットの髪型、ゲームのプロトタイプなフェイスをベースに自身の顔を混ぜてあるのか、作り物みたいな可愛さってのじゃない。丹念にメイクした綺麗なカオだ。ピンクの唇が光っている。


「誰だっけ?」

 訝しんだ俺に、その子はくすりと笑みをこぼした。


「自己紹介しますね。ルシーの元護衛です、エリスっていいます。」

 おー、思い出したぞ。あん時、ルシフェルの傍に居た女プレイヤー二人のうちの一人じゃん。


「覚えてませんか? 向こうのテントで会ってるんですけど……、」

「ああ、思い出した。なに? ヤロウに振られたとか?」

 単刀直入、デリカシー皆無な俺。さすがにエリスとかいう女プレイヤーも表情を変える。


 だってこの女、いかにもで胡散くせーんだもん。

 このシチュエーション、スパイじゃないかって疑ってかかっていいだろ。


「ふ、フラれたわけじゃ……、て、そうですよね、やっぱりフラれたんですよね。」

 じわりと彼女の目に涙が浮き上がる。スパイ疑惑はおいといても、やっぱ許せん野郎だ、アイツ。


「彼、今はまた別の女の子と付き合ってるみたいなんです。一度に何人も付き合うなんて器用な人じゃないから、わたしは遠ざけられたんでしょうね。別に、わたしを選んでくれなくても、一緒に居られたらそれだけで良かったんですけど……、」


 そうか。誠実かどうかは置いといて、女の子泣かせるヤツは最低だと思うぞ、俺は。

 特定の子と付き合うために他の子泣かせるなんてもっての他だ。全員とお付き合いするべきだろ。(キリッ


「あの、わたしも事情があってあのテントを利用していた一人なんですけど……、個人的に相談に乗って頂くことはできませんか?」

 ちょっと深刻そうな顔をして、エリスが俯いたままそう言った。



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