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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第五章 ウォー ゲーム
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第八話 革命Ⅲ

 武器をインベに入れようとすれば、さすがに異物が引っ掛かって手応えの違いってのが解かるだろうし、なにより、俺は貼り付いてるポリゴン断面から弾き出されちまうだろう。


 だが、コイツはいつ見ても武器を背負ったままで見せびらかしてやがるから、片付けるなんて事はしないはずだ。

 フィールドボスのドロップっていう、一級品だもんな、自慢したくなる気持ちは解かるさ。


 ボスドロップにも種類がある。ランスの持ってる槍は、色が特殊バージョンのやつだ。普通はグレーメタルだが、コイツのはブラックメタルだ。ボスを倒せば必ずレア武器は出てくるが、その中でも稀に、色が違うヤツがあって……。

 コイツ等みたいな廃人になると、そういう超レアな方を狙って、ボス戦を回すってことも平気でやり出すんだ。


 何十回とボス戦に参加して、運が良ければ貰えるっていう超レアアイテム。

 何度もトドメ刺さなきゃならない性質上、仲間内で何度も挑む必要がある。グループ全体のレベルが高く、自身も高レベルでなくちゃ、まず手に入らないアイテムだ。


 ……そんで、これが肝心なトコだが、レイドボスの独占ってのをやらかす必要がある。


 まぁ、大抵は他プレイヤーの方で空気を読んで、チャンネル移動とかで邪魔はしないから問題が起きることも少ないんだが、陰ではやっぱ色々と言われてるわけだ。ボス戦に参加したいヤツは沢山居るからな。


 賛否両論、なんせ何十回と同じ武器種を取りに行くわけで、奴等にとってのハズレ、ノーマルのボスドロップ品は叩き売りの値段で市場に出回るわけだからな。

 手に入らないはずの憧れの武器が、ライトプレイヤーにも入手出来るかも、って夢を与えている。


 特に、このランス……秋津は気前がいいとかでも有名だ。掲示板とかでオークションでも開けば値が吊り上るのに、そういうのは面倒だとかでさっさと市場価格以下で売っ払っちまう。ま、嵩張るからすぐ手放したい、て理由だとは思うが。


 そういった掘り出し物を入手して、転売で値を釣り上げる奴もいて、要するに、ゲーム世界でも人間なんてのはリアルと変わらんって事だ。むしろ憎まれてんのは、こっちの転売ヤロウか。金儲けが愉しいって奴等だ。

 これは俺の勘だが、攻略組に入知恵して金取らせようなんて考えたのは、その連中じゃないかと思ってる。


 そういや、ルシフェルのグループはオークションとかはやらないで、叩き売りしちまうタイプの奴等だな。価値観の違いといえばそれまでだが、そういう実績もまた、ヤツ等の信用の裏付けになっているってことか。


 信奉者はとことん、連中をイイヤツ等だと信じ込んでんだろう。


 悪が悪を呼び寄せ、共に栄える。連中が居なきゃ金の亡者みてーな奴等も、悪知恵を生かせる機会なんてなかったはずなんだがな。こっちじゃせいぜい賭け事程度で収まってんのが良い証拠だ。


 ランスが立ち止まった。

 何か見つけたらしいが……、あ、あれはサクラだ。それに、対峙してるのは、リラとかいう少女。

 数人が乱戦状態だ。加勢に向かおうってのか、ランスが武器を構えて走り出した。

 誰か止めろ、コイツが入ったらサイアクだ!


「お前の相手はこっちよ!」

 ナイス、姐さん! 突進姿勢のランスの突撃を長刀で薙ぎ払う。レベルも互角、なんとかなるだろう。

 俺も本体に意識を戻すかと考えたが、少し様子見だ、サクラとリラが気にかかる。


 両者の装備、リラは下半身のひらひらしたスカートが目立つごく軽装の白系ライトアーマー、サクラは黒系のローブを纏ってインナーには制服のようなブレザーとスカートを身に着けている。

 リラは大剣装備の戦士職、サクラは魔法師だ。分が悪い。上級者ならさして問題はないだろうが、サクラの腕前次第ってカードだ。


「裏切り者!」

 リラが叫んで大剣を振りかざした。

 叩き付けられた切っ先が掠ったようにも見えたが、サクラにダメージはなさそうだ。剣が大地を叩く。


 サクラは逃げながら、後方から追ってくる妹の姿を確認している。


「防御陣!」

 サクラの足元に一瞬、魔法陣が輝く。自身の防御力を倍増させる魔法スキルか。立て続けにサクラは回避率UPと自然回復UP、物理属性ダメージ低下のスキルを発動させた。前準備ってヤツだ。


 自身に掛けるタイプのスキルは移動中でも発動できる、巧いな。対して敵に掛けるものは移動しながらの発動は不可、そして短いが詠唱時間ロスが付く。逃げながら、サクラは口を小さく動かして……反転、スキルを放った。

「アタックフォール!」敵の攻撃力低下のスキル。


 準備が整い、迎え撃つために正面を向いた姉に、妹が止まると同時にスキルを投げ打つ。


「ブレイク!」

 ちっ、リラは相殺を持ってたか。

【ブレイク】は敵防御低下スキル、姉の防御倍増のスキルをリセットしやがった。


 こと、プレイヤー間の戦闘なら、魔法職の戦いは、詠唱の要る攻撃系魔法よりも詠唱無しのステータス操作系魔法の駆使が明暗を分ける。スキル枠は職種で上限が違うが、それでも全ての職種が幾つかは魔法が使えるから、戦略がものを言う。第三者からのスキル発動も含めて、スキルにスキルをチェーンさせて相殺する。


 ステータス操作系統は、同種のスキルでなければ相殺が出来ない。揃えてなければその魔法は解除出来ないんだ。

 膨大なスキルの中から得捨選択、どのスキルを組み合わせるかが、対人戦闘の鍵だ。


 短い詠唱、決めのスキル発動準備。

「鏡の呪縛!」

 よしっ、サクラの戦術が完成した。リセットで一部欠けたが問題無いだろう、【鏡の呪縛】なら敵の攻撃力ダメージの半分を必ず敵に返す(ヒットしなくてもだ)、サクラは回避と回復UPがある、総じてリラに戻されるダメージのがデカい!


 走り寄るリラがサクラとの距離を詰める。


「くそ!」

 ランスが焦りの声を発した。あのままリラが突っ込んでも負けは確定だからな!

 立ちふさがるように、姐さんが進路を阻んだ。


「行かせないわよ!」

 そうだ、お前は姐さんとじゃれてろ。


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