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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第五章 ウォー ゲーム
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第一話 作戦会議Ⅰ

「いらっしゃぁい、なつきちゃん。これから宜しくねぇん。」

 姐さんは酒も入っているらしい。ナニやってたんだかなー、もー。


『姐さん、留守の間のレベル上げはちゃんとやってくれた?』

「景虎!」

「デリー!! いつまで引っ付いてんだよ! 離れろ、エロスライム!!」

 なつきのボディスーツ状態のままで、メモを首元からぴらりと出したら、エロフとロリがキレた。


 待て! 引っ張るな! いいじゃんか、別に! 男の娘だし、やましい考えはちょびっとしか無いって!

 お前らと違って課金フェイスなんだ、課金! 可愛いんだよ、ちくしょう! なんで中身がヤロウなんだっ!


「あっ、コイツ、へばりついて抵抗してる! やらしいっ! ヘンタイ!」

 うるせぇ、可愛いは正義だ! 中身なんざ気にしないと言いたいとこだが、そこを越えたらおしまいのような気もして、ものすごいプレッシャーだ! お前らには解からんだろう、この断崖絶壁を見下ろす感!


「わたしにくっつけよっ!」

「景虎はわたしのなんだから、返してよっ!」

「ちょ、ちょっと、伸びてる伸びてる!」

 くそー! 死んでも離れるもんかー!! 課金びしょうじょー!


「スライムvs美少女軍団。泥レスならぬ、スラレスかー。」

 見物人を決め込んだネロがほざく。姐さんがヘラヘラとしなだれかかる。(お前か、姐さんの相手! この間男がっ!)

 まぁ、実際、そんな感じに乱闘中なんだけど。収拾付かなくなってきた。誰か止めろ。


     ◆◆◆


 自由にしても度が過ぎるこっち陣営だが。

 俺が留守だってのに、緊張感のカケラも持ち合わせてねーとか、マジか。ホント。


 まぁ、あっちの連中がスパイを送り込んで来るなんてこと自体が有りえないとか思ってんだろう。なんせこっちは、連中が不用品を捨てるための、姥捨て山扱いだからな。

 侮りがあると思ってるし、事実、ルシフェルの手下が近付くこともなかったわけだし。


 ようやく騒ぎが終息し、俺は景虎にINして作戦会議に出席することになった。向こうの状況を説明するって約束だったからな。イベント用に設定した大テントを設置、サザンクロスメンバーと、サクラ、今日仲間に加わったなつきが居る。お子様'sとエロフには、他の連中ともども初回はご遠慮願った。


 色々とヤバい状況を見てきたわけで、慎重に掛からなきゃいけないと判断してのことだ。

 ほろ酔い気分でヘラヘラしていた姐さんも、出席した時にはいつものしゃんとした姉御に戻っていた。


「じゃあ、ルシフェルの一味をやっつければ解決するっていう、単純なものじゃないのね?」

「ああ。ピラミッド型に階級が定まっていて、それぞれが下層の者を虐げて搾取するという構図だ。悪者だらけってやつだな。」

 まずエカテリーナが口火を切る。それに俺が答えた。


「あ、あの……、妹は、リラはどうしていましたか?」

 耳に入るサクラの声に、一瞬、言葉が詰まった。


 この場で言うのは。いや。だけど。

 どっちみち、同じことだ。いずれ人の口を伝って広まるだろう。面白おかしく脚本されてから広がるのなら、それなら、今この場にいる連中だけにでも、真実を知ってもらっておいた方がいいんじゃないか。


「リラちゃんは、あの……っ、」

 なつきが説明しようと口を開くが、言葉は出てこなかった。どう言えば傷付かずに済むかが解からなかったんだ。


「リラは向こうで売春紛いのことをさせられている。」

 俺がすっぱりと言い切ったのを、なつきは驚愕の目で見つめ、他の連中も驚きで互いの顔を見合った。


「あのっ、……そ、それは、どういう……?」

 サクラは真っ青だ。予想すらしてなかったんだろう、ゲームの中で……それも、未成年がしっかりと保護されるはずの場所で、そんな目に遭わされるわけがないと信じきっていたからだ。


「お前がこっちに来たことを裏切りと見なして、その責任は妹である彼女にあると、そういう理屈らしい。」

「な……! そんなバカな話があるかよ、何人こっちに流れてきてると思ってんだ、あいつ等!?」

 ネロが激高した。


「だから、これ以上人が流れないようにイチャモン付けて止めてんだろうよ。向こうじゃ、脱出の時に金を払わなきゃならないんだぜ? 攻略組に金払って、それで出して貰うんだとよ。レベルが低いほど高い金ふんだくって、それでリラは罰金まで加算されて、売春しないとどうにもならなくなったんだ。」

「……ひでぇ話だな、」

 行き場のない怒りを抑えるように、ネロは何度もおのれの拳を打ち合わせる。


 仲間を人質にされてるようなもんだ。見張りに立った奴らが泣いて勧誘しないでくれと頼むのも道理だ。

 仲間同士で監視し合うような関係に変化して、互いが、誰かが裏切るんじゃないかと戦々恐々としている。相互扶助の逆転版、抜けた穴を塞ぐのに協力ではなく擦り付け合いで解決を図る。

 それが支配する側にとっては都合よく、逃亡の防止に繋がってるんだ。


「仲間といって、所詮はネット上の希薄な関係でしかない。最初は庇い合っても、時間の経過と共に我が身のほうが大事になるってことだろうな。洗脳で判断力も低下しているし、長期での視点ってのも無いんだ。目先の利益に走る奴らが大量に出ているんだと思う。」


 いくら全体が良心に従ったとしても、ほんの一握り、悪意に従う人間が居るだけで、その集団は悪徳に染まる。一見すれば悪に走ったほうが得に思えるからだ。悪貨が良貨を駆逐するんだ。自分も勝ち馬に乗りたいってヤツが、我も我もと追従するから。バカな小悪党どもが正体を見せはじめる。


「ルシフェル一味はそれを黙認しておくだけでいいってことね。連中が勝手に、自分たちを監視し合って、裏切りが出れば制裁まで加えてくれる。どうしたもんかしらね、なかなか厄介だわ。」

 エカテリーナは、自身が想像していたよりも遥かに複雑な支配の構造に思い悩んでいる様子だった。


 リアルの縮図と同じようなものだ、複雑で、解体が難しい。


「じゃあ……、妹は、リラは、同じギルドの仲間たちに売られたってことなんですか……?」

 サクラの声は震えていた。

 可哀そうだが、その通りだ。仲間に、売られたんだ。



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