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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第四章 イン ザ ダークネス
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第六話 歪な影響Ⅲ

『ああ。俺はアホ犬を倒せるよ。どうせだから、皆まとめて脱出させてやりたいんだが、あの阿呆どもが邪魔ばっかりしやがるんだよ。』

 メモを渡すと、男の娘……覗いたステータス欄には「なつき」とあった、この子が、微妙な顔をして頷いた。


 支配される側は、闇雲に支配側を崇拝に似たかたちで恐れるからな。

 俺が奴らを軽んじていたら反発したくなるんだ。ある程度の洗脳は解かないといけないから、少々難しいな。


『連中は怖いか?』

「ち、違うよ、執行部の人たちはみんな凄い人たちだよ。あなたはそりゃ、ものすごく強いかも知れないけど、あの人たちはボクらの事を考えて、」

『怖いのか?』


 もう一度、同じ文面を書いてメモを渡してやると、なつきは黙った。


『連中が怖いってより、なんでだかよく解からないけどイジメられるようになってて、イジメてくる奴等が怖いんだろう?』

 なつきは黙っている。返答に困っているって顔だ。どういう説明をすれば、理解してもらえるか、そんな顔。

 怖いんだか、憎いんだか、言われてしまえば何だか解からないんだろう。自分が悪いからだと思ってるしな。


 ただ苦しくて、家族には申し訳ないけど死ぬ以外の脱出法が見つからなかった、そういう感じだ。

 相手を憎むのも違うような気がしてるんだ。


 あのランスと同じだ。


 正解だ、正しいんだよ、お前は。

 誰も憎まなくていい。誰も責めなくていい。間違ってしまったのは、あいつ等も同じなんだ。

 そういう空気が出来上がって、誰も彼もがオカシクなっただけのことだ。


 お前も悪くない。だから、あいつ等が殴りかかってくるなら、殴り返せばいいんだ。

 それは正当防衛で、許される範囲だ。お前にかけられた暴力の分は、アイツ等が悪い。

 可哀そうなんて思ってやらなくてもいい。教えてやらなきゃ解からない、殴られりゃ痛いんだってな。


 俺一人、外側からこの事件を見てるから、よく見えるんだ。

 規格外のチートで、脱出しようと思えばいつでも出来る、それは俺一人なんだ。

 俺は命懸けの状況に居ない。


 唯一、デスゲームに参加してないのが、俺なんだ。


『お前が協力してくれると約束するなら、俺はお前をイジメ連中から守ってやる。』

 なつきの動揺が、身体を通して伝わってくる。


『お前に手ぇ出した奴は、俺が締め上げてやる。そうすりゃ、連中も二度とお前に手は出さない。不安なら、ずっと俺の傍に居ればいい。仕返しが怖いんだろう? けれど、連中はお前に手を出しゃ、俺に仕返しされるんだ。そっちのが百倍は怖いと思わないか? 殴らせとけ。俺が半殺しにしてやる。そしたら、ヤツ等もお前を諦める。』


 まだ駄目か? これじゃ足りないか?


『俺がルシフェルを殺したがってんのが何故か、解かるか?』

「わ、解からない、けど、」


『こんな風にイジメがはびこってんのに、野郎が何にもしねぇからだ。俺やサザンクロスの連中なら、もっとキッチリさせてるぜ。話し合いの席を設けて、あいつ等を独りずつで無理やり席に座らせて、お前が納得行くまで話もさせてやるよ。どうしてイジメられるのか、あいつ等一人一人と話したいだろう?

 絶対に暴力を振るえない場所を設えてやる。ジャッジを付けて、どっちの言い分が正しいか、白黒付けさせてやろうじゃないか。』

 暴力での解決を望まないならそういう手もある。どっちでも、好きな方を選べ。条件は破格だろ?


『言葉の暴力にはすぐにジャッジが対応してくれる。お前を傷付けるような言葉は吐かせない。そんで、大勢の他のプレイヤーにも聞いてもらえ、どっちが、間違ってんのか。奴等のしてる事はイジメだ、暴力だ。それを奴らが認めて、反省するまで、納得させるまで、やる。』

 お前の根底に、自分は間違ってないっていう、諦めきれない想いがあるんだったら、そうしろ。


 いつの間にか卑屈な考え方になってるって、自分でも解かってるんだろ。けど、どうにもならない。

 昔はこんな人間じゃなかったって。いつ、どうしてこうなったか、答えも見えない。助けを願うしかない。


 死を選ぶ方がマシなほど、抵抗するのは怖いんだろう。勇気がないんじゃない、自分が間違ってるような気がするんだ。

 だったら、勇気を出せってのも酷な話だもんな。


『心配すんな。誰が聞いたって、奴等のが間違ってる。ヘタクソだからって殴る蹴るしていいわけがねぇ。』

 少なくとも、俺はお前の味方でいてやるよ。だから心配すんな。


『協力してくれるか? あのテント群をぶち壊してやりたいんだ。イジメ連中を裁判の場へ引きずり出すためには、ルシフェルたちをまず、引きずり降ろさないとダメなんだ。ここの管理者を、入れ替えるんだよ。』

「で、でも、殺すって、」


『殺すっていうのは、PKだ。ゲームでの勝敗の付け方ってだけだ、ほんとに殺すわけじゃない。奴等のやり方が間違ってるから、俺達と交代しようっていうだけだ。言って聞かねぇから、どかねぇから力付くでどけようってだけだ。改革したいんだよ、元通りに皆で仲良くやっていけるように。』


 元通り、のあたりの文字を書き連ねた時に、いっそう強くなつきの鼓動が鳴った。

 俺から見れば酷い連中でも、コイツにはそうじゃないのかも知れないな。"友達"……か。


「PKなんて……、本当にリアル死することだってあるんでしょ、そんなの、」


『大丈夫だ、死ぬ確率高いとか言ってんのはデマだから。俺が武器なしで殴れば、確かに死ぬけどな。手加減の為に武器で殴る、死なない程度に加減してる。お前らなんぞどうでもいいって思ってたら、俺はとっくに一人でログアウトしてるよ。見殺しにしてる。』


『で? 協力してくれるのか、どうなんだ?』

 俺を、信じようという気になったらしい、そういう顔だ。決意が見えた。

 俺は少しばかり嘘を吐いたけどな。


 別に正義のなんのと言うつもりはないんだ。

 イジメが許せんというのも、深い部分なんざ見てない。連中も可哀そうな奴等だとかは、さらさら考えてない。

 俺はただ、俺が気に入らないから連中を吊るし上げてぇだけなんだ。

 心に灯った嫌悪の火をてっとり早く消したいだけのことだ。奴等がムカついたから。それは正義とは言わない。


 殴ったくらいじゃ気が収まらないから、吊し上げてやりたいだけだ。

 お前が奴等を徹底的にやり込めるのを見て、内心で"ざまぁみろ"と思えたら、きっとスカッとする。

 あ、その前に、三度は殺してやろうと思ってるけどな。


 ルシフェルよりムカつくあの連中を、まずは締め上げてやりたい。その為に手伝ってやるんだ。



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