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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第四章 イン ザ ダークネス
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第五話 歪な影響Ⅱ

 死ぬな、バカヤロウ、

 女の子がふらふらと壁に沿って歩いて、俺も一緒に城壁通路を移動した。


 街の中のエネミーは慎重に慎重を重ねて掛からないといけない。俺達もそれはもう厳重注意で掛かっている。

 それは、街の中で死んだら、ループかショック死か、うまく復活出来てもそこは広場の角だからなんだ。

 暗黒竜の目の前に、復活する。


「暗黒竜に殺された人……、生き返らなかったんだっけ……、」

 よせ、自殺とか考えるな。ここでの死は確実にリアルの死に直結する、街に突っ込もうとか考えんな。


「お父さん、お母さん、ごめんなさい、辛くて……もう、我慢出来ないよ……、」

 立ち止まって、呟いて、またトボトボと歩き出した。


 まずい、拙い、

 とにかく城門へ! こっからさっきの教会へ戻って、そこで景虎を引っ張り出して、

 間に合うか!?


 教会から屋根を伝い、エネミーを排除しつつで城門へ向かった。

 居ないか、ええい、こうなりゃ広場で待ち伏せだ!


 アホ犬が寝てる。

 一帯のエネミーを片付けて、復活ポイントを監視している俺の視界に、さっきの女の子が転送されるのが見えた。


 やはり街中で死んだら、ここへ転送か。サイアクだ。


 アホ犬が、喜んで飛び起きた。遊んでもらおうと、飛び跳ねて尻尾を振る。

 お前のお遊びに付き合ってたら、その子は身が持たないんだよ、俺が後で十分に遊んでやる。

 建物の屋根から飛び降りた。 


 スライムより、景虎のがスピードあるからな。

 さすがに新人とは違って、為す術もないって訳じゃない。あの女の子は必死に立ち回る。やっぱ死ぬのは嫌だろ?


「た、助けて……!」

 誰ともなく叫んだ声、


 ほい、俺参上。


「え?!」

「待たせたな、」


 別に待ってやしないか。

 泡食ったような顔したその子をひょい、と肩に担ぎあげてとっとと離脱した。

 お姫様抱っこじゃないのは、性別アイコンが"男"だったからだ! 男の娘かよ!


 【スライディングお座りっ】には要注意だ。二次ダメあるとは知らなかったからな。

 ひょい、と進行方向を変えるだけで、この技は難なく逃れられるんだけども。お座り姿勢で滑りながら、アホ犬がアホ面さげて見送ってた。きゅんきゅん鳴くな。お前はさすがに可愛いとか思えん。


 一目散に銀行へ駆けこむ。

 これで、街に誰も入ってなけりゃリセットが掛かるはずだ。定位置へ戻るはず。誰か居りゃアホ犬は銀行前で尻尾振り続けてお座りしてるだろう。誰も入ってないよな、そんなKY居ないよな?

 居たら絶対ぶっ殺しに行ってやる。いや、殺したらまたアホ犬の前だから、まぁ、カンベンしてやるけど。


 そっとドアを開けて、広場の方を窺った。

 広場の真ん中で、アホ犬はいつもの状態で眠りこけてやがった。リセットだ。やったね、タエちゃん。


「か、か、景虎……!」

 引き攣った顔で、俺のほうを見て、慌てて武器を構え、て、お前、それ命の恩人に対する姿勢と違う。


 俺はそんな男の娘を放置してさっさと皮を脱いでスライムに戻った。

 皮は綺麗に埃を落として、と。新たな"皮"が手に入ったからな、しばらくはインベに片付けておくか。


 俺は基本、紳士なスライムなので、以下略。

「ひぃっ!!」

 隙を突いて男の娘の鎧内部へ侵入、あっとゆー間に全身、首から下を支配下に置いた。

 外側から薄い膜のように四肢の自由を拘束したんだ。首振るくらいしか抵抗出来ねーだろ。

 全身鎧なんか着てるからだよーん。隠れ蓑にうってつけだ。


 ほい、メモメモ。

『絞め殺されたくなかったら、俺の言うとおりにしろ。』

 俺ってマジ悪党。


「ぼ、ボクなんか人質にもならないよ。死のうがどうしようが、誰も困らないもの。」

 声を震わせる、首に巻きつく触手にごくりと呑み込まれた唾液が喉を上下する感覚。

 極悪非道の景虎にとっ捕まるのは極上の恐怖だろうなぁ。


『そんな事はない。俺はお前の協力がないと困る。協力してくれるなら、お前を助ける。』

 交換条件そのものよりも、この場合は言い方が重要だろうな。


 奴らに逆らうのはコワい。だったら、その"奴等"よりも俺はコワいと思わせておく。

 けど、絶望感を煽るのは駄目だ。


「ボクなんか、何の役にも立たないよ。敵の攻撃を引き付けておくだけの簡単な役目だって出来ないもの。」

 思い出してまた泣きそうな顔と声になった。

 それにしても可愛いなぁ、性別アイコン男だけど。くそぅ。


『それは連中がヘタクソなだけだ。盾の攻撃リズムに合わせるなんて、初歩の初歩だ、盾がセオリー通りに動いてるなら、それに合わせられない他職のヤツが下手なんだ。』

「ボクがヘタクソなんだ、セオリー通りに動けって怒られるもん。」


『盾のフォローすんのが戦士で、二人はセットだ。メイン盾が溢した分をサブ盾なり戦士なりが掬い上げてフォローするまでを含めてセオリーってんだ、このゲームじゃな。そんなモンは常識だ。奴らの言い分を効率厨に聞かせてみな、鼻で笑われるレベルだ。』

「そんなこと言ったって……、」


『俺はサザンクロスの連中とつるんでるんだ、どんなヤツがヘタクソかはお前より知ってる。さっきの、アホ犬との立ち回り、なかなか凄かったじゃないか。』

 褒めてやったら、ちょっと笑った。我ながら凄い戦闘シーンだったという自負があるんだろ。無我夢中でやりゃ、実力を出すのは当然だ。2分や3分程度なら、なんとか持ちこたえたかも知れん。


『お前は巧いほうだ。あのアホ犬相手でもそこそこ行けるだろ。厄介なスキル以外は、全部躱せそうだったもんな。』

「だ、駄目だよ、そんなの無理無理! 暗黒竜の攻撃は変則パターンあるんだもん、それに一度でも避け損なったら、それで体力ほとんど持っていかれる。回復してる隙も与えられないし、死に戻りが封じられてる今の状況じゃ全然歯が立たないよ。」


 よしよし、かなり饒舌になったじゃないか。


『へー、お前って暗黒竜とやりあった事あるの?』

「そんなの当たり前じゃないか! レベル500超えてるよ、ボク。」


 エヘン、てところか。それでいい、自信を持っていいんだ。

 お前はダテに上位に食い込んでるプレイヤーじゃないんだろ。


 俺への恐怖を一瞬忘れたようだったが、すぐに思い出して、ぐっと口を噤む。思い出した途端ってヤツで、心臓がバクバク言いだした。まぁ、恐怖心を解くのは後回しでいい。

 で、コイツが経験者の盾職ってことはだ。コイツを失う痛手ってのは、向こうにとっちゃ相当にデカい、という事なんだよな。


『俺は、アホ犬を倒せるぜ?』


 ぴらりと出されたメモを見て、饒舌だったヤロウが押し黙った。

 いや、見た目は女の子だから、ヤロウってのもなんなんだけどな。

 迷ってるな。


 俺がアホ犬と互角以上でやり合えることは噂でも聞いてるし、実際にさっき見たもんな?

 ルシフェルのクソ野郎が実験で殺したチームの事を知ってるってことは、俺がそん時に見せたチートの威力についても、ある程度は知ってるってことだろ?


 あのクソ野郎は隠したがったろうが、ランスが喋っちまったろう。景虎は互角で戦えるって。希望を持てるって。


『俺は、アホ犬と互角にやれる。ただ、もうちょっと戦力が足りないから、協力者が欲しい。お前が協力してくれるなら、ログアウトさせてやれると思う。』

「ほ、本当……?」


 落ちたな。(フッ



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