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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第三章 クレイジー ティー パーティ
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第六話 訓練開始Ⅱ

 盾3人+魔法1人+俺、がもっとも効率よく進む初期攻略メンバーだと判明して、最近はそのメンツでダンジョン掃除を開始するようになった。盾のレベルを上げとくのはもっとも重要だし、ちょうどいい。


 あらかた片付いたら、とにかく全員を一度はダンジョンに放り込む。高レベと新人を組ませ、慎重にも慎重を重ねて、絶対に事故が起きないよう、誰も死なせるわけにいかない場所だからな。命懸けのレベルアップだ。


 かれこれ1ヶ月以上だからな、村の皆ももう鬱ってる奴は居ない。


 ――全員で、ここを抜け出す。――

 スローガンを掲げた事で、目標が明確になって生活にもメリハリが出てきた。

 絶望するのは手を尽くしたあとでいいんだ。


 200人を4つのグループに分けて、ゲーム時間一日の行程でダンジョン入って戦闘訓練とレベル上げだ。

 4つのグループ全部を引率し終わると、一日休憩をはさむというサイクルを組んだ。

 一度に全員入れてもいいんだろうが、想定外の事故ってのが怖いからな。目の届く範囲だ。


 朝日が大海原から顔を出す頃に、一巡で村へ戻った。そん時だ。


「ちょっと、景虎!」

 なんか怒りながら、姐さんがずんずん歩み寄ってくる。隣に、これまたほっぺ膨らませたルナが見える。

 なんかやらかしたか? 俺。


「ルナに聞いたけど、あんた、演奏スキルMAXなの!?」

「ああ。」

 なんの役にも立たんクソスキルだろ。

 魔力上限UP、体力上限UP、スタミナゲージUP、防御・回避率UP、それらは全部ごく短時間に限り、て制約付きで。

 演奏しっ放しじゃないと意味がないっていうスキルだ。俺には無用すぎ。

 姐さんが半眼で睨みつける。怖ぇ。


「スタミナ消費半減の楽譜は? 知らなかったの?」

「マジデスカ、」


 スタミナ消費半減だとぉ!? そ、そんな落とし穴が存在していたとは!!


 演奏だけなら楽譜なしでも出来るが、効果は一過性で戦闘ごとに掛け直さなきゃいけなくて。

 けど、楽譜を使って演奏した場合には、その効果はゲーム時間一日分続くんだ。使った楽譜は無くなるけど。

 ただし、楽譜に対するシンクロ率を高めないといけない。楽譜ごとに熟練度のゲージがあるんだ。


「楽譜もだけど、景虎には色々バフ技も揃えてあるんだよっ!」

 ルナが口を尖らせてわめく。うるせー、演奏なんざしたくなかったんだっ。


「なんで演奏嫌なのよ? 便利なのに。」

「そーよ、そーよっ!」


「別に俺だって、楽器がウクレレじゃなきゃ使ってるっての! なんでウクレレなんだよ! せめてエレキギターくらい使わせろっつーんだよ!!」

 楽器にも熟練度があって、今さら別の楽器に鞍替えとか出来ねーんだよ、こんちくしょう!!


 俺だって、俺だって、ウクレレでさえなけりゃぁ……!!


「なんでウクレレなんだー!?」

 シャウトマイソウル! 魂の叫びだっ!


「だって、インベ2マスで済むもんっ。」

 すぱっ、と言いやがったな、ルナ。可愛い顔してテメーは鬼だ。


 例えばエレキギター装備の演奏は、狂ったよーに踊るシャウトスタイルで、それはそれでどうかってトコだが、それでもウクレレよりマシなんだよぉ! 満面の笑顔で、道頓堀のツートンカラー人形みてーに首振りながらの直立不動ってスタイルだぞ、ウクレレの演奏時モーション!


「とにかく、そんな下らない理由は聞けないわ。明日から、あんたは楽譜の熟練上げね。」

 問答無用とエカテリーナが断言した。


 ううう、公開処刑か、こんちくしょう。


     ◆◆◆


 青い海。晴れ渡る大空。中天にある太陽から暖かい陽光が降り注ぐ。


 大海原を背に、俺は新人さんたちの前で演奏を披露する。

 て、

「見せモンじゃねぇ! あっち行け、テメーら!!」

 なんで関係ないヤツまで群がって見てんだ、まじで公開処刑か、オラ!!


 いつも鉄面皮で不機嫌そうに見えるという噂の俺が、満面スマイルで道頓堀人形みてーに首振ってる姿に、彼女彼氏らはドン引きだった。

 不満を口にする引率の盾職人、ネロ。


「なんだよー! バフ使えるなら、最初から使えよ、バカヤロウ!」

「じゃかあしい! どんだけ恥ずかしいと思ってんだ、代わるかテメー、ああ!?」

 ジャカジャンジャン♪


 俺は笑顔を引きつらせながらネロのヤツを睨み、己のスマイルとも戦っていた。


「あっ、でも、歌えるヤツが居たら、時間延長効果も狙えますよ! 相乗効果が出るそうです!」

 険悪なムードに焦った新人さんのフォローの声。


 ダレだ、歌えるヤツなんて居たか?

 こうなりゃ道連れにしてやる。おとなしく出てきやがれ。


「あ。俺、歌える。」

 ぼそっ。

 聞き逃しはせんぞ、その言葉! 歌え、さあ歌え!

 ネロが思わずこぼした言葉を素早く掬い上げて、突きつける。


「嫌だ! 俺は自慢じゃねーが、音痴なんだっ! 絶対に歌わん!」

「うるせー! 俺だって我慢してウクレレ弾いてんじゃねーかっ! ワガママは聞かんっ!」


 実は俺もメインの方は【シャウト】を習得していた! 音痴だからだ!

 歌スキル上げれば、音痴が補完されるっていう噂を信じたクチだっ! ここにも居やがったわけだ!

 補完なんてされやしなかったけどな! ははーんだ!


「マジでヘタクソなんだって! カンベンしてくれー!!」


 すったもんだの後。


 青い大海原と、さんさんと輝く太陽を背に、演奏漫才コンビのワンマンショーが開催された。

 会場内大爆笑だぜ、けっ。


 ルナに姫、テメーらは後で一発ずつ殴らせろ。



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