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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第三章 クレイジー ティー パーティ
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第三話 テントの中でⅢ

 めくるめく姐さんとの一夜のあとに、俺は朝帰りってやつでテント群へ戻った。

 朝チュンで誤魔化してしまうのが勿体ないくらいに有意義に過ごさせてもらいましたよ、ええ。

 詳しく書きたいとこだが、規約に引っ掛かるからカンベンしてくれ、すまん。


「景虎!」

 姫だ。が、なんか怒ってるな。


「ちょっと! 昨夜、エカテの姐さんのトコ行ってたって本当かよ!?」

『うん。』

 

 うげ! 踏まれた!


「わたしが居るのに、なんで他の女のトコに真っ先に行くかな! ずーっと待ってたのに!」


 待て、体重掛けて踏むな! この、


「うゃー!!」

 踏みに来た足を伝って一気に腹まで這い登ったら、猫を締め上げたみてーな悲鳴をあげた。

 ぞぞぞ、と来たらしい。ふとももとか撫でるよーに這ってやったからな。

 ボディを紐状にして、外では恥ずかしすぎる亀甲縛りにしてやらふ。変態紳士ナメんな。


「ばかぁ、ひきょーだ、こんなのぉ、」

 顔まっかにした姫が半泣きで訴える。

 変態紳士にヒキョーのヘンタイのは褒め言葉だけどな。ほーれほれ、恥ずかしいか。


「なに見てんだっ! あっち行けってば、ばかー! 邪魔すんなっ!」


 かと思えばギャラリーに噛みついて、あくまでプレイの一環です、アピールとか。

 なんだなんだと人が集まってきて、ルナに海人も人を掻き分けやってくる。それに向かって姫はぎゃーぎゃーと毒を吐き散らしまくっていた。


 お前、やっぱ面白すぎるわ。


「違うしっ! これは遊んでるだけだしっ! いやらしい目で見んな、ボケ!」

 鼻の下伸ばしてた数人の男性プレイヤーに毒の一撃。閉口した女性プレイヤーの視線を睨み返し。


「ヘンタイ、ヘンタイ、ヘンタイ! バカスライム! アホー!」

 芋虫状態でぐねぐねしてたら、ほれ、男どもの反応が。「うっ、」とか言って前かがみになるヤツやら、鼻血垂れるヤツやら。お前自分の格好がエロフなの忘れてんだろ。(VR箇体の俺のボディもきっとヤバい状態だ。)


「バカヤロー! 相談乗ってくれるっていうから、待ち伏せまでしてたのにっ! 他のテントばっか行きやがって、お前に放っとかれるヤツの気持ちが解かるかーっ!?」

 え、俺が悪いの?(汗)


「待ってたのに! ずーっと待ってたのに、アホー!」


 まるでマシンガンみてぇだな。いつまで喚き続けるんだ、コイツ。

 とか、呆れ半分で聞いてたら、急に声が小さくなって暴れるのを止めた。


「マジで待ってたんだぞぉ、ずーっと……心細かったのに、お前、居なくなってるし、不安だったのにっ、」

 本気泣きか? ど、どーした、いったい?


「も、もう何日こんなトコ居なくちゃいけないんだよぉ……、えっ、えぐ、帰りたいよ……、」

 普段は口に出さない本音がぽろりと零れ落ちる。涙がぽたぽたと地面に落ちて染みていった。ついさっきまでの元気な姿が、ぜんぶポーズだったんだと俺に知らせている。気丈に、我慢してたんだな、お前。

 気付かなかった、ストレスがMAXゲージだったのか。


 そんで、まるでそれが呼び水だったかのように、周囲からもすすり泣くような声が漏れ始めた。主に女の子の。

 みんな限界に近いトコで恐怖と戦っているんだもんな、俺が悪かった。デリカシーなかった。


 バグってしまった世界。

 これからも、何が起きるかさえ解からない世界。逃げ出すことも出来ずに、現実世界の情報は何も入ってこない。家族も警察も、誰も頼ることの出来ない世界に閉じ込められた俺達。


 とくにここの連中の恐怖は向こうの連中よりずっと強いんだ。

 弱い連中ばかりだから、街の凶暴なエネミーになんてまるで歯が立たない。助けを待つ以外、自力では脱出なんて出来そうにないって、自分で一番良く解かってる連中だ。

 世間に、運営に、同じプレイヤーである仲間に、見捨てられるかも知れない恐怖に付きまとわれている。


 泣きじゃくる姫を解放してやり、ついでで景虎を引っ張り出す。

 さすがにスライムでシリアスシーンはな。


「姫、心配すんな。俺が必ず出してやる。」

「デリー……、」ぐすぐす泣きながら、「口ん中に青いの見えてる。」


 あり?


 慌ててリンクしたから皮が完全にシンクロしてなかった。

「白目、」

 指でちょいと摘まんでカエルの死骸のポーズしたら、姫にグーで殴られた。


 よしよし、グーで殴る元気があるなら大丈夫。


     ◆◆◆


 皆、ずいぶんとストレスが溜まっているようだな。サザンクロスの古参どもは逆に、この状況を心底楽しんでいる帰来すらあったりして。一般プレイヤーとガチゲーマーとの精神性の違いってのに目を向けんのを忘れてたぜ。

 どっちに比重が掛かっているかで随分と受けるストレスの大きさは違うんだ。


 姐さんなんかはこう言った。

「もし出られなかったら? そん時は仕方ないわねぇ、最期の時までココ(・・)で愉しむわ。」


 ゲーマーにとっては、ゲームもリアルもさして違いなんかないからな。リアルの息抜きでゲームやってる連中とは感覚がまるで違ってくる。リアルだって不慮の事故だの病気だの、危険度はゲーム世界となんら変わりない。だったら、リアルなんて、さして特別とも思えない。これも一種の順応力ってヤツなのかもな。


 一般的プレイヤーが、闇雲にリアルに拘る理由が、俺達ゲーマーには理解出来ない。

 なんか、誤魔化されてんじゃないのか? なんて思ってしまう。そんなにリアル世界は有難いもんか?

 俺なんかは単に、親に負担が掛かるから早く帰りたいってだけだもんなぁ、突き詰めてみりゃ。


 デスゲームって言って、深刻になれない連中ってのはどっか余裕があるからだろうけど。

 俺にしても古参連中にしても、いざとなればいつでもアホ犬倒せるってどこかで余裕綽々だ。

 余裕があるから、弱い連中をなんとかしようなんて考えが浮かんでくるんだろ。


 だけど、それは俺がそう思うってだけで。姐さんやら古参どもが似通った考えしてるってだけで、なにも全員が同じような感覚で居るわけじゃないんだよな。色んな考えのヤツがいる。バーチャル世界でも、それはリアルと同じだ。



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