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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第二章 プレイヤー マスト ダイ
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第十二話 脱出Ⅲ

 さて、こっちの状況はなんとなく解かったが。出来るなら、他の連中の本音あたりも探っておきたいな。

「きゃあ! なに、あれ!?」


 しまった、見つかった。

 女の片っぽが俺を指差して叫ぶ。ルシフェルが剣を手にして立ち上がった。


「スライム……景虎か。そんなナリでINしてるヤツなんて、お前くらいだものなぁ? 本当に斬れないのかどうか、ちょうどいいから試してみてやるよ。」


 鞘から抜き放たれた剣は薄い輝きを纏っている。よくよく目立つことの好きな男だな、あれは強化の最終まで進んだ上位の武器だ。+15%の切れ味追加効果。切れ味ってのは、要は敵の防御率低下と同じだ。そんで攻撃力も上げてある。


「真っ二つにはなるんだろう? だったら、粉みじんに切り刻んだらどうなるのか、興味は涌かないかい?」


 興味なくはないが、遠慮しとくよ。くっつける作業はいい加減面倒くさいんでな。

 侍らせてた女たちも、ただのお人形さんって訳じゃなさそうだ。それぞれが得物を取り出し、身構えた。


「ルシーが手を出すことないわ、こんなヤツ、わたしたちで充分よ!」

「表へ出なさい! テントは貴重品なのよ、あんたなんかよりよっぽどね!」


 ほぉう? 上等だ。後で泣くなよ?


「きゃ!?」

 舞い降りたところを斬りかかってきた女戦士。そのくらいは予測済みだ、剣に纏わりついて、そのまま腕を伝って装備の内部へ侵入してやる。こっちのこういう動きは想定してなかったろ?


「いやっ!」

 床に転がってもがく女戦士に、もう一人の女が慌てて駆け寄る。鎧を引っぺがそうというんだろう。

 俺はそうなったら次にそっちへ移るというシミュレーションを頭の中に弾き出していた。


「ルシ……!?」

 剣を振り上げてやがった。


 正気か、テメェ!?


 一瞬で俺は膨張し、彼女のボディの大部分を包んだ。【ダメージゼロ】あんな上位武器で切り裂いたら、いくらこの子が高レベルプレイヤーでも、激痛で死ぬかも知れない。


 斬撃が襲って、俺はかなり大きく切り裂かれた。いや、それより、この子だ。腹を裂かれて、血が飛び散る。

 【回復ヒール】を! MPを大きく消費して、連続で回復スキルを掛けた。痛みは俺が優先、緩和されたはずだ。


「ほう? 連続ヒールまで使うのか。」

 ヤツの唇がそう動いた。声に出してはいない、あざとい野郎だ。


 また剣を振りかぶってきたヤツに、直接で飛び掛かった。躱しながら斬りつけるとかなかなかやるじゃん。

 分離した破片に意識を送り、一見はコントロール切れたように見せかける。

 お前の得たデータには、おそらく俺が幾つもの分身を操れるという事実は記載されていないよな?


「どけよ、邪魔だ! 【聖なる治癒光(ホーリーブライト)】」


 追い払うような仕草で俺を退け、奴は自分が斬り捨てた女の傍へ屈みこんでスキルを使った。

 騎士職の最高位治癒スキルか。なにが騎士様だ、外道のくせによ。


「消え失せろ! お前は最低な野郎だ!!」

 そんで、俺を睨んで吐き捨てる。俺のせいで斬ってしまった、てシナリオか、そーかい。


「ルシー……、わ、わたしは、大丈夫だから、」


 女は信じた。ちくしょう、ここはひとまず退散しといてやるよ。

 彼女は顔色が悪い、ダメージは減算されてるはずだが、それでも相当な衝撃を食らったんだろう。

 ……可哀そうなことをしたな。


 おっと、こっちも小細工はさせてもらう。

 斬り飛ばされた破片に意識を向け、地面に潜り込ませた。これで、お前の会話は筒抜けだ。


「誰か!! 侵入者よ! アイツを捕まえて!」

 外へ飛び出した俺を追って、もう一人の女戦士が眉を吊り上げて怒鳴った。


 ひょろりと立っている痩せた立木に飛びつき、するすると這い登る。追って登りだすプレイヤーが一人、群れてる連中が十数人か。これはスライムじゃキツいな。

 枝なんてもんはない、ポリゴンの皮で丸く茂みの部分が表現されているだけだ。その上によじ登り、景虎を引っ張り出す。破片を残してきたからな、リンクが巧く行くかどうか。一か八かだ。


 よし、巧く行った。破片のコントロールを維持したまま、こっちも問題なく使える。

 意識を破片のほうへ向けてみる。向こうはどうなってる?


「大丈夫か? 君が奴に蹂躙されると思って、カッとなってしまった。許してくれ。」

「ううん、大丈夫。わたしは、あなたを信じてるもの。助けようとしてくれたのよね?」

 奴はおそらく、しらじらく頷いたんだろう。あとは女の色っぽい嬌声が途切れ途切れに聞こえてきた。


 意識を放す。聞いてられるか、けっ。


 座標が完全に離れた場所へ飛ばした場合は、どっちかの体に意識が流れ込むらしいな。

 向こうに聞き耳を立ててる間はこっちがお留守で、こっちに意識を向けると向こうは解からなくなる。大きな隙に繋がるな、あまり乱用はしない方がよさそうだ。


 こっちは下が騒がしい。卑怯者だの、女の敵だの、言いたい放題に言ってくれてるぜ。

 そんなにRPロールプレイがお好みなら、付き合ってやるよ。ただし、お前らは正義の味方じゃねぇぜ?


 ひさびさにスコップ装備だ。素手で殴ったら殺しちまうからな。耐久+15に改造しといた特注だ。

 100人はボコ殴りにしても壊れないぜ。対プレイヤー用の、死なない程度にダメージ抑えてくれるスグレモノ装備に改造した。

 バグった街は、レベル上げ、上位素材集めには最適だったこと、こっちの連中はまだ知らないらしいな。まぁ、俺という超絶チートが居ればこそ、の特典だけど。


 そんじゃ、いきますか。


 群れの真ん中へ飛び降りたら、一気に輪が広がった。俺はさすがに怖いと見える。

 とん、と肩へショベルを担いで啖呵を切る。高圧的に、ドスの効いた声を作って。


「……スコップウォリアー、見参。」

 ボコられたい奴から、かかってきな。



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