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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第二章 プレイヤー マスト ダイ
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第十話 脱出Ⅰ

 俺達の陣営に、すでにヤツの仲間が入り込んでるというなら、誰も気付かないはずがないんだが。

 いや、200人も居ると、さすがに全員と親しくってわけにはいかないか。それでもヤツが嘘を吐いてる事は確かだよな、俺はヤツの仲間とやらに接触された覚えもなけりゃ、爪はじきにされてもいないわけだし。


 どうにもヤツのやり方ってのが、理解に苦しむぜ。すぐバレる嘘なんか吐いてどうすんだろう。


 一番中央のテントに灯りがあった。きっとヤツが手下を侍らせてやがんだろう。裏側からぐるりと迂回して、見張りの足元をそーっと通り抜ける。スライムは綺麗な色をしてるから、普通なら見つからないわけがないんだが、今は夜陰に乗じてるのとテントの色がおあつらえ向きに同系色のブルーだった事が幸いしてる。


 大胆に行こう、入り口隙間から潜入。


 これがリアルなら、例えば裏から屋根伝いに入り込むとかも可能だろうが、なんせこの世界はプログラムだ。設定にない事は何も出来ない。テントなんて本当は布一枚だからぴったり貼り付けば中の声くらい聞こえそうなもんだが、実際は何も聞こえない。中と外は別の座標になるからだ。


 だから、危険だろうがどうしようが正面から中へ入らないといけない。……けど、俺はスライムだから?

 正面からとか言いつつ、屋根によじ登ってテントの入り口上部に陣取ってたりするけどな!


 さあ来い! 誰か!


 便乗して侵入する気満々で待ち構えること数分、二人のプレイヤーが連れ立ってやって来た。ばっさ、と開かれたテント入り口の幌が閉じる前にするりと俺も中へ移動。

 よし、侵入成功。入ってしまえばオケ、帰りはどーせ派手に暴れる心算よぉ。このテントぶっ壊して出てやる。


 中には、いけ好かないあの野郎がふんぞり返っていやがった。両脇に女二人抱えて。嫌な野郎だ、本当に。


「ルシさん、ご苦労さまです!」

 二人が敬礼して大声で挨拶を寄越した。奴は横柄な態度で頷いただけだ。ほんっとーに、以下略。


「部隊編成は終わったのかい? 各隊長に挨拶もしておきたいから、明日の朝に招集をかけてくれよ?」

「はい、了解です。……ところで、あの、チート村の連中のことで妙な噂が流れてるんですけど、どうしますか?」


 部隊編成か、もう攻略が秒読み段階だってのか? いくら何でも早すぎるんじゃないか?


 バグの具合も測らないといけないし、プレイヤーの実力も把握してないといけない。何より、信頼関係築く前に枠組みだけ先に作ったんじゃ、人心掌握が難しくなるぞ。ネトゲは協力プレイが柱なのに。

 色々と準備を考えりゃ、最低一月は掛かると踏んでたんだけどな。


「噂か。知ってるよ。俺たちが連中を見捨ててしまうつもりなんじゃないか、って心配してるプレイヤーたちが居るんだろう? 向こうに知り合いが居るって奴も少なくはないからな、そりゃ当然、心配にもなるだろう。」

「そ、そうなんです。隊長格に直接質問するプレイヤーも居たりして……、返答に困っているらしいんです。」


「本当なら全員こっちへ呼びたいところなんだ。けれど、連中はこんな状況になっているにも関わらず、いつまでもチート武器を持ち続けていたわけだろう? 捨てたと言って、それを信用出来ないっていうのが第一さ。」


 ほーう。インベントリは確かに他人には覗けない、嘘を吐かれたらそれきりだってか。

 まったく、差別の為の差別思考だな。胸糞悪い。


「それはそうですが、けど、それだけで隔離っていうのは……!」


「よく聞いてくれ。君らのように考える者も多いし、俺達のやり方は厳し過ぎると思っている者も多い。だけど、ここはプログラムの中なんだ。それを忘れてはいけないんじゃないか? 何が起きるかも解からない、いや、実際に起きてしまったからこそ、俺達はログアウト不能に陥ってるんだろう? これ以上にバグが広がらないという保障はどこにもないんだ。そうだろう?」


 そりゃあ、その通りだ。だから俺としても悠長に構えてるわけには行かないと感じているし、サザンクロスの連中も躍起になってる。こんな風に二つに分かれてる場合じゃないと思ってんだけどな? お前はどうなんだ?


「あっちにはエネミーが涌かないから、そのうち連中はスタミナ切れで動けなくなるって心配する声もあるな。そんなことは俺達も十分に考えたことなんだがな。けれど、連中を下手に野放しにしたら、またどこでチートを使うか解からないだろう? そのチートが原因で、今度は完全に脱出の魔法陣がイカレてしまうという事を考えないのか?」

「魔法陣が……?」


「そうだ。あれは元々運営が無理やりフィールドに穴を開けて作ったものだろう? 元からが、不安定なんだ。そういう事を考えたことはないのか? 連中が行動不能になるくらい、大したことじゃないと俺は思うけどね。」


 そうかい。お前の考えはそうなのか。

 やっぱ俺は、お前とは解かり合えそうにないな。


「あの景虎とかいうヤツはもっともヤバいな。いつまた、どんなバグを引き起こすか解からない。だから、チート武器を手放さない連中ともども、チュートリアルの地へ隔離する必要があると思ってるよ。俺達は彼らの為を思ってあちらへ行ってもらったんだ。多少は不都合があるかも知れないけど、それくらいは我慢してもらわないと。

 彼らは攻略戦には参加せずに済むわけだし、むしろ安全が保障されていると考えてほしい。」


 完全に丸め込みやがったが、二人は納得してるような顔じゃないな。反論出来ないから黙っただけだ。

 そりゃあそうだろう、リアルで死ぬかも知れないんだ。顔を見知った知人が。奴はさらに畳み掛けようと言うんだろう、にっこりと、自信満々の笑みを浮かべた。


「いやもう、いっその事、スタミナが切れて全員が転がっててくれた方がいいんだよ。下手に動き回られる方がバグを起こす危険が増えるんだからさ。ああ、スタミナ切れで死ぬことはないよ、実証済だ。」


 おい、ちょっと待てよ、お前。

 実証済って、どこで試したっていうんだ? それ?


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