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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第二章 プレイヤー マスト ダイ
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第九話 潜入Ⅲ

「俺、知り合いがチート使ってて、向こうに行ったんだ。大丈夫なのかな。」

「ええ!? なんでまた……、」


 中身男なエルフ女がきょろきょろと周囲を見回してから声を落として囁いた。

 俺には丸聞こえだけど。

「どうして途中で捨てて来させなかったんだよ。知らん顔して捨てときゃ問題なかったのに。そういうヤツ、結構居るんだぜ? 俺なんか、これ、倉庫キャラでINしてたからセーフだけど、実を言うとメインの方には、さ、」


 メインのインベにはチート武器入ってます、てか。まぁ、当然だわな。持った事ないヤツの方が少ないだろうさ。

 だからこそ、この線引きはおかしいって気付かなきゃいけないわけだけども?


 程度の差でアウトとセーフを決めるって事自体がおかしいんだ。疑わしいと思うケースがなぜセーフになるかを考えやがれ。自分らで都合のいい場所に線を引いてるだけ、本来、延長でしかない話だろうが。その行為がアウトなら、本来、セーフなんてケースは存在しないんだ。


 自分の身が可愛い。どっちも言ってる言葉は違えども、意味は同じってことだな。


「じ、実は俺も持ってたんだ、アイツが向こうに行かされた時にこっそり渡してやったけど。ほら、予備が有った方がいいと思うし……、アイツ、俺より始めるの遅かったし、そんなに巧くもないから放り出されちゃって、」

「そうか、新人やヘタクソな奴は計画に支障を来たすからって、向こうへやられちゃったもんな。けど、仕方ないだろ? ギリギリ助かるかどうかなんだ、少しくらいは我慢しなきゃ……、」


 なんだ? 理屈が合わない話をしてて、状況がよく解からないな? ヘタクソとチートを隔離することで、何か展開的に進展するようなことがあるか? 相手はプログラムで、外の状態なんてまるで関係ないぞ。これが対人戦闘とかなら、心理戦ってこともありうるだろうけど。


 てか、俺としては、あの野郎はチート連中や新人たちを捨ててくつもりだと踏んでいる訳だけど、コイツ等をどうやって誤魔化したんだ? 巧い事言って丸め込んでるんだろうと思うんだが。


 それとも、やっぱり俺の見立てが間違ってるとか? 悪モンだって決めつけてかかってるからなー。


「暗黒竜を倒すには精鋭部隊を組んで掛からなきゃいけない。ルシさんがそう言ってたろ? なんとか一部の者だけでもそれでログアウト出来れば、リアルに帰ってから世間に働きかけられるんだ。運営がどんな嘘を吐いてようと、世間が騒いで警察が介入するようになれば、きっと助けてもらえるさ。」

「そうだな、望みを捨てちゃいけないよな。ルシさんの言うとおりだ。」


 ふーん。結構、まともに考えてやがんのか。あの野郎も。


 だけど、実際のところはどうだろうな? 運営が俺達を見捨てるつもりで隠蔽していると見るには無理があるんだが。プレイヤー個人個人、家族が居るわけで、VR箇体から出てこれない状態ってのはもう知れ渡ってるはずだ。世間がこの事故を知らないなんて事は有りえない。

 緊急の救命措置が取られてるだろうから、俺なんかは逆にこんなにのんびり構えてるんだけどな。


 今回の被害者はおそらく全員が生命維持装置に繋がれてるはずだ。普通のVR箇体に接続する形で緊急用の医療器材が動き出してるなら、プレイヤーは少なくともあと一年は生きていられる。VR機の生産段階で、そういう基準をクリアしないと認可が下りないからな。

 一年以内になんとかしろ、て話なら、焦る必要はないんだ。


 自分が英雄になりたいから、それで功を焦ってるのか? 早くログアウトしたいのは、誰もが同じだろうけど、なんか釈然としないな。ああ、けど、アイツは俺のチートの事は知らないわけだし、ここまでの余裕は持てなくて当然なのか。ノーマルな連中を率いてアホ犬の攻略をしろとか言われたら、そりゃ、俺でも深刻になる。犠牲者を出さずに済ませる方法ってのが思いつかないもんなぁ。


「それに、ルシさんの仲間が向こうに居るそうだぜ? 例のチート野郎も手も足も出なくて大人しくしてるそうだし、心配いらないさ。」

「本当かな、それ? 境界線の見張りに立ったヤツが見たって言ってたけど、サザンクロスの幹部と親しそうに話してたって聞いたぞ?」

「えっ? そうなのか? おかしいな、チート野郎は爪はじきになってるって聞いたんだけどな……。」


 そうかー。今度ちゃんと聞いとけよー。景虎って、酷い野郎で皆の嫌われ者なんじゃないんですか?てな。

 あの野郎、もう少し後先考えて嘘吐けばいいのに。バレバレじゃねーか。何を考えてやがるんだかな。


 奴は、自分さえ良ければいい、って考えのヤツだと思ってんだけど。早計だったかな。噂話だけじゃ判断出来ん。

 それにしても、お前らいつまで油売ってる気だ、早いこと仕事に戻れよー。身動き取れねーだろ。


 別の方面からカンテラの灯が近付いて、それを見て、慌てて二人は離れて行った。

 やれやれ。


 さてと。俺としてはあの銀髪野郎がどこに居るかを見当付けなきゃいけないわけだが。

 やたらとテントの数が多くてどれがどれだか、だな。

 ん? ああ、おそらくはあれだろうな、奴の性格が反映されたテントの一群があるわ。


 テントの群れの真ん中、ちょっとした丘陵のとこに、まるで見下ろすみてーに4つ5つのテントが張られている。

 すでに王様気取りだ。解かりやすいヤツ。

 見つからないようにインベに隠れて見回りをやり過ごしながら、なんとかテントのお城に近付いてった。


 まずは、奴の本心を探り出さないことには交渉も何も出来ないからな。

 本当に少数精鋭でデスゲ脱出して、外部と連絡を取ることを優先にしてるなら、協力するのも手だ。だが。

 俺達を追い出した時のあの目がな、なんか引っ掛かってて、イマイチ信用出来ない。


 どうにも奴は胡散臭いっていうか、嘘くせーんだよな……。



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