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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第二章 プレイヤー マスト ダイ
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第八話 潜入Ⅱ

 ゲームだからな。エネミーの判断基準はあくまでプログラム上の座標軸、視界なんかまるで関係ない。


 設定範囲内に基準値の反応があればルーチンワークで処理判断下して、攻撃かスルーかを決定する。戦闘時はアクティブモードで索敵範囲が広く取られ、通常時に戻れば狭まるはずだ。


 インベントリの中にすっぽり収まる今の俺の状態が、果たして座標上ではどうなってるか?て問題だ。

 恐らくは認識されない……と、願いたいっ! ペットハリネズミで報告されたバグだったが!

 ペットインベントリのバグ仕様よ! どうか俺に微笑んでくれ! 修正来てませんようにっ!


 ……。やったねタエちゃん、スルーだよ!

 足元に俺が居るのにも気付かないまま、アホ犬は軽いステップ踏んで通り過ぎて行った!

 ガッツポーズ!(いや腕はないけど。)


 インベントリに入ったまま移動が出来れば、言うことないんだがなぁ……。


 アホ犬が完全に通常モード、動作停止状態の眠りに戻るまで、俺はじっとインベに隠れてやりすごす。奴はお座りから一瞬だけ伏せに戻り、すぐに飛び起きて尻尾を振って跳ね回り、またお座りでじーっとこっちを見て……。うう。

 早いこと、寝ろやー、アホ犬ー。


 ようやく寝た頃には夜になっていた。ゲーム時間の朝に出掛けたのに、一日がかりかよー。

 潜んでいたインベントリから抜け出し、またずりずりと移動を開始する。こっから先は慎重に行かないとな。トレインしてたら向こうの連中に気付かれちまう。


 エネミーはうろうろと無軌道に動き回っているように見えて、実はルートに従って移動している。でないとぶつかったり、壁の前で延々足踏みする事になるだろ? だからこっちも、巧いことやればエネミーに発見されることなく、すり抜けながら進むことが出来るんだ。

 索敵範囲内に居る時はインベに隠れてやりすごし、遠くに行ったらその隙に移動する。


 そうやって、ようやく街を抜け出ることに成功した。


 街の城門を抜けると、すぐにフィールドの景色が一変する。俺達のエリアとはまた違う草原地帯だ。

 ひょろりとした木がところどころに生えていて、その間を縫うように沢山のテントが設営されている。最初に見た時より増えてる。さすがに人数が違うからな、こうして見ると圧巻だ。カンテラを片手に数人のプレイヤーがうろうろと見回りをしている。


 なにより羨ましいのは、こっちのフィールドにはエネミーの他に放し飼いの鶏や羊、牛が放牧されてることだ。あれを狩れば肉やアイテムが手に入る。料理でスタミナを補えるし、なにより牛やエネミーは無限に涌くんだ。


 連中もきっとスパイの侵入には警戒してるはずだ。俺の予想では、あのルシフェルって野郎は自分が王様になるつもりだろうからな、地盤が固まる前に差別民である俺達に出し抜かれたりすんのは困るはずだ。

 皆を救った英雄、そう呼ばれるためには全員を自分の支配下に置く必要があるって事だからな。


 スパイに入り込まれて情報が筒抜けになった、なんて事が知れたら、自分の評価が下がる。影響力が薄まれば、反抗する奴も出てくる。向こうのチート連中は無能だ、と、そういう事にしとかないと困るってことだろ。

 境界線に厳重な見張りを立ててんのはそういう意味の裏返しだ。


 だったら。

 行きは密かにバレないように、帰りは派手に追いかけられながら、逃げ帰ってやるよ。(ちょっとした意趣返しだ。)


 こっそりと連中のテントへ這い寄っていく。見張りが数人うろついているからインベに隠れながらだ。

 しかし、既に役割分担まで決まっているってのは正直驚いたな。あれからまだほんの数日だってのに。だからこそ、俺達を差別民に仕立て上げる必要があった、とも取れるわけだけど。


 おっと危ねぇ、インベに隠れて近付く見回りをやりすごす。


「おい、」

「ん? なんだ?」

 ちょ、とっとと行けよ、こんなトコで立ち止まるなって!


 弓を手にしたエルフ女キャラと、カンテラ持ちの女戦士が立ち話を始めやがった。

 くそ、どっちも男か。男の娘じゃ、パンツ覗けても嬉しくも何ともねーな。


「あの噂って本当なのかな? ほら、はぐれ者の村にとんでもねぇチートの化け物が居てって、あの話。」

「ああ、確か景虎とかいうキャラだろ? 俺も見たけど、ヤバそうだったぞ。ルシさんに思いっきり喧嘩売ってきたしな。普段からMPKしまくってたって噂だし、関わりにならなくて良かったぜ。」


 おーい、誰がプレイヤーキラーだ、いくら何でも酷過ぎる噂流すなよ! 責任者出せ!

 もちろん、そんな文句を口に出したりはしないわけで、そのまま聞き耳を立てていた。MPKってのは、通常、PKが出来ない場所でもバグやら小細工やら使って無理やりPKをする奴等のことだ。当然俺はそんなんじゃない。


「あのキャラが原因じゃないかって、ルシさんは思ってるらしい。幾らなんでも酷いバグだからな、スライムが本体で、チートのカンストキャラの皮被ってたり……、あ、制限外したチート武器まで持ってるらしいぜ。」


 そんなモンがあるなら、欲しいよ、マジで。制限無しのチート武器あったら、アホ犬倒せるんだからな!

 景虎じゃ、ギリギリ攻撃力が足りねーんだ、スタミナシステムが無きゃ、余裕で倒せるさ。

 犠牲を出さない攻略法ってのが見つからねーから、うんうん唸ってんだろうが。


 その後も延々と続きそうな勢いで、俺がいかに非道なプレイヤーかって話が飛び交った。

 あの野郎、俺を標的にしやがったな。こっちのプレイヤーの嫌悪を俺に集中させて、向こうから引き抜いた連中をスムーズに馴染ませようって魂胆か。ヤツが悪い、だから彼らも被害者だ、てか。くそったれ。



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