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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第二章 プレイヤー マスト ダイ
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第六話 敵対Ⅲ

「古参の強豪でもチート使うのか。」

「効率考えたらレベル上げには必須だもの。うちは特に有名だったものね、袋叩きよ。」

 肩を竦めて、女戦士、エカテリーナがそう答えた。


 銀色の髪はよく解からない感じに結われていて、右の斜め後ろへ尻尾のように流れている。大人しめの髪飾りが付いて、衣装とも相まってどことなくエキゾチックな雰囲気だ。振袖とも袴ともつかない、妙なデザインの服を着た美人。


 サラシの巻かれた胸元が目に毒だ。得物は太刀で背中に背負っている。太刀といいつつ、物干し竿とか呼ばれる薙刀のような扱いの剣で、あまり使ってるプレイヤーは見ないな。(味方ごと切り刻むから)

 キツ目の美人が俺の方を見て、なんか気付いたような顔をした。


「あら? 貴方、ステイタス欄までバグってるの? 無茶苦茶な事になってるわ。」

「どんな風に?」

 不味いな、ここは誤魔化しとくか? いや、掻い摘んだ説明はした方がいいか。


「種族の欄が二つもあるわよ? 一つは"スライム"になってて、一つが"刀剣"ですって。HPとか全てのステータスも"0"になってる。なぁに? これ?」

 他人からはそうなってんのか。本人に見えてんのは、カンスト数字なんだけどな。俺からは見えないスライムの方のステかも知れない、ゼロのオンパレードなら、そりゃ、『ないものは減らない』って状態なのも頷けるか。


「よく解からん、最初はペットのスライムでINしたんだけどな。なぜか他人のキャラも使えたんだ。攻撃力は測れないからどうだか知らんが、街中の雑魚程度なら一撃だ。」

「存在がチートってヤツ? まぁいいわ、今は強けりゃなんでもいい。それから、仲間たちが各地に散って残りのプレイヤーを拾い歩いてるわ。こんな事になってるって知らずにいる連中も多いでしょうからね。とにかく全員掛かりで倒すしかない、そうでしょ?」


 ま、そういう事だよな。確かに。

「どのみち、今すぐは無理だ。対策を講じない事には犠牲者が山盛りになるだけだしな。アンタ等が居るなら、ここは任せて良さそうだな。俺はコイツを被ってるだけでスタミナ消費する、省エネモードに戻らせてもらうぜ?」


 景虎は確かに強いが、敵の涌かないこのフィールドでは無用の長物だ。スライムの方はバグってるから、スタミナ消費はゼロだし、そっちの方が都合がいいだろ。

 俺は元の姿に戻るべく、口の中に手を突っ込んだ。


 ずるっ、


「きもっ!」

 さも嫌そうな声で飛び退りながらエカテリーナが叫んだ。……めっちゃくちゃ傷付いたな、今。


 景虎を俺のインベへ仕舞い込む。その動作はほとんどスライムのグロいお食事風景だ。

 くぱぁと広がり、呑み込み、ぐるんと丸めてインベへ放り込む。

 いやー、だの、見たくなかった、だのと散々喚き散らして、強豪女戦士は大騒ぎしていた。

 うるせーな、まったく。


 さて、スライムに戻ると会話が少々困難になるが、背に腹は、てな。道具屋で買ったメモとペンが役に立つだろう。


『テント設営、ヨロシク。海人が持ってる、出来れば全員に供出促してくれ。』

「いちいち筆談する気? 面倒くさいなぁ……、話し合いの時にはちゃんと人間の皮かぶってよ?」

 解かった解かった、人を物の怪みたいに言いやがって。


『オケ』

 触手をペンに絡ませてぐりっと書き記した。


 そんなこんなで、チュートリアルの地にテント村を設営して十日目。

 ちょっとした問題が起きていた。


 人々をかき集めに行っていたサザンクロスの連中がこの十日で戻ってきていたんだが、予想の斜め上を行く展開が待っていた。表側の連中だ、アイツ等、関所よろしくこっちとの境界線に見張りを立てて、チート以外の連中をぜんぶ引っ張っていきやがったんだ。

 一人で村へ戻るギルドメンバーに、訝った皆が事情を聞いて発覚したそうだ。


 俺の傍まで来たサザンクロスの幹部二人が事情を教えてくれたんだが。

 スライムの状態で過ごしてる俺に、例の着物美人ともう一人騎士職の男とが尋ねてきた。コイツも何かのアニメキャラをモチーフにしてたはずだ。


「不味いわね、どうする? 人が集まらないことには、攻略もへったくれもないわ。」

「サザンクロスのメンツが25人、その中で使えそうな奴等は15人ってとこだ。運が悪かったな。」


『どういうことだ?』

 計算が合わないぞ、サザンクロスは大所帯で300人からの構成員が居るはずだ。ギルマスもサブマスも、そういえば姿が見えない。俺のギルド、エターナルメモリーもこっちに居るのは俺と姫の二人だけのようだけど。


「重大なバグが起きてるのは、この第三サードチャンネルだけなのよ。第二サーバで暴走が起きたらしいんだけど、同じサーバー内の残り六つのチャンネルでは始まりの街はバグって無かったようなの。皆脱出してるわ。」

 エカテリーナの言葉の後に続いて、もう一人のギルドメンバーが割り込んで喋り出した。赤毛のイケメンキャラ。中身も男。二人ともレベルは500超えてる。廃人一歩手前の奴等だ。


「チャンネル間の通信は普通に繋がっていた。今は無人だろう、呼びかけても誰も反応しないからな。そして、チャンネルの移動も出来なくなっている。閉じ込められてるのは、サードチャンネルにINしてた連中だけってことだ。」

「ほぼ満員状態だったから、およそ1000人よ。」


 ギルド間の内訳までは知れないが、取り残されたのが千人として、こっちには200人弱しか居ないってか。

 ちと辛いな、それは。


 俺の予想の通り、向こうの連中は初心者やらそれに毛が生えた程度の新人を放り出しやがったんだ。


 レベルを上げている余裕がないって理由でな。チートと一緒に留守番していろと言われたらしい。

 新人たちは手持ちの金とアイテムも巻き上げられていた。俺達と別れた翌日には資金とアイテムの供出をさせてたって話だからな、元から計画してたんだろう。


 手持ちの有り金となけなしのアイテム全部か。銀行に取りに行けないのを知ってて……鬼畜だな。


「向こうは中堅から上位のプレイヤーばかり確保して、面倒な新人はぜんぶこっちへ押し付けやがった。おまけに、こっちの使えそうな上位プレイヤーの引き抜きまで始めてやがる。」

 憎々しげに騎士が吐き落した。いいさ、サザンクロスの離反者がゼロってだけでも有難いさ。


 なんとかしないといけないのは山々だが、何せチャットもなんも使えない状態だからな。情報が入ってこない。


『俺が様子を見に行ってくる、』

「危険じゃない? アイツ等、プレイヤー相手でもなにするか解からないわよ、いいの?」

『大丈夫だ、ヤバいようならさっさと逃げる。』

 なに、スライムモードの俺はチートで【ダメージゼロ】、いわば不死身の状態だ。景虎の方はどの程度耐えるのか確認はしてないけど、頭飛ばされた程度じゃ死なないのは確実だしな。大丈夫だろ。


 敵地へ潜入、て、本来はそんな状況じゃないってのにな。

 まだどこかに甘い考えが残ってるんだろう、連中には。



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