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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
最終章 サイドアタック オブ ウルフ
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第三話 救出作戦Ⅰ

「我々"オクトパシィ"は約束通り、君たち全員を救出する事に成功した! 今回、不幸な事故は最小限に食い止められた、我々と、正義の勝利だ!」


 ほざけ、事件がすべて終わった後で吠え面かかせてやるから、首洗って待ってろ。

 お前たちは明日から国際指名手配だ。


 テロリストの首領と思しき男が、プレイヤーを前に得意げに演説をぶつのを、皆が不服そうな態度で聞いている。空気で感じられるだろうに、図太い神経の主は知ったことかと演説を続けていた。

 独善だろうが何だろうが、結果さえ望んだ通りなら奴等は満足なんだろう。


「このような危険に見舞われたんだ! 君たちもネットゲームの恐ろしさは身を持って味わったはず! この恐怖の体験を、ここに居るすべてのプレイヤーが世間に訴えていってくれる事と信じている! これだけの目に遭わされたのだ、君たちには怒りをもって事件を語る義務と、権利とがある!」

 そうだな、そこだけは同意するよ。


 皆、なんとも納得がいかないんだ。連中の顔と、その傍に立つ俺とを交互に見比べて、俺に無言で訴えるような視線を送ってくる。誰かの視線を受け取るたびに、俺は微かに首を振って逆らうなと示唆した。

 前もって運営通信の方法で、事情は説明してあるんだが、それでも皆不穏な空気を醸し出している。暴発は俺が抑えなきゃいけない。


 これから街に突入し、エネミーをすべて駆逐する。

 当初の計画じゃ、上位プレイヤーで協力してやるしかないと思っていた部分だが、テロリストの連中が引き受けてくれるそうだ。有難いというか、見事なマッチポンプだね。


「街はバグの為にフィールドダンジョンが重なってしまって非常に危険だ! そこで、我々が身を挺して君たちの為に道を切り開いてゆこう! 街に湧き出るエネミーを我々の同志たちが抑える、君たち全員が街へ入った事を確認の後に、最大の障壁である"暗黒竜"を退ける! ログアウトを阻むボスエネミーが取り除かれれば、緊急脱出用の魔法陣も正常に機能するであろう! プレイヤーの諸君、君たちはそれまで、何も心配せず待機していて欲しい!」


 テメェらが仕掛けたエネミーだ、テメェらで片付けるのは、むしろ当然だろうが。何を恩着せがましいことほざいてやがる。……皆、そんな顔をしていた。


「我々の任務は、君たちを一人も欠けることなく脱出させる事にあるっ! 罪なき被害者を救おうではないか、同志たちよ!」

 大演説が、どうやら終了したらしい。歓声や拍手の類は連中の仲間内でしか鳴らなかったが。


 空気が微妙なことには、おそらく連中も気付いてはいただろう。

 だが、慣れていたのか、気付いていても気に掛けはしない。お蔭でこっちの裏もバレずに済んでいる。


 皆、もう少し芝居してくれりゃいいんだけどなぁ。騙されてるフリしとけって言ってあるんだが。

 ここまで酷いアウェーの空気にもビクともせず、オクトパシィの連中は胸をそびやかしている。図太いというか、狂った連中の感覚はやはりオカシイ。


 そっと視線を向けると、ルシフェルの奴だけは深刻な表情をしていた。

 リアルが相当に切羽詰っていると見える、焦ってやがるな。心ここに在らず、お蔭でバレずに済んでいる。

 黄色いサルの集団が不穏なくらいは、なんの問題もない、そんな風にでも思ってんだろう。


 テロリストどもは、ここへ来てまた多少の小細工をしやがった。

 動きが妙にぎこちない。たぶん、外部リモートでの操作に切り替えたんだろう。VR箇体で自身がこっちへ入り込んだんじゃ、脱出後に足が付く危険が大きいからな。


 幾つかのポートを経由して、遠隔操作でボット状態の連中のキャラを動かしている。今までも、この手で捜査の撹乱をして逃れてきたわけだ、用心深いんだか迂闊なんだか解からない連中だ。

 今回ばかりは、逃げられない。証拠がすべて揃っちまったからな。無駄な努力をご苦労さん。


「それでは作戦の説明を開始するっ! まず、これより全員を数名単位のグループに分け、それぞれのリーダーを決めてもらう! グループ編成は初心者と上級者がまんべんなく組み合わされることがベストだ!」


 細かな指示を始め、それに従ってプレイヤーたちも動かされる。テロリストたちが散り、人々を塊に分け始めた。ところどころで衝突も起きている、……ヤバいな。

 秋津やエカテ姐さんたち、近くの古参メンバーが抑えてなんとか問題を回避しているが。

 こらえてくれ、皆。


 偉そうに指図してんのは、こっちから見ても解かる。態度がデカいんだよ、あの連中。


「皆! 逆らわずに従ってくれ! 頼む!」

 黙ってられん、つい口を挟んでしまった。


 皆、俺を見て、そして一触即発だった空気が少しだけクールダウンした。

 緊張感で胃に穴があきそうだな。誰かをボコボコに殴りまわしてる方がよほど気が楽だぜ。

 そんで、うっとおしいのが近付いてきやがった。紳士面した下衆野郎だ。


「景虎くん、何度も言うが我々はテロリストの類じゃない。誤解を招くような言動は控えてもらいたいな。」

「ああ、解かった、出しゃばって悪かったよ、」

「解かってないじゃないか、君は。さっきの暴言はなんだね? 逆らわず? 我々を危険視しているから、そういう言動がだね……、」


 ねちねちとしつこい注意が始まった。

 オクトパシィの援軍で来た中の一人だが、なんかやたらと俺に突っかかってくる。

 目がギラギラして、ねちねちとした言動で俺をいたぶってんのが愉しいらしい。クソが。


 皆は事前に知らされている、脱出の後に俺がこの連中を片付けると。

 自分たちが楔となって俺の身動きを封じていると知らされているから、皆の目は俺に集まる。


 複雑な心境を反映して、それと共に期待を込めて、1000人分の視線が俺に向けられている。



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