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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
最終章 サイドアタック オブ ウルフ
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第二話 駆け引きⅡ

「君と取引がしたいんだ。これは俺が、というよりはオクトパシィからの提案でね。聞いてもらえるかな? 君にとっても悪い話じゃないはずだ。」

 ついに本題を持ち出してきたか。前座が長すぎていい加減飽き飽きしてたところだぜ。


 コイツは、自身の正体だとか結社だとかの事情が、俺に筒抜けになっている事を知らないんだ。バレてるなんて、思ってもいないんだろう。最初に会った時のルシフェルと今のお前とじゃ、やっぱり違う、別人だってのはなんとなく解かるんだけどな。

 とてつもなく良く似た他人、だ。価値観が似通ってる分、知らなきゃ気付かないかも知れない。


 調子に乗って、ルシフェルの成りすましが話を始めた。


「海藤グループの陰謀が事の発端だ、君も幾らかは情報を掴んでいるだろうが。それと、君の知らない情報を提供しよう、友好の証に。」

 なにが友好だ、反吐が出るぜ。表面上は無表情を貫くけどな。


「怖い顔をしないで聞いてくれ。誤解なんだから。」

 いずれ、この会談の模様が世間に公開されることを見越して、奴等は口裏を合わせて芝居を打つ。

 ルシフェルの言葉に相槌のように、4人のテロリストは媚びたような笑みを浮かべて肩を竦めた。


「これも誤解なんだよ、景虎。そもそも海藤グループの悪しき計画に乗ったのは、彼等オクトパシィの総意ではないんだ、一部の者が独断で彼らを利用しようとしただけなんだ。彼らの内部での事だから、俺も詳しくは知らないが、もうその計画は破綻し、それに乗った悪人たちも、彼らの手で司法へ引き渡されているそうだ。」


 トカゲの尻尾切りか。海藤グループでも動きがあったんだろう、ルナのじいさんは後で纏めて説明してくれるのかも知れんが。少なくともコイツ等の言う解決は単なる表面を取り繕ったものに過ぎん。


「海藤グループの陰謀なんてものは、俺には本来、関係ない話さ。実は一人で皆を救って英雄でも気取ってみるつもりだったが、さすがに荷が勝ち過ぎた。君の正体など知らなかったし、アレをプレイヤーだけでどうこう出来るとは思ってもない、絶望しかけていたんだ、俺は。」

 ちらりと、アレ……アホ犬へ視線を投げて、ルシフェルはそう言った。


 当初の目論みは修正され、そういう結論へ落ち着いたのか。本来、英雄になりたがっていたヤツの"意識"は、記憶だけ残して消えてしまったからな。


「オクトパシィの協力を得て、そろそろこの事件にカタを付けたいと思っていたところへ、君の事を知らされた。かなり回り道をしたが、君が危険なバグでなくて良かったよ。君だけは救えないのかと、彼等ともども絶望していたんだからな。」


「ふん、随分と調子のいい理屈だな。」

「君はひねくれている。今語ったことが事実だ。」

 証拠は何もない、か。自信満々だな、クソ野郎。テロリストを擁護していると見せて、その実、連中などどうなったって構わないって心情が見え見えだぜ。結社にまでは捜査の手が伸びていない、そう思い切ってやがる。

 自身と、伯爵とはまるで無関係、足が付くはずがない。……自信満々だ。


「君も、"景虎"システムを表沙汰にはしたくない、ちょうど利害が一致するとは思わないか?」

 殺し文句のつもりなんだろう。嫌に持って回った言い方で、ヤツは勿体ぶってそう言った。


「そうだな。俺も、細かいトコはどうでもいいからな。早くすべてを片付けちまいたいだけだ。お前らがリアルで何を望んでいるかなんてのは、俺の知ったことじゃない。人質を解放しろ、話はそれからだろう?」

 俺に誤解されているからって理由なら、もう二人を拘束しておく必要はないはずだ。


「姫と海人を返してもらおう、」

「君と共に、彼らには一番最後にログアウトして貰おうと思っているよ。悪く思わないでくれ、それだけ君が……ウルフが怖いんだ、善良な活動団体なのにそうは思われていないからね。彼らは。」

 オクトパシィの為に人質の解放は出来ない、か。あくまでお前は無関係ってスタイルなんだな。


「解かった、人質の安全が第一だ。それが条件なら呑もう。」

「君たちウルフパックスには手こずらされたが、結局、君らがやったのはデスゲームの早期解決を邪魔することだけだった。もっと早くに多くのプレイヤーが脱出できたはずなのにな。」

 嫌味のつもりか? なら、皮肉の一つも返してやらなきゃな。


「当時の計画じゃ、何割かは閉じ込めちまう予定だったはずだ。それを全員脱出に切り替えさせたんだ、かなりの成果だと思ってるよ。」

 ヤロウの顔色が変わる。怒ったらしい。


 秋津が持つ情報だから、この密談内容は今告げても問題はない。本当はぜんぶ暴露してやりたいとこだが。

 寝返りを思い出したか、ルシフェルは不機嫌な表情になった。裏切りは今の伯爵コイツには効くらしい。


「負け惜しみだよ、景虎。この勝負は、俺達の勝ちなのさ。」

「そう思いたきゃ、そう思えばいい。俺達の任務は"全員の脱出"だ。」

「ふん、」

 嫌な笑いを浮かべる。無事に脱出させたと思っても、実は何名かは乗っ取りの犠牲になる、それを知っての愉悦の笑みだ。俺は知らないと思っている。

 無表情を貫け、俺。ちょっとの表情の変化も読み取られちゃならない。


「さあ、御託はもういい。さっさと脱出計画を進めよう、手順は決めてあるんだろう?」

 どうせ。


 俺はお前らに従うだけだ、今のところは。

 物分りのいい俺の態度に、連中が勝ち誇ったように態度を大きく肩をそびやかす。

 ムカつく。が、今は我慢だ。



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