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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
最終章 サイドアタック オブ ウルフ
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第一話 駆け引きⅠ

 街へ入るといきなりでボーン系エネミーのお出迎えだ。

 デリート命令もテロリストか黒幕のどいつかが仕組んだことだ、その証拠に始まりの街に重なっている暗黒竜のフィールドダンジョンは、最新アップデートの賜物だというのに、ここは何ともなっていない。意図的に、ここにはデリートが及ばないように細工してあるんだろう。

 ここだけでなく、別の場所も疑わしい所はあるが。


 エネミーがウザい、カードを操作すれば寄って来ないようにするくらいは朝飯前だが、それをやっちまうと奴等に勘付かれるからな。襲ってくる骨犬やらオーガやらを適当にいなしながら引き連れてくしかない。

 アホ犬のいる中央広場へ入った。ここにも大量のエネミーが涌くはずなんだが、居なくなっている。


 ここに居たはずの二頭のスフィンクスはどこ行った?

 雑魚格のスケルトンシリーズ含めて、一匹のエネミーも見当たらない。

 中央広場のど真ん中を占拠して昼寝してやがるアホ犬がただ一匹転がっているだけだ。


 建物の影から、見慣れないキャラが4人出てきた。防護服のような衣装は、テロリストたちの好む装備だ。

 むろん、ゲームの中だからキャラ装備なんてものはお飾りに過ぎない、自己主張の為だけに連中は物々しい恰好のキャラをデザインして特殊部隊を気取っているんだ。

 パンクな恰好で手ぶらの俺とは対照的だな。


 ウザいエネミーが涌かなくなったから、俺は両手をカーゴパンツの脇ポケットに突っ込んでいる。コイツ等に対処するため、最終調整はして来た。ウェポンは無限装備、ありとあらゆる武器装備類は思念だけで自動的にどちらかの手にセットされるようにしてある。ソロで全面戦争だって出来るぜ。


 マシンガンみたいなモンを両手に抱えた4人のテロリストが、アホ犬の起動してくる範囲ギリギリ外で立ち止まる。彼らの後ろにもう1人居て、4人がソイツを前へ通した。……ルシフェル、いや、老いぼれのスペア。


 俺と対面するルシフェルたち5人、その側面にアホ犬の馬鹿デカい図体が寝そべっている。


「やぁ、景虎。久しぶりに会うな。」

「まったくだ、ちょろちょろと逃げ回りやがってよ。」


 奴に主導権を渡す前に先手で最重要課題を引き出す。いきなり主題だ、そうしないとヤツは必ず後回しに、自身に有利に運ぼうとするだろう。


「姫と海人は何処だ? 二人が無事であるか、確認させろ。」

「いきなりか? せっかく再会したっていうのに、せっかちだな、君は。」

「御託はいい、早くしろ。」


 ヤツは首を竦めて、つまらない男だ、とでも呟いたのだろう。俺には聞こえなかったが、口の動きと、周囲の男たちの嫌な笑いかたで、なんとなく見当が付いた。


「通信機能の一部は回復されている。確認したければ、参加呼びかけで彼らの組んだダンジョン攻略用パーティに加わって、話をすればいい。姿を見せてあげる事は出来ない、君はなにせ油断がならないからな。」


 ヤツを横目で睨みながら、俺はカードを取り出して通信機能を呼び出した。現状、ノーマルのギルドカードに戻してある小さな四片は、いつでもキーロック一つで高機能カードへ姿を変える。


 パーティ加入で、本来はジャンプ機能を使ってメンバーが居る場所へ飛ばしてくれたりもするんだが、そういう便利機能はオフになったままのようだ。パーティへの参加申し込みをセットし、しばらく待てば許諾されたという印で表示が変わる。小さな画面の中に、二人の姿が映った。


『景虎! ごめん、捕まっちゃった!』

『景虎!』


 良かった、二人は無事なようだ。後ろに別の誰かが複数人居るらしいが、この画面じゃ確認は無理だな。


「海人、お前、気分は悪くないか? 大丈夫だったか?」

『うん、大丈夫だよ。ごめん、また迷惑掛けちゃって……、』

「気にするな、もう少し待ってろ。すぐ助けてやるから。」


 一連の動きの中で、海人は秋津にやられて瀕死の重傷を負った。敵対していたし、プレイヤー同士で殺し合いが頻発したんだ、異常な状態で起きた不幸だった。片隅に追いやってたけど、考えるのが嫌で逃げてたけど、生きててくれた、ほっとした。


「今まで放っとらかしにしてごめんな、二人とも。気付くのが遅れた、怖かったろ。」

『いいよ、景虎。それよりそっちは大丈夫? ルナは無事? 皆は?』

「ああ、皆、無事だ。安心しろ。」


 分断され、情報が途絶えていたんだ、不安だったろう、二人とも。


「そろそろお喋りは終わりにしてもらえるかな? こっちもあまりゆっくりとは構えていられないんだ。」

 痺れを切らして、ルシフェルが会話を遮った。


 俺の持つカードを取り上げようと伸びたテロリストの腕。

 条件反射で跳ね上げて、蹴りを入れる寸前で止める。迂闊に近付くなよ、蹴り飛ばすとこだぞ。


「よそ見してたんだ、悪いな。急に飛び込んできたからエネミーかと思ってよ。」

「チッ、足癖の悪いジャップめ、」

 気圧され、怯えの残る顔でソイツが負け惜しみを呟いた。


「二人とも待ってろ、すぐ助ける。通信は切るが、信じて待ってろよ。」

『うん、待ってるよ、景虎。』

 何か言いかけて、姫は言葉を呑んで頷いた。待ってろ、後でじっくり聞いてやるから。


 通信を切る。カードを上着の内側へ仕舞い、改めて連中に対峙した。

 ルシフェルは余裕の笑みを湛えている。


「確認は出来ただろう? 二人に手出しはしていない。いや、元々、そんなつもりは毛頭ないんだよ、君が危険な人物でなければこんな手段は講じない。」

「どういう意味だ?」


「もう解かっているんだ、景虎。君は兵器だろう? 国際連合軍、米国軍海外派遣特殊部隊サイバーウルフパックス、電脳空間での事件解決に特化した超法規のエリート部隊だ。知らされた時にはびっくりしたよ。なんでそんな連中が絡んできているのか、ってね。オクトパシィが危険視されているからだという事も聞いた。……それで、思案したわけだよ。相手が軍人となれば、こっちも丸腰で取引なんか出来っこないからね、オクトパシィの方々と相談して一芝居打ったのさ。」

「芝居だったってのか? 誘拐やら、手の込んだアレコレの計画が?」


 巧いこと、辻褄合わせを考え付くもんだ。世論を誤魔化すためのシナリオが用意されてるらしい。

 あくまで双方の行き違い、齟齬による誤解、で通すつもりか。まぁ妥当なラインだ。


「君たちは我々を悪意で見ている、誤解を解くまでは安全策を講じる必要があったんだ。現に君はオクトパシィのメンバーを数人、問答無用で倒してしまっている。迂闊に話し合いの席も設けられない、こちらが用心せざるを得ない状況へ追い込んだのは君だ。」

 そういう理屈へ持ち込むわけね、強硬な手段のアレコレはぜんぶ、俺のせいってか。


「まぁいい。それはそうでもいいさ。で、お前らの目的は? 俺と話がしたかったんだろう? 聞いてやるから言ってみな。」

 御託はもういいよ。さっさと言え。



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