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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第十章 ナチュラル レッド 4
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第十話 レッドウォリアーⅢ

 外は外で、暗闘してるようだな。

 連中はまだ、日本企業側が罠を仕掛けて手薬煉引いてるあたりの事情は知らないらしい。翻弄されてるフリをして、密かに逆襲の手段を講じているだなんて思ってもないだろう。温厚な日本人、お人よしなイメージを抱くのは勝手だけど、カミカゼとハラキリの国でもあるって事、忘れてんじゃないか?


 敵にしたのは企業じゃなく、ヤクザ、なんだよな。ヤケド程度で収まると思ってんのか。

 いつでも犠牲になるのは無関係な一般人やら末端のお人よしだ。永遠の命を夢見てスタンバってるセレブたちは、輝かしい未来だけを信じ切っているんだろう。バカは損をする。


 あの公爵だけは、逃がさねぇけどな。(指令無視してでも個人的感情で始末すると決めたんだ。)


 草原フィールドはにわかに騒々しくなった。人で埋め尽くされてるような状態だ。

 シェルターに置いてきた向こうフィールドのサクラたちまで入れたら、身動き取れなくなるだろうな。

 彼らには、まだしばらくは避難しててもらうつもりだが。


 これだけ沢山のプレイヤーが一つのフィールドに集結するのを見るってのも、久々だな。

 5周年記念のイベントの時以来か。

 あんまり人が多くて、姫や海人の姿を見つけられん。あいつら、何処行った?


「姐さん、姫と海人は一緒じゃなかったのか?」

「え? サクラちゃん達と一緒だと思ってたけど……違ったの?」

 どっちのテントにも収容されてなかったってことか? まさか。


「姐さん! 俺は街を探してくる、皆を纏めておいてくれ! 奴等はまだ諦めてないはずだ!」

「解かったわ、気をつけて!」

 俺が気付くと同時にエカテリーナも気付いてくれた、話が早い。


 あのヤロウ、姫と海人を人質に取りやがったんだ!

 俺に一番、近しいプレイヤーだってことを知られていたのに、迂闊だった!


『景虎、吉報だ。例の伯爵の始末が付いた。』

 ノイズの後にパックスの誰かが開口一番でそう言った。


「こっちはそれどころじゃねぇ、いや、伯爵か? 何があった?」

 街に走り込んで、フィールドチェンジで景色がガラリと変化する。骨犬が俺を見つけて走り寄る。


 伯爵といえば、今、こっちで姫たちを人質にとって別行動を起こしてるルシフェルの中身だ。なんだ、外界で動きがあって、それに連動した行動だったのか?


『ファミリーだよ、現状で議会に食い込もうとしている息子の手で監禁、幽閉された。大株主の醜聞はそのまま企業イメージに直結だ、肉親たちが秘密結社の陰謀に気付いて先手を打って保守に回ったんだ。それで、伯爵は本体を押さえられた為に緊急で巻き返しを図ろうとしている。スペアの身体を使って、息子と対決しようという意図があって、計画の実行を急いでいる。』


 家族に裏切られたか、哀れな老人め。

 親が、人を人とも思わない悪人なら、その子が親に似るかも知れないなんて事は解かりそうなもんなのに。


『伯爵はこの技術を使い、裏切った息子と入れ替わりを果たす計画を新たに立てた。とにかくすぐにでもデスゲームを脱出したいはずだ、お前に取引を申し入れるつもりじゃないかと見られている。こっちが"N"の存在やディストピア計画に気付いている事は知らないはずだからな。』

「それで人質を取ったわけか、了解、納得した。」


 起死回生の為には、なんとしてもスペアの身体を起こす必要があるってか。必死だな、老いぼれ。

 情報戦はだんぜん運営側が有利なままだ。連中は互いが齟齬の状態に置かれて連携が取れず、しかも実際を把握できないでいる。ここは一芝居打って一気に片付けるか。


「仕上げに入る、ルシフェルの始末を付けた後は間髪入れずで最終、アホ犬戦に突入する。二戦、前後するかも知れんが人命優先だ。」

『了解だ、こちらもサポート体制に入る。』


 ルシフェルを討ち取った後に、運営説明の形でプレイヤー全員を街へ誘導する。

 アホ犬を機能停止にし、ログアウトの魔法陣へ誘導、そうしたら外界で仕掛けられた罠が発動する。計画に多少の変更が生じても、ウルフの連中が巧く処理してくれるだろう。


「ルシフェルは外界との連絡手段を持ってやがるのか?」

 これが肝心だ、もし連絡が取れるんだったら、土壇場でこっちの作戦が見破られる可能性を考慮する必要があるからな。


『表面上はな。ゲームの全システムはすでにこちらのコントロール下で回復している。見せかけで、未だテロリストや結社の手中にあると見せているだけだ。都合の悪い情報は都度でシャットダウンしてやるから、安心して駆け引きに使え。』

「それ聞いてほっとした。本来の、安全な通常ログアウトも復旧済みってことか。」


『デスゲーム……サーバー暴走は解除されている。現状は、意図的にログアウト機能が停止状態にしてあるだけだ。プレイヤー全員、魔法陣を通ってリセットを掛けてもらう。VR箇体に掛かっている乗っ取りウイルスを洗い出す為のプログラムが組み込まれる仕組みになっている。逆リモートで発信先を特定した後は、ボムが送信、発信元をクラッシュする。リアルはそれで手仕舞いだ。』


 プレイヤーの脱出が、そのままセレブ虐殺ウイルスの発動条件。一瞬で終わる、組織は沈黙するだろう。

 いよいよ逆襲だ。



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