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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第十章 ナチュラル レッド 4
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第七話 日本エリア攻防戦Ⅳ

 同じ手は出来れば使いたくないもんだ。次も大丈夫なんて保障はどこにもないからな。

 プレイヤーキャラのボットと共に、もともとこのエリアに居たエネミー、スケルトンが大量に涌きだしている。


 思い付いた!

 カードから俺自身の攻撃力を操作、対象ダメージをゼロにして、代わりに効果【緊縛】を追加。

 武器をナックルへチェンジ、目の前にいたスケルトンを連打で緊縛状態にして最後、蹴りで道の真ん中へ移動させた。転げたスケルトンは緊縛効果でしばらくは動かない。


 よし、次!

「景虎、どうしたの、なにしてるの!?」

 俺がいきなり奇妙な行動に出たもんだから、渚が面食らって狼狽えた。

「盾で【眩暈】にしてスケルトンを一か所に集めろ!」

 何をしようと思ってんのか、通じたかどうかは解からないが渚はすぐに応じてくれた。


 盾のショルダーチャージだ、ぶっ飛ばされたエネミーの頭に星が飛び、動かなくなる。ポイントのズレた固体は俺がナックルで殴り飛ばして中央へと集め直す。

 ひと山幾らのスケルトンが積み上がった。よっしゃ、これで準備は整った!


「景虎、後ろから連中が来るわ!」

 チラリと視線を走らせ、確認。さっき抜け出たゾンビ状態のボットの群れだ、ふらふらとこっちに寄ってくる。デリートの虹もどんどんフィールドを侵蝕して崖の部分はほぼ消えてなくなった。

 もともと細長いフィールドだが、現状で数メートルの幅しか残されていない。


 タイムアタックの状態だ、ぐずぐずしてはいられない。ナックルから双剣へチェンジ、ひと山に積み上がったスケルトンを、二対の刃をスコップに、掬い上げるように地面ごと抉って放り投げた。

 ばらばらと虹の光の上へと落ちていくエネミーの群れ。双剣をさらにリボルバーへ、連射で三発撃ち込む。

 範囲が重なったらアウトだ、【射撃】のサポートがなけりゃ、不可能に近い神業テクだな。


 虹色の怪物は煌めきと侵蝕の速度を落とし、その上に夥しい数のスケルトンが積み重なって、一瞬の後には接した場所から順に七色に偏光しながら分解されて消えていく。巨大な骨のリング、空間の景色はそのまま一つの絵で、空も地面もなく消されていく削除の輪に大量の骨が貼り付いた形だ。


「今だ、渚! 踏み越えて行くぞ!」

 数秒と保たないだろう、急がないと巻き込まれる。

 骨の山を踏みしめ、足場の悪さに転びかけつつ両手も追加して登りつめる。渚の手を掴んで引き寄せ、後は骨の上から滑り降りた。


 フィールドが消えた真っ白な空間、ここにはまだ基盤のプログラムが残っているから足場は確かだ。

 突然のフィールドチェンジ。始まりの街、草原フィールドに飛び込んだ。助かったぜ、デリート遅滞措置が生きている、ようやく安全圏に辿り着いたか?


「景虎! なんなの、あれ!?」

 渚の指差す方向、このゲームには不釣り合いなフォルムのエネミーが大量に闊歩しているのが見えた。

 のっぺりとした、クリーム色のボディ。蛇腹ホースの手足がついて、一昔前のロボットアニメそのままの姿をした、見たこともないエネミーだ。いや、どっかで見たような……?


 ノイズが。ウルフからの通信が来た。

『景虎、こちらパックス1。すまん、ボットの数が多すぎて対処しきれない、連中は他ゲームのキャラまで引っ張ってきているようだ、そっちに居るロボット型はおそらく韓国のゲームキャラだ。』

「ああ、なるほど。見た覚えがあると思った。了解、なんとかするよ。」


 見たことあると思ったら、あれは隣国の人気スぺオペゲームの初期キャラだ。最初はめちゃくちゃダサい姿だけど、改造パーツの装備次第でとんでもなくカッコイイ機体に化けるっていう。

 俺達の前に見えてるのは、ノーマル初期型で、のっぺらぼーの機体だ。それに毛が生えた程度だとか、ゲーム始めたばかりの初心者なんかの機体をハッキングしてきやがったんだろう。


 どうやら未改造のベース状態しか乗っ取ることが出来なかったらしい、韓国と日本のネットゲームは親和性が高いからこういう裏技も使えたんだろうが、さすがに高プレイヤーの機体はこっちへ移動出来なかったようだな。(マジであのゲームの高プレイヤーになんか、この場面じゃ遭いたくないぜ。)


『急いでカタを付けてくれ、景虎。韓国はゲームサーバーがダウンした。強制的にプレイヤーを締め出す目的だ、連中が"フォース・オブ・カーズ"のキャラを完全に乗っ取るのは時間の問題だ、そうなったら次は高レベルプレイヤーキャラが攻め込んでくる。その前に穴を塞ぎたい、侵入済みのカーズキャラを全滅させてくれ。』


 食いとめるのは無理か、プログラムの世界じゃ防衛より攻撃の方が格段に有利と聞くからな。こっちに入り込んだキャラデータをルートにして、別のキャラをさらに呼び込んでいるんだ、バグ利用だな。


「連中の目的はなんだ!?」

『バーチャル戦争のシミュレートだ、データ取得でサイバー戦に出遅れた分を取り戻そうとしている。GSは軍産企業体の中でも微妙な立場だから、発言権を強めたいんだろう。それで"景虎"に喧嘩を売ってきたんだ。』


 納得がいった、まったく迷惑な話だぜ。


『今、急いでセキュリティの穴を塞いでいる、ボットの侵入はすぐに止むはずだ。それまで踏ん張ってくれ。』

「入り込んだボットキャラはこっちで消さない限り、追い出すことは出来ないってか!?」

『そうだ、連中は他にも何か企んでいるだろう、気をつけろ。』


 おそらくはこれも陽動、何か仕掛けるために目晦ましに茶番を演じさせられている。

 何を企んでやがるんだか、ずっと、ルシフェルの動きはないからな、要注意だ。


 フィールドに出現した得体の知れないロボットキャラたちに、敵味方に分かれていたプレイヤーたちも事態の深刻さをようやくに理解したようだ。

 秋津が怒鳴っている、サザンクロスの連中も拘束を解かれて自由になり、ルシフェル陣営だった連中と共闘態勢のようだ。いがみ合ってた両陣営が結束してる。


「秋津! 姐さん! 皆は無事か!?」

「景虎!」

 久々で姐さんの顔を見るな。


「事情は大体のところで聞いてるわ、真の敵が現れたってことで、もう睨み合ってる場合じゃないって。」

「よぉ、景虎! 見ての通りで大騒ぎになってる、早い事片付けちまおう!」

 ネロは相変わらずの態度だ、ふてぶてしく笑う。


「景虎! 低レベルの連中が見当たらないんだ!」

 血相変えてこっちへ来るのは、かつて敵対してたプレイヤーの一団だ。

「向こうフィールドにもロボットが溢れてる! 避難させようと思ったら、テントがダミーにすり替えられてて、どうにもならなかった!」

 助けてくれ、って。怪我の功名ってか、この事態に至って、日和ってた連中もようやく事の重大さを理解した。洗脳で鈍った脳みそがしゃっきりしたか。


「大丈夫だ、それは俺の仕業だから! 容易に手出し出来ないようにしてある、気兼ねなく暴れてくれ!」

 もしやとも思ったんだろう、俺の言葉を聞いた途端に連中は表情を明るくした。


「景虎! すまなかったな!」

 なんだその取ってつけたみたいな詫びはよ。(苦笑で手を振っておくけど。)


「そうと分かれば遠慮はいらねぇな、チョンゲーに好き勝手させるな、皆!」

 いやいや、向こうも被害者だから。


「ふざけんな、他人様のゲームでなにのし歩いてやがるんだ! ぶっ壊せ!!」

 ヒートアップだ、土足で日本のゲームを踏みにじってるようにしか見えないからな、仕方ないけど。


 また日韓がキナ臭くなるだろうが、クソGSめ。


 解かりやすい標的に、にわかに結束が深まった日本側プレイヤーたちだ。韓国ゲームのユーザーたちには申し訳ないが、ここは人命優先ってことで犠牲になってもらおう。すまん、破壊させてもらう。


 まったく違うゲーム同士、異種格闘技戦になっちまった。若干、向こうのゲームのほうが数値は高いらしい、新人プレイヤーのキャラばかりのくせに、なかなか手強い。GSの連中は、この機に乗じて様々なパターンデータを取ろうというつもりらしい。バーチャルに武装テロが仕掛けられた場合のあらゆる可能性、か。


 モルモットじゃねぇぞ、くそ。


『景虎、"オクトパシィ"の新手だ。キーを使われた、チート改造でこっちに順応させた"カーズ"の高位プレイヤー機が侵入した、そっちで迎撃してくれ。』

「了解、」

 GSの掌で踊らされてるって事も知らずに、オメデタイ連中め。

 いや、上層部同士はグルなんだっけな、金の繋がりだ。乗り込んできたクルーは、正義の具現者気取りだろうが。


「サイバーウルフ! 見つけたぞ、国際サイバー規定を無視した違法プログラム! いいや、お前は既に"兵器"の領域だ! 日本国の傲慢が生み出した怪物め!」

 長い台詞ごくろうさん。


 敵は4機。赤で統一された重騎兵、有名な機体だ。ゲーマー通信でお馴染みの、フォース・オブ・カーズの顔とか言われてる廃プレーヤーチームの。今は乗っ取られてテロリストが操作しているが。可哀そうに。


「皆! 手を出すな! ソイツは向こうのトッププレイヤー機だ、お前らじゃ手に負えない!!」

 勢い余って突撃しかけてる連中に注意を促す。

 やめとけ、勝てる相手じゃないから。


「あいつら、"クリムゾン"だ、なんで……!?」

「テロに巻き込まれたんだ、ボット化されたんじゃないか!?」


 フォース・オブ・カーズの有名なギルド、"クリムゾン"の中心メンバーが使ってる機体だからな。

 "ナチュラルレッド4"の登場だ。



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