~BAR Smile~
読んでくださりありがとうございます。
最後まで見捨てないでくださいww
1人の夜は慣れっこ、のはずなのにやっぱり殺風景の部屋にいるのは辛くて自然とおちつける場所を探す。近頃通うようになったBar。
‘smile’と書かれた看板を横目に静かにドアを開ける。
穏やかな空気が流れる…。
静かで時間を感じさせない…。
そんな雰囲気のお店。
「なにに致しますか?」
見慣れたアルバイトくんが笑顔で聞いてきた。
「ベリーニで」
こうして私は毎回、寂しさをお酒で紛らわす。
いつもは1人でこうしてカウンターの左端に座っている。
もはや、私の指定席のような場所になっている。
そんな時、店のドアが音を鳴らして開いた。
カランカラン
「いらっしゃいませ」
アルバイトくんが頭を下げた。
「どーも。あっまた席取られちゃった」
聞きなれた声が聞こえてきた。
「今日は来るの早いんだね?」
振り向くと予想通り高城さんがいた。
「高城さんは今日遅いんですね」
「ちょっと仕事が長引いちゃって」
と苦笑いで言われた。
最近となりにいつもこの人が座る。
アルバイトくんは高城さんに
「なにに致しますか?」
と聞いた。
それに高城さんは
「う~ん、じゃあ彼女と同じやつで」
と答えた。
私は心の中で 古っ!と思いながらも
「これ結構甘いけど大丈夫ですか?」
と聞いた。
「いいの。こういうの1度言ってみたかったからさ」
高城さんはそう言って微笑んだ。
変な人。明らかに張り詰めた顔をしている私に屈託のない笑顔を向けてきて。
でも今ではこうして一緒に飲むまでになっている。
なぜか高城さんといると嫌なことを忘れられるような気がして。安心した気持ちになる。
でも私とあの人が繋がっていると知ったらあなたはどんな顔をするだろう。
そもそも私と高城さんがこうやって一緒に飲んでること自体不思議。
高城さんも悟くんも有名人なわけだし。
なんで私に声をかけたのかもわからないけど。そんなことを思っていると
「ここにいる時ぐらい、怖い顔すんなよ」
と隣で飲んでいる高城さんに言われた。
やけにこの一言一言が胸に染みる。
「すいません。彼女にシチリアンミモザ作ってあげて」
「かしこまりました」
あなたはなんで優しくするの?こんな無愛想な私に。
「優しくしないで」
ふいに、心の声が表に出てしまった。
「なんで優しくするの?私と飲んでいてもつまらないだけなのに」
まだお酒をそんなに飲んでもいないのに言葉がストレートに出てきてしまう。
「紗綾ちゃんさ、すごく目が暗いよ」
「え?」
高城さんの言葉に少し戸惑った。
「誰かにすがりたい。だけど誰も信じられない。って目してる。俺はさ紗綾ちゃんとこうやって話がしたくてここにいるの。用もなく紗綾ちゃんの隣に座ったりしないよ」
高城さんはまっすぐ私の目を見て話した。
「それどういうことですか?」
「う~ん。なんか俺が相談にのる?みたいな感じかな」
「変な人」
「知ってる」
そう言って微笑む高城さんは私の荒れた心を少しだけ救ってくれた気がした。
「いらっしゃいませ。今日もお客様がお待ちです。」
今日も”Smile”には左端に座る高城さんがいた。
私は呆れ顔で
「また来てるんですか」
と言った。すると
「俺を暇人みたいに言うなよ。さっきまで収録してたんだから」
と笑った。
本当に変な人。 そんなことを思っていると
「あっ、今俺のこと‘変な人’って思ったでしょ?」
と言われた。
「鋭いですね」
こんな他愛もない会話に心が温かくなった。
高城さんはすごく聞き上手だった。最初は話上手だと思ってたけど実は両方だった。
だからかな?はなしても良いかなって思ったのは。
「私、すごく好きな人がいるんです。でも彼は私のこと好きじゃないから」
すごく悲しい。自分の口で本当のことを話すと涙がいっぱい出てきそう。
でも、こうやって高城さんに聞いてもらえるだけで少し気持ちが軽くなるから。
たとえそれが結希くんのことだったとしても、、、。
何も知らない高城さんは黙って相槌を打ってくれる。
そんな時滅多に鳴らない携帯が突然鞄の中で振動した。
すると高城さんはニコッと笑い
「ほら、出てきたら?」
と言った。
私はすいませんと言って携帯を見た。この赤いランプは1人しかいない。
「もしもし?」
電話に出るとやっぱり結希くんの声が聞こえてきた。
「もしもし。今日これから来れる?」
私は腕時計を見てからカウンターにいる高城さんを見た。どうしようか悩んでいると私の視線に気づいた高城さんは口パクで
「いっておいで」
と言っている。
私は頭を下げ
「わかった。今から行く」
と短い返事をし電話を切った。
高城さんに再び頭を下げ私は店を後にした。