アミグロランド
「ピンポーン。」
朝の10時。
唐突にアパートの呼び鈴が鳴る。
私は丁度遅めの朝食を食べたところで、そろそろ顔でも洗おうかと思った所だった。
まあ、どうせ何かの勧誘とかだろうと思ったのだが、顔を洗ってからの予定も特にないので玄関のドアを開けた。
そこには70歳くらいの黒の細めのスーツを着た老人が立っていた。
痩せた体が細めのスーツのせいで、更に細く見える。
ヒゲが仙人みたいに白くて長い。
右手にはステッキを素敵に持っている。
肌は健康的なのかどうかはわからないが、とにかく浅黒い。日焼けしているみたいだ。
身長がある老人で、おそらく190cmはあるんではないだろうか。
足はガニ股で、左手を腰にあてている。
表情は穏やかだ。
「あの、私、アミグロランドの者ですが。」
と、その老人はゆっくりと丁寧に言う。
「本当にアミグロランドの方ですか?何か証拠はありますか?」
私はその老人を怪しむように見ながら言った。
最近では”アミグロランド”と偽って、強盗をする輩がいるらしい。
それを暴くためには、まず証拠。これは世の中の常識だ。
「ではこれを。」
老人は慣れた手つきでステッキを振り上げ、ステッキの中に隠しておいた刀を鞘を抜くようにしてあらわにする。
私はやはり強盗かと思い身構える。
老人はその剣先を自らの口に向け、そのままスルスルとステッキであった刀を飲み込んでいく。
本物のアミグロランドだ。
私は確信した。
「さぁ、どうぞ。」と老人を部屋へ案内する。
老人は隠し刀をステッキに戻すと、さっさと靴を脱いでガニ股で中に入った。
部屋の中の小さなコタツへ老人と一緒に座る。
「よっこらしょ。」と老人らしい。
「あ、どうぞ。」と老人へコタツの上に置いてあるミカンを奨める。
「どうも、ありがとう。」と言って、老人はミカンを皮のついたまま一口で飲み込んだ。
やはり本物のアミグロランドだ。間違いない。
「では、あなたのスキャビラタイズを話してみてください。」
と言って、右手の人差し指だけを立てて自分の顔の横で天にかざした後、老人はゆっくり目を閉じた。
私は小学生の時にクラスの友達をいじめたこと。母が大事にしていた壷を割ってしまって、しらを切り通したこと。
高校生の時に万引きしたこと。会社の金を着服したこと。
嘘に嘘を重ねて誰かを死に追いやったこと。
そんなありったけのスキャビラタイズを老人に話した。
すると私の影が大きく揺れだし、次第に円形にまとまっていく。
円形の影は立体をおびだし、床から空中に弾き出された。
その大きな黒い球体を、老人は今まで聞いたこともない音を出して一息で飲み込んだ。
「あ、ありがとうございます。」
私は老人に言った。
「ではこれで。」
老人は私に言って、席を立とうとする。
「あの、これを。」
私は老人の手に1万円札を3枚持たせる。
「あぁ、どうも。」
老人は1万円札を3枚ポケットにつめこみ、そのまま何も言わずガニ股で出て行った。
さすがアミグロランドだ。
何もかも飲み込んでくれた。
おかげで、私は過去を清算できた。
そういえば、朝ご飯を食べて、顔を洗うところだったんだ。。。
それから先は何も決めていない。
そして明日は仕事だ。
そうやって私の日常が再び続行されていく。
そうやって私は再び罪を重ねていく。
そう。ただ生きているだけで、私は罪深い。
(おしまい)
小説を読んで頂き、ありがとうございました。
いかがだったでしょうか?
もしもあなたの時間が許されるなら、評価や感想をお願いしたいのですが。。。
もちろん絶対とは言いません。
読んでいただけるだけで充分なんです。
でも、自分の書いた小説が、他人様の目にどのように写ったのかが気になりまして。。。
ほんと、絶対とは言いません。
でも、評価と感想を。。。云々。。。