表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/5

1-3 任せてっス

「もしかしてパソコン壊れた?」

画面は真っ黒だった。

電源ランプだけが、呼吸みたいに明滅している。

「よし、ポチ呼ぶか」

くりが当然みたいに言う。

「誰やねん」

「俺と一緒で、話せる友達」

「ウーバーのノリで喋れる犬呼ぶな」

前足で器用にスマホを操作するくり。

発信音が鳴る

プルルル。

「もしもしっス?」

礼儀正しい声がスマホから流れる。

「ポチ、来てほしい!」

「了解っス」

「画面落ちた。多分パソコン壊れた」

「すぐ向かうっス!」

ピンポーン。

数分後、インターホンが狭いマンションに鳴る。

ドアを開けると、胸を張った茶色い柴犬が立っていた。

赤い年季の入った工具箱を持っている。

「遅れてすみませんっス」

「大丈夫やで」

ポチがパソコン前に座って画面を確認し、直ぐに作業を始める。

キーボードを叩く速度が異様に速い。

画面が一瞬、青く光る。

──CRI

文字が、ほんの一瞬だけ浮かんだ。

ポチの耳がぴくぴくと動く。

動きが止まった。

「どうした?」

くりが聞く。

「……いや」

視線が画面の奥を読む。

「外部アクセスの痕跡があるっス」

「は?」

「この端末、ずっとどこかと同期してるっス」

部屋が静かになる。

「で、直るん?」

リツキがわざと軽く言う。

「直すっス」

ポチが自信満々に答えた。

数分後、画面は正常起動。

フォルダは空になっていた。

CRIのファイル、

Dr.Cobaltのメールまで、

全部、消えている。

「……便利やな。証拠隠滅まで標準装備か」

リツキが笑うが、ポチは答えない。

画面の端に小さくログが残っている。

《CRI-01 同期完了》

ポチが素早くウィンドウを閉じた。

「何今の」

「ゴミファイルっス消したほうがいいっスよ」

即答。

早すぎる。

くりだけが、ポチを見ている。

「ポチ」

「はい」

「お前、どこでそんなん覚えた?」

沈黙。

「独学っス」

夜。

ポチは帰った。

「泊まらんの?」

「……用があるっス」

玄関で振り向かずに言う。

「外部回線は、切っておいたほうがいいっス」

ドアが閉まる。

部屋は静か。

リツキはベッドに倒れ込む。

「犬がネットの心配する時代か」

くりがパソコンを見つめている。

「リツキ」

「なに」

「Wi-Fiおかしい」

「一回切ってこい」

「わかった……」

その瞬間。

スマホが震えた。

通知。

《PC、Wi-Fiのバックアップ完了》

保存先:kngw.pc

所有者:Dominion

喉が、からっからに乾く。

「……なあ」

リツキは笑う。

「おかしいのは、パソコンだけやんな?」

くりは答えない。

画面の電源ランプが、ゆっくり明滅する。

呼吸みたいに。

外部回線は、確かに切ったはずだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ