第6話 おたまとしゃもじのいのりの歌
第6話 おたまとしゃもじの いのりのうた
金の、ふちどりの、
ばらのカップが、
ぱりん、と、
電子レンジの中で、
ちいさな、火花を、散らした。
そのとき、
ききとれないほど、
ちいさな、悲鳴が、
たしかに、聞こえた。
その一瞬で、
台所に、いたものたちは、
それぞれ、
みな、傷ついた。
やかんは、
どうして、
新人タッパに、
ティーカップの、
すてきさを、
来てすぐ、
話してあげなかったのだろう。
電子レンジも、
どうして、
最後の、その瞬間、
いつものように、
動かずに、
「だめだよ。
きみと、ぼくは、
あいしょうが、わるいんだ。
入ったら、
だめだ」
そう、
言ってあげなかったのだろう。
炊飯器も、
手の、届かない、
アイドルが、
一瞬で、消えてしまって、
これから、
どう、毎日を、
過ごしたらいいのか、
わからなくなった。
そして、冷蔵庫も、
「しょきだなは、わるい」
と、言ってしまったことを、
とても、
こうかいした。
けれど、
その言葉は、
もう、
とり消せなくなっていた。
けんかを、するのは、
かんたんだ。
でも、
おわりかたは、
だれも、知らない。
そして、
いちばん、
傷ついたのは、
英雄に、
なりたかった、
新人タッパだった。
冷蔵庫の中に、いても。
食器棚の、すみっこに、いても。
ガスコンロの、下に、いても。
どこに、いても、
まるで、
はりの、むしろだった。
ガスコンロは、
あたたかい声で、
言った。
「きみは、
冷蔵庫と、
電子レンジの、
言うとおりに、
しただけだよ。
なにも、
わるくない」
ガスコンロの、下に、
置いてあった、
おたまと、しゃもじも、
そっと、
新人タッパを、
受け入れた。
「もう、
冷蔵庫や、電子レンジの、
しじどおり、
はたらくの、
いやに、なるよね」
「ほんとうに、
そう」
「へらへらしてるって、
わたしのことも、
ばかにしたのよ」
へらが、
言った。
いつものように、
メニューは、
会議で、決まった。
けれど、
だれも、
やる気に、なれなかった。
そして、
それぞれが、
歌を、
うたいだした。
それは、
もう、
二度と、
カップが、
われませんように、
という、
いのりの、歌でも、あった。
ところが……。
(つづく)




