第5話 英雄になりたかったタッパくん
第5話 英雄になりたかったタッパくん
ティーカップたちの、おしゃべりは、
すこし、きどっているようにも、聞こえた。
「ごきげんよう。
あら、今日は、日ざしが、つよいわね」
「まあ。
しっけが、おおいわ」
ソーラー電気で、うごく家電たちは、
天気ひとつで、
一喜一憂しているというのに。
なんて、いい気なものだろう。
金色の、ふちどりを、
さりげなく、きらりと、見せながら、
いつも、
いちばん、いい場所で、
高みの見物をしている。
来たばかりの、新人タッパくんは、
冷蔵庫や、電子レンジの話を、
そのまま、うのみにした。
――そうだ。
ぼくが、
しょきだなを、やっつけよう。
新人タッパくんは、
電子レンジのもとへ、
いっしょに行こうと、
ティーカップを、さそった。
「まって——!」
やかんや、鍋たちが、
大きな声を、あげた。
でも、
おそかった。
ぱりん。
金色の、ふちどりの、
ばらのがらが、はいったカップが、
電子レンジのなかで
ぱりんと、われた。
台所の、
ふるいものたちは、
なきくずれた。
新人タッパくんは、
ただ、
英雄に、なりたかっただけなのに。
まだ、
この台所の、
しくみが、
わからなかっただけなのに。
あとから、
タッパくんは、やかんに、
そのカップの、思い出話を、聞いた。
けれど、
ときは、すでに、
おそかった。
やかんは、
静かに、言った。
「ぼくたちは、
わすれていないよ」
「この家の、むすめたちが、
大きくなるたびに、
みんな、
ほこらしげに、
あのカップで、のんだんだ」
(つづく)




