第4話 こそこそ
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食器棚のなかで、いちばんつかわれているものは、タッパだった。
とくに、耐熱性があって、おさらの代わりにもなるタッパが、ホープのようにあらわれたのは、二、三年ほど前のことだった。
タッパたちは、しょっきだなのいちばん下の段に積まれていた。
その場所が気に入るものもいれば、そうでないものもいる。
「ぼくは、ここがいいよ」
「もっと、上段がいい」
新人タッパくんは、まだどこがいいのか、わからなかった。
ただ、つかわれたい、と思っていた。
そのころ、冷蔵庫と電子レンジは、よからぬことを考えはじめていた。
もし本当に、タッパのことを思って言っていたのなら、この台所の悲劇は、起こらなかったかもしれない。
冷蔵庫や電子レンジの中で、新人タッパくんはひそひそと、言葉を吹きこまれた。
――しょきだなは、この台所のわるいやつだ
――さいきんの争いは、あいつのせいだ
――とくに、あのティーカップたちが、わるい
ティーカップたちは、いつも高いところから見ている。
「きょうは、ちょっと日ざしがつよいんじゃない?」
「しっけが、おおいわ。蒸し器さん、きょうはおやすみにしてくださらない?」
せっかく、きょうの、「みずならどんぐり」のメニューは、みんなで決めたはずなのに。
いつも、一言、多い。
台所の効率ばかり気にする、お調子者の電子レンジ。
きのうまで冷蔵庫と電気のことでけんかしていたのに、
すぐに冷蔵庫に調子を合わせて、こんなことまで言い足した。
「効率が悪いだろ? 電子レンジ対応のタッパだけあればいいんだ。
カップなんかいらないよ。
おたまとしゃもじと一緒にしても、小さな箱型引き出しで十分だ」
新人タッパくんは思った。
――ぼくが、なにか、しなきゃ
――ぼくが、英雄になろう
その思いが、どんな結末をつれてくるのか、まだ知らずに。
(第5話へつづく)




