第3話 しょきだな
第3話 しょきだな(食器棚)
食器棚は、
この台所で、
いちばんの古株のおばあさんだ。
とはいっても、
それは、
この家にかぎった話。
食器棚のプライドは、
その家、その家で、ちがう。
しょきだなには、
冷蔵庫とおなじように、
上・中・下がある。
たなの、
高さのことだ。
くまちゃんの、
いちばん目線の高さ。
上の部分の中が、
いちばん、いいところ。
そこに、
なにが置いてあるかで、
その食器棚の、
プライドの中身が、わかる。
この家の、食器棚の、
いちばん、いい場所には――
思い出の、
おばあちゃんの、
そのまた、おばあちゃんから、
受けつがれてきた、
皿つきの、
紅茶用カップが、
置いてある。
そう。
ここは、
家族の、
台所のアルバムなのだ。
もちろん、
これは、
この家にかぎったことかもしれない。
中には、
機能的に、
いちばん取りやすいところに、
いちばん、つかうものを、
置いてある家も、あるらしい。
「まあ。
よそは、よそ。」
それが、
この食器棚の、口ぐせで、
いつも、涼しい顔をしている。
メニューを、
冷蔵庫、炊飯器、しょきだな、
ガスコンロ、電子レンジで、
決めようと、
決まったばかりのころは、
「この白いおさらを、
つかいたいから、
ローストビーフが、いいわ。」
なんて、
言っていたことも、あった。
けれど、さいきんは、
もう、言わなくなった。
「まあ、
あつくても、
つめたくても、
どっちでも、
いいと、思うわ。」
冷蔵庫と、電子レンジが、
電気のことで、
けんかをしないように、するので、
それで、
せいいっぱい、だったのだ。
まさか――
冷蔵庫と、電子レンジが、
「同盟」というものを、つくって、
こそこそと、
食器棚を、
この台所から、
追いだそうとしているなんて、
思いも、
よらなかった。
(つづく)




