第2話 れいぞうこ
第2話 冷蔵庫
にらみを、きかせているのは、
冷蔵庫だった。
冷蔵庫のプライドは、
そんじょそこらのものではない。
本物だった、
と、言ってもいいかもしれない。
だって――
すべての、
たべものたちを、
くさらせないのだから。
これが、できなかったら、
たいへんなことになる。
けれど、ここ十年。
はいってくる食材も、
いろいろ、
前とは、かわってきた。
今とは、
事情が、
ちがうのかもしれない。
しん、とした
冷蔵庫の中で、
まず、
小さな声がした。
「……ちょっと、
さむすぎない?」
それは、
もやしだった。
「がまんは、してるんだよ。
でも、毎日だと、
からだが、
ちぢこまっちゃう。」
もうすこし、
冷気から、
とおいところが、いい。
冷蔵庫は、
聞こえないふりをした。
すると、
べつのところから、
赤い声がした。
「よその家ではね。」
トマトだった。
「よその家の、
新型の冷蔵庫は、
とっても、快適よ。」
「ここは、だめだよ。」
だれかが、
ひそひそ言った。
トマトは、
すこし、だまってから、
言った。
「……こんな冷蔵庫より、
そとのほうが、
かいてきだよ。」
ごとん。
トマトは、
自分でドアをあけて、
外へ、出ていった。
「……いいな。」
冷たい空気が、
いっきに、ゆれた。
そのすきまに、
アイスが、
ちいさく声を出した。
「……ぼくは、いけない。」
「え?」
「そとに、出たら、
ぼくは、
ぼくじゃ、
なくなる。」
だれも、
こたえなかった。
トマトに、
わるぎが、
あったわけではない。
けれど、
その日を、さかいにして、
野菜室でも、
冷蔵室でも、
冷凍室でも、
小さな、
いざこざが、
ふえてしまった。
とりわけ、
冷蔵庫ほんたいへの、
「不満」は、
どんどん、
大きくなっていった。
アイスは、
はやく、
たべてほしいと、
思った。
その、ねがいは、
かなった。
けれど、
それでも、冷蔵庫は、
食材たちの、
意見を、
きいていられなくなった。
「つべこべ、言うな。」
そう、
言わざるを、
えなくなったのだ。
冷蔵庫に、
はいっている、
食材たちの不満は、
ばくはつ、
しかけている。
冷蔵庫は、
考えた。
この不満を、
うけとめるもの……。
そうだ。
この台所で、
スペースをとっている、
食器棚が、わるい。
つかわないカップや、
皿を、
いちばん、いい場所において、
タッパや、耐熱皿を、
こきつかいながら、
すみに、追いやっている。
あれが、なければ、
冷蔵庫用の、
ちくでんきも、置ける。
もっと、
電気だって、
つかえる。
そうだ。
「食器棚が、わるい。」
(つづく)




