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魔法少女のマスコットは百合が見たい!  作者: ぬのきれタ
05.三人目の魔法少女
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第38話 三人目の魔法少女

 街中のカフェ“夕やけ”で話していると、守里さんが突然窓の外を見た。


「えっと、守里氏どうしたんです?」

「ダークモンスターの気配がした」


 守里さんは窓の外を見たまま目を見開く。


「ダークモンスターが2体……!? どうなっているんだ」


 つられて窓の外を見る。確かにカフェと駅のちょうど間ぐらいの場所で2体のモンスターが暴れていた。フライパンの姿をしたモンスターと、その蓋のモンスターだ。フライパンのほうは叩き潰すように建物を壊していて、蓋は縦回転しながら電柱や看板を壊している。どっちも近づきたくはないモンスターだ。


「今までこんなことはなかったのに、どうして」

「日和、考えるのは後だ。二人とも、急で悪いが魔法少女に変身してくれ」

「え、で、でも、どうやって変身したら……というか、こういうのって隠れて変身するものじゃ……」


 守里さんが手を叩いて緑色のステッキを手渡してくる。


「願いを叫べば変身できる。そして変身については解除した時間に巻き戻るから問題ない」

「あ、そういう仕様なんすね……」

「だから八雲、お前の願いを叫ぶんだ。本当に願うものならステッキが反応する」


 うちはステッキをじっと見る。正直おもちゃ屋で見るようなものとあんまり違いが感じられないけど、魔法少女の妖精を名乗る奴が本物だというのだから信じてみよう。草加部さんがいなかったら絶対信じてなかった。


「うちの夢は……」


 答えは最初から決まってる。深呼吸をしてから、思い切り叫んだ。


「二次元に住みたい!」

「え?」


 誰かの疑問の声が聞こえた後、緑色のステッキが反応した。うちの身体が光に包まれてく。

 ボブの髪が緑色へとカラーリングが変化する。口元のほくろはそのままで、前髪が可愛いピン止めでくくられる。

 髪と同じく緑色のワンピースは胸元にリボン、スカートにはフリルがあしらわれており、側面にはバラの刺繍がいくつも散りばめられていていてとても清楚な衣装だ。


「希望の花を咲かせましょう! マジカル☆ローゼ」


 うちは変身した姿の服装をあちこち触ってみる。触った感触は普通の布の何ら変わりはない気がする。


「それじゃあローゼ、行こう!」


 いつの間にか変身してピンク色の可愛い魔法少女になった草加部さん、チェルアが私に声を掛けて一足先にモンスターのほうへと向かった。


「!」


 うちは目を見開く。チェルアのジャンプがあまりにも高く、近くの建物の屋根にひょいっと乗った。きっと魔法少女の能力なのだろう。うちにもできるのかな。


「……ふぅ」


 うちはチェルアがいるところに向かって思いっきりジャンプしてみる。体がいつもより軽くて、軽々と建物の上にのることができた。


「すごい……これが魔法少女……」

「ローゼ、私はフライパンのモンスターの相手をするからあっちの蓋のモンスターのほうをお願いできる?」

「うん、やってみる」


 うちは頷く。いつもだったらやりたくないけど、魔法少女になった今なら何でもできる気がした。


「ありがとう。それじゃあ、いくよ」


 チェルアとアイコンタクトをして、それぞれ相手するモンスターのところへ向かった。

 うちはモンスターに向かって魔法のステッキをかざす。


「なんか魔法っぽいの出ろ!」


 うちが念じてると、ステッキからバラのつるのようにとげとげした細いものが飛び出してくる。つるは蓋のモンスターに絡みつき、動きを封じた。


「やった!」


 ≪クルシーナ!≫


「うわっ」


 蓋のモンスターがまだ暴れようとするので体が引っ張られる。持っていかれないようになんとか踏ん張る。けれどモンスターの力が強くて体が引っ張られてしまう。

 やばい、どうしよう……! 草加部さんは向こうの相手で手一杯だ。やばい、建物の屋上から落ちちゃう。うちは思わず目を瞑った。

 その時、誰かがうちの肩を掴んだ。振り返ると青い魔法少女がいた。


「大丈夫?」

「リリィ!」


 守里さんに教えてもらってたから分かる。青い魔法少女は雨宮さんだと。本当に変身するんだ、雨宮さん。違う、今は魔法少女マジカル☆リリィか。


「ローゼ、手伝うわ。チェルアは一人で大丈夫よね?」


 リリィの問いかけにチェルアの目が見開く。そして嬉しそうに頷いた。


「うん、任せて!」


 チェルアはモンスターに向かってく。……あんなに嬉しそうな顔の草加部さん、初めて見たな。


「ローゼ、必殺技の出し方は分かる?」

「わ、分かんないです」

「それじゃあ教えてあげる。魔法のステッキを持って」


 リリィがうちの手に触れる。あ、雨宮さんの手がうちに触れてる! 恐れ多い!

 うちのことはお構いなしに、リリィは魔法のステッキを持ったうちの手を、つるに絡めとられて動けなくなった蓋のモンスターに向けた。


「いい? あいつらを助けるって気持ちで魔法のステッキに祈るの」

「わ、分かりました」


 リリィの声が耳元で聞こえてそれどころじゃないけど、うちはなんとか魔法のステッキに意識を集中する。

 すると、持っていた魔法のステッキが光を帯びて形を変え始めた。初めて見るはずなのに、不思議と体はやり方を知っていて勝手に動く。考えるよりも前に自分の足がコンクリートを蹴って体が宙に浮かんだ。

 魔法のステッキが蝶に変わる。うちは思い浮かんだ言葉を思い切り叫んだ。


「あんたの絶望を吹き飛ばすよ。マジカル☆トルネード!」


 蝶が思い切り羽根をはためかせると竜巻が起きた。竜巻はつるに絡まって動けなくなった蓋のモンスターを巻き込む。


 ≪あぁああああぁああ!≫


 モンスターの姿がどんどん崩れていく。蓋の中心に埋め込まれていた紫の宝石にひびが入る。

 リリィがすかさず紫の宝石に近づいて中に閉じ込められていた子どもを救い出して戻って来た。


「お疲れ、ローゼ。上出来だわ。みんなのところへ戻りましょう」


 うちは頷いてリリィの後をついていく。

 チェルアのほうを見ると、ハンマーで殴られたフライパンのモンスターの身体が崩れていた。チェルアの手には既に救い出された女性がいる。向こうも終わったみたいだ。


 これが、魔法少女。


 うちはつい目を輝かせる。漫画やアニメの世界だけだと思っていた光景が今目の前に広がっていて、そして自分もその一人になれた。その事実が誇らしかった。

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