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魔法少女のマスコットは百合が見たい!  作者: ぬのきれタ
05.三人目の魔法少女
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第37話 月詠の勧誘、そして

 怜奈はため息をつく。どうして月詠なんかと帰り道を二人で歩かなきゃいけないのか。

 校門を出る時にした守里との会話を思い出す。


「どうして日和と八雲さんを連れて行くのよ」

「これから八雲のことを魔法少女に勧誘するんだ」

「なっ、私は聞いてないんだけど」

「昨日日和と電話をして決めたんだ。確かに、怜奈にも伝えればよかったな」


 本当にそうだ。どうして教えてくれなかったのか。思い出しただけでも腹が立つ。守里はそんなことに気付かないで話を続ける。


「俺はこれから日和と八雲を魔法少女に勧誘する。怜奈は月詠のことを勧誘してくれないか?」

「なんであいつなのよ」

「日和と怜奈と仲良くなれそうだと思ったからな。もしかして仲悪いのか?」

「そうじゃないけど……」

「こっちは任せてくれ。日和のことは俺が守るから」


 守里からの信頼を感じる。日和に手を握られた八雲が羨ましくて認めたくないけど、守里が仲間に入れたいというなら仕方ない。それに、守里に頼られるのは正直悪い気はしなかった。


「……絶対だからね? 頼んだわよ?」


 仕方なく、私はその交渉を受け入れた。


 守里はどう考えてるか分からないけど、私だって魔法少女だ。日和と肩を並べてこれまで戦ってきたんだから、守里は少しくらい私を評価してくれてもいいと思う。まあ、評価して信頼した結果が、私に月詠を勧誘するように頼むということなんだろうけど。それならまあ、するしかない。仲間が増えたら日和も楽になるかもしれないし。


「雨宮、不安そうだね。そんなに草加部さんと八雲さん、あと高校生みたいな人と別行動したのを気にしてるの?」

「まあね。でも、もういいわ。気にしても仕方ないもの。私は私のやることをするわ」

「雨宮のやること?」


 私は頷いて月詠を見る。


「月詠、あんた魔法少女に興味ない?」


 月詠はぽかんと私を見た。私は月詠の様子をじっと見る。月詠は少し間を置いてから、ゆっくりと口を開く。


「……雨宮、頭おかしくなった?」

「なってないわよ! そう言いたくなるのも分かるけど、ちゃんと聞いてちょうだい」


 私は月詠に話をした。さっきの女子高生に化けた守里のこと、日和と私が魔法少女をしていること、魔法少女とは何か、など。

 私が話している間、月詠は考え込むように俯いていた。


 私は話し終えて、改めて月詠を見る。


「そういうわけだから、月詠にも一緒に魔法少女をしてほしいの。どうかしら」

「……なるほど、あの声は妖精だったわけね」

「月詠?」

「うん、いいよ。やる」


 あっさりと了承した月詠に、私は拍子抜けする。


「一応聞くけど、どうして?」

「だって、草加部さんも魔法少女なんでしょ?」

「やっぱり……」


 案の定だ。逆にそれ以外月詠がやると答える理由が思いつかない。


「安心して。あたしは草加部さんの善良なファンだから」

「一番信用ならないわよ、その言葉」


 私はため息を吐く。月詠が私の顔を覗き込んだ。


「ちなみに、あたしは雨宮にも興味があるんだよ?」

「え?」


 言葉を理解する前に月詠が私の手を掴む。


「何してんのよ」

「雨宮、自分がどう見られてるかには疎いよね」


 月詠が迫ってくる。つい後ずさりしたら、背中にブロック塀がぶつかった。月詠がぐいっと顔を近づける。


「草加部さんにばっかり気を取られてると、危ないんじゃない?」


 月詠の息がかかる。月詠の顔がすぐそこにあった。混乱で頭が真っ白になる。

 私はたまらず月詠を突き飛ばした。


「どきなさい!」


 腕に力が入ってなくて、月詠は動かない。そんな私を見て月詠はくすっと笑って私から離れた。


「焦った顔も悪くないね」

「……変態」

「心外だね。一番好きでファンで推しなのは草加部さんだから安心してよ」

「そういうことを言ってんじゃないわよ。……やっぱり、あんたのこと勧誘するのやめようかしら」

「ひどいなあ。ちょっとからかっただけじゃん。それに、人手が必要なんでしょ? 人を選んでる余裕あるの?」

「……あんた、やっぱり嫌い」


 私が月詠を睨むと、それすら面白そうに月詠は笑う。私はため息をついた。

 その直後、地面が揺れた。


 ≪クルシーナ!≫


 ダークモンスターの叫び声が聞こえて振り返る。


「っ!?」

「……何あれ」

「ダークモンスターよ。あれが魔法少女の敵。……でも、二体もいるなんて初めて見たわ」


 フライパン本体とふたが、それぞれ別々に動いて攻撃をしてる。それぞれピンク色の魔法少女と緑色の魔法少女が相手をしている。日和と八雲さんだ。向こうは勧誘が成功したらしい。私もこうしちゃいられない。


 最近、守里は魔法のステッキを各自で持つように渡してきた。実戦で取り出すのは初めてだけど、やるしかない。私は手を叩いて、手の中から水色の魔法のステッキを取り出す。


「雨宮、それは?」

「魔法少女に変身するのに必要な魔法のステッキよ。魔法少女になると守里に言えばもらえると思うわ」


 この際変身するところを見られても大丈夫だろう。変身を解除すれば、変身した時点に時間が巻き戻るのだから。

 私は魔法少女に変身する。月詠が驚いた顔をした。


「雨宮、本当に魔法少女だったんだね」

「最初から言ってるでしょ。……それじゃあ行ってくるからそこで待ってなさい」

 私はその場を離れてダークモンスターのもとへ向かった。



 ***



 ウチはため息を吐く。両親もこんな気持ちだったのかな。何を教えてもできなくて、どう教えたらいいかも分からない。

 ころねは怯えたようにウチを見る。そんな顔をさせるつもりなんてなかったのに、どうしてこうなったんだろう。考えても仕方ない。やるしかないんだから。

 ウチはころねの手を引きながら話しかける。


「ころね、今日は何するか分かる?」

「李依奈お姉ちゃんの真似をしてころねもソウルを使う」

「そうだよ。だから今日はダークモンスターが2体必要なの。つまり、ヤバい人を2人探さないといけないってこと」


 周りを見渡せばちょうどいい人がすぐにいた。お店の外にいる親子に目をつける。子どもは不満を訴えて地面に寝っ転がって駄々を込めてる。それを見たお母さんが疲れた顔で子どもを見る。お母さんのほうも今にも泣きそうだ。

 ウチはころねを見る。


「あの親子、ちょうど良さそうじゃない?」

「うん」

「どう話しかけたらいいか分かる?」

「んー……」


 ころねは困った顔で親子を見る。黙ったまま何も答えない。

 ウチはイライラする。ころねはいつもぼうっとしてるから考えているのか、考えることを放棄して相槌だけ打ってるのか見分けがつかない。

 ボスからは待つのも大事だと言われたけど、このままずっと待ってたら夜になりそうだ。だからもういい。


「ころね、やってみるからちゃんと覚えてね」

「うん」

「うん、じゃなくて、はい、でしょ」

「はい」


 あー、いらいらする。でももういい。切り替えなきゃ。ウチはころねを連れて愛想のいい笑みを浮かべて親子に話しかける。


「お母さん、大変そうですね」

「ああ……迷惑かけてすみません。お構いなくどうぞ」


 お母さんは申し訳なさそうな顔をして子どもをその場所から動かそうとする。


「けんちゃん、みんな困ってるからあっち行くわよ」

「いやだ!」


 お母さんは困った顔でまた子ども見た。ウチは笑みを浮かべたまま話しかける。


「お母さん、ウチはお母さんのことをお手伝いにきたんですよ」

「私を?」

「はい! これを見てください」


 ウチはソウルを取り出す。お母さんがソウルに釘付けになったのを見て、心の中でよしとガッツポーズをする。隣を見ると、ころねはぼうっとそれをただ見ていた。


「ころね、そっちの子にソウル見せなきゃ」

「あ、うん。……じゃなくて、はい」


 ころねは慌てたようにソウルを子どもに見せる。全く、何をするか分かっていないのかな。気にしたところで仕方ない。ウチは切り替えて二人に話しかける。


「さあ、今の気持ちを解放しちゃおうよ」


 ソウルがお母さんの持っていた買い物袋の中に入っていった。

お正月休み、その他カクヨムで掲載する予定の小説の準備により、1/10から再開します!

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