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魔法少女のマスコットは百合が見たい!  作者: ぬのきれタ
05.三人目の魔法少女
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第36話 八雲の勧誘

 二人は観念したように近寄ってくる。意外と神経図太いな、この二人。


「守里、なんで分かったのよ」


 雨宮さんに悪びれる様子はない。一周回って開き直ってませんか? 月詠さんに至っては“ストーカーしてましたけど何か?”みたいな顔をしている。なんなんだ、この二人。草加部さんにガチ恋すぎない? 月詠さん、怖い顔で見ないで。


「姿が見えただけだ。それじゃあ怜奈、またな」

「ちょっと待ちなさい」


 怜奈が守里さんという妖精が化けた人間の手を掴む。なんというか、距離が近い。お互い気にならないのか?


「どうして日和と八雲さんを連れて行くのよ」

「これから八雲のことを魔法少女に勧誘するんだ」

「なっ、私は聞いてないんだけど」

「昨日日和と電話をして決めたんだ。確かに、怜奈にも伝えればよかったな」


 雨宮さんは守里さんを睨む。守里さんが雨宮さんによって小声で話を始める。


「俺はこれから日和と八雲を魔法少女に勧誘する。怜奈は月詠のことを勧誘してくれないか?」

「なんであいつなのよ」

「日和と怜奈と仲良くなれそうだと思ったからな。もしかして仲悪いのか?」

「そうじゃないけど……」


 複雑そうな顔をする雨宮さんに守里さんは親指を立てる。


「こっちは任せてくれ。日和のことは俺が守るから」

「……絶対だからね? 頼んだわよ?」


 どういう会話? 草加部さん守り隊の方々ですか? というかうちらがいるところじゃなくて裏でやるべきでしょ、その会話。


「八雲さん、すごい顔してるけどどうしたの?」


 草加部さんがうちの顔を覗き込んできて、心臓が飛び跳ねる。やめて、その可愛い顔を急に近づけないで、死んじゃう。


「えっと……気にしないでください」

「そう? じゃあ八雲さん、そろそろカ一緒にフェに行こうよ」


 草加部さんがうちの手を繋ぐ。嬉しいけどやめてほしい。雨宮さんと月詠さんの目が怖いから。


「八雲さん、ずるい」


 月詠さん、欲望が口から漏れてますよ。


「守里、ああいうのもなんとかしなさいよ」


 雨宮さん、それは無茶というものでは? のびのび育った少年が青いネコ型ロボットに頼るぐらいの扱いで守里さんに言ってるけど、地球に来たばかりの妖精には荷が重いのでは。


「八雲さん、もしかして一緒に行きたくない?」


 うちが動かないのを心配したのか、草加部さんが不安そうな顔をうちに近づけて来る。待って、キュートアグレッションしたくなるような小動物的可愛らしさが致死量だから。


「い、行きます」


 怖い二人に背を向けて、うちは草加部さんについて行った。


 カフェに入り、うちの向かいに草加部さんと守里さんが座る。草加部さんが大きく息を吐いてから真剣な顔でこっちを見た。


「八雲さん。この前の話の続きをするね」

「はい……」

「えっと……私と、一緒に魔法少女をやってほしい!」


 白い妖精の皮を被った悪魔みたいな誘い方で草加部さんがうちを誘う。

 その導入は怖いですよ、草加部さん。オタクじゃないから分からないだろうけど。


「もし、うちが断ったらどうなるの?」

「その時は八雲の記憶を消すだけだ」


 守里さんがあっさり教えてくれる。さすが妖精。やっぱり恐ろしい存在だ。


「八雲、魔法少女をしたいと思う気持ちはあるか?」


 守里さんに言われてうちは改めて考えてみる。

 昨日からずっと考えてた。うちはどうしたいのか。人知れず世界を救うって言うのはカッコイイ。でも、魔法少女になるというのがどういうことなのか分かってないから、飛び込むのが怖い。

 判断するには、もう少し情報がほしい。


「あ、あの……もし良かったら魔法少女のこと教えてください。うち、……いろいろ聞いてから考えたいです」

「分かった。それじゃあ少し魔法少女のことについて話そう」

「待って! ノートにメモしたいので……」


 うちはカバンからノートを取り出す。鞄を漁っていると本が机に落ちてきた。

 机に落ちた本の表紙には『百合の花園』というタイトルで、二人の女の子が熱い視線を交わした絵が載ったものだ。

 うちは固まる。人前で見せるつもりのなかったから。なんなら、オタク文化に疎そうな草加部さんの前に絶対見せちゃいけない類のものだ。


「す、すみません!」

「なんだこれは」


 うちがその漫画本を回収する前に守里さんが本を手に取る。

 やばい、終わった。顔から血の気が引く。


「百合の花園……」

「あっ、ちが……守里さん、これは、その……」

「八雲はこれを知ってるのか?」


 守里さんが期待する目でこちらを見る。……まさか?


「守里さんも、この漫画知ってるの?」

「ああ。俺の聖書バイブルだ」


 守里さんと握手をする。百合が好きなやつに悪い人はいない。それが人間だろうと妖精だろうとうちにとっては仲間だ。

 言葉はいらない。ポケットに相棒を入れて持ち歩く初代主人公も言ってた。


「うち、魔法少女やります」

「いいのか?」

「百合好きに悪い方はいない。うちのおすすめ教えるから守里さんのおすすめ教えてください」

「分かった」


 うちは守里さんとの握手をさらに固くする。どうせ鬱展開含んだ魔法少女ものの妖精みたいなもんんでしょ、とか思ってごめん。今どき魔法少女ものイコール鬱なんて一周回って安直だったわ。


「八雲、魔法少女をやってくれるっていうなら改めて魔法少女について説明するよ」


 うちは席に座り直して、守里さんの話を聞く姿勢をとった。


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