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第31話 空回り

今回から、毎日投稿から週2~3回の投稿に切り替えます。

詳しい事情についてはカクヨムの近況報告に載せてます。

楽しみにしていた方には申し訳ありませんが、今後ともよろしくお願いします。

 私は窓から飛んで行った守里さんを見送る。

 私と怜奈以外の魔法少女がいるなんて驚いた。非常事態しか動けないっていう制限はあるみたいだけど、でも教えてくれても良かったのになってちょっとだけもやもやする。守里さんが私を頼ってくれたのが嬉しかったから、少しだけ裏切られた気持ちになった。でもそれは勘違いだって分かってるから、深く聞くつもりはない。ただ、非常事態にだけ動く魔法少女の人にも会ってみたいな。


「草加部……さん?」


 八雲さんの声が聞こえてはっとする。そうだ、今は教室に八雲さんと戻っているところだった。


「ごめん、今行くね」


 私は窓を閉めて、八雲さんの隣で一緒に廊下を歩く。ちらっと八雲さんを見ると、やくもさんと目が合った。八雲さんがさっと目を外す。さっきの守里さんとの会話が聞こえていて、だから私を気にしているのかな。

 話しかけるなら今しかない。私は思い切って八雲さんに話しかけた。


「八雲さん、さっきの話を聞いていたかもしれないけど、少しだけ私とお話ししてくれる?」

「あっ、はい……」


 八雲さんの目があちこちに泳ぐ。緊張しているのか、不安なのか、落ち着きがない。

 八雲さんは教室ではいつも一人でいた。もしかしたら人と関わるのが苦手なのかもしれない。今も、私と全然目を合わせてくれない。

 もしここで八雲さんに逃げられたら守里さんとの約束が果たせない。それはダメだ。せっかく守里さんに頼ってもらえたんだから、ちゃんと約束を果たしたい。

 私は逃げられないように八雲さんの手を掴む。


「八雲さん、ちょっとだけでいいの。私とお話しして!」

「ひっ……か、かわ…………えっと、はい。もう、好きにしてくださいっていうか……」

「……? お話ししてくれるってこと?」


 よく分からなくて首を傾げると、八雲さんが目を逸らした。


「えっ……てんし…………いえ、話しますから。もう、許してください」

「えっと、……ごめん?」


 責めてるつもりはなかったけど、許してくださいなんて言われちゃった。何か言っちゃったかな。

 不安になっていると八雲さんが慌ててこちらを向いた。


「ちがっ、違います! そうじゃなくて、うちが……その、……草加部……さん、に、弱いというか、……えっと、うちのほうこそごめんなさい!」


 八雲さんが急に近づいてきた。私は勢いに驚いてつい一歩後ろに下がってしまう。よく分からなかったけど、嫌な思いをさせたわけじゃないのかな?

 私は落ち着いて、改めて八雲さんの手を両手で包むように握る。


「ううん、よく分からないけど謝らなくて大丈夫だよ。……それで、私が八雲さんに話したいことっていうのが、さっきの守里さん……妖精さんのこととか、いろいろあって……」


 話しながら自分で戸惑う。何を話すかちゃんと考えてなかったから言葉がうまく出てこない。

 だんだん自分で焦るのが分かる。考えれば考えるほど、うまく言葉が出てこない。


「えっとね、その……私の話したいことが……」

「……さっきのマスコットみたいなのが浮いてたこととか、魔法少女とか、そういうのですかね?」


 私ははっとして顔をあげた。八雲さんが不安そうに私の顔を見る。私は大きく頷く。


「うん、そう。魔法少女のこと、八雲さんに話したいの! ……うまく説明できなくてごめんね」

「いやいや、大丈夫です。……うち、少しだけ話聞いちゃいましたし、草加部……さん、の、ペースで、ゆっくり話してください。うち、ちゃんと聞いてますから」


 八雲さんが真剣な顔で私を見てくれる。そのやさしさが嬉しくて、ちゃんとできない自分が嫌になる。いつもなら嫌な気持ちのまま沈んじゃって何もできなくなっちゃう。でも、今は守里さんが私を信じて託してくれたことがあるから。

 私は顔をあげて、八雲さんの手をしっかりと握る。


「ありがとう。それじゃあ、頑張って話すね」


 八雲さんが頷く。私は目を見て八雲さんに話そうと口を開いた、その時だ。

 教室の扉が開く音がした。驚いて、八雲さんと二人で教室のほうを見る。


「全く、日和ったらどこに行ったのかしら」

「八雲さんの心配もしてあげてよ。それにしても二人ともどこにいったんだろうね」


 二人の姿を見てはっとする。そういえば今は授業中だった。早く戻らないから心

配して探しに来たのだろう。

 怜奈のため息が聞こえる。


「月詠と二人きりなんてもう耐えきれないわ」

「あたしも。気が合うね」

「ぶっとばすわよ」


 ふと、怜奈と月詠さんがこちらを見る。二人と目が合った。

 なぜか二人の動きがぴたっと止まる。不思議に思う間もなく、二人がすごい勢いでこちらにやってくる。


「八雲、あんたねえ!」

「八雲さん、何してるの」


 怜奈も月詠さんもなぜか八雲さんに詰め寄ろうとするから、私は慌てて八雲さんを背に二人の前に立つ。


「ま、待って二人とも」

「止めないで日和。私は八雲に用があるの」

「あたしも。八雲さんがなんで草加部さんと手を繋いでたのか聞かなくちゃ」

「手を繋いだのは私からだよ?」


 怜奈と月詠さん目を見開く。きっと私と八雲さんが遅くなったから怒っているのだろう。


「遅くなって心配させてごめんね? 今戻るから」


 怜奈と月詠さんが顔を見合わせる。困っている顔をして。

 私もどうしたらいいか分からなくて八雲さんを見る。八雲さんも困った顔をして私を見ていた。

 二人は何か言いたそうに私を見て口を開いては閉じる。そして怜奈は私に背を向けた。


「……戻りましょ」


 怜奈の言葉に、みんなは頷いた。

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