半田の挑戦
時系列的には、02章12話の半田視点の話です。
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咲が魔法少女のところにたまに泊まりに行くようになった今、僕にはやりたいことがあった。
「家に行くの楽しみだな」
隣にいる女の子が微笑む。
僕の心臓がドクンドクンと鳴っているのが分かる。初めて大学の飲み会で、女の子のお持ち帰りに成功した。
そして今日は、咲は家にいない! これは……期待してもいいんじゃないのか!
「こ、ここが僕の部屋です……」
「ありがとう」
女の子は部屋に入ると、ぐいっと背伸びをして足を伸ばした。
「なんだか、ちょっと酔っちゃったかも」
「みみ、水を持ってきます!」
急いでキッチンに向かう。コップに水を汲もうとするが緊張で手が震える。
「ねえ、横になってもいいかな?」
「い、いいよ。今、布団を出すから待ってて」
「え?」
「あれ、違った?」
女の子が微妙な顔をする。そして少し間を置いた後に「いいよ」と答えた。
もしかして何か対応を間違えただろうか。
押し入れに向かって扉を開けた瞬間、僕は2つ後悔した。
まず1つは、女の子の真意に気付いたからだ。布団を出すと言ったら女の子が驚いたのは、本当に横になりたいわけじゃなくてベッドに行って夜遊びをしたいを言い換えただけだったのだ。つまり、僕は緊張しすぎて手を出すタイミングを逃したのである。
そしてもう1つの後悔はすぐに襲ってきた。緊張のあまり忘れていたのだ。押し入れの中に大量の百合本を入れていたことを。
押し入れを開けた瞬間、雪崩が起きたみたいに本がばらばらと落ちてくる。
やばい、と思った時にはもう遅い。
「なに、漫画?」
女の子が百合本を手にして中をぱらぱらとめくる。そして、思いっきり顔をしかめた。
「……あ、あの」
「ごめん、私帰るね」
「あっ……」
弁解する余地なく、女の子はさっさとカバンを持って出て行ってしまった。
僕は拳を握り、ここにいない妖精への怒りを叫んだ。
「咲のバカあぁぁああああぁああ‼」




