カラスのクウ
カラスのクウはいつもおそいのです。
「まだかな、まだかな」と待ってはすべてがおわっているのです。
ある冬のことです。
ねぐら近くの公園で一羽のカラスをみんなでかこんでおりました。
中心にいる子は得意そうに胸をはります。
「おい、よく見ていろよ」
くわえているのはひとつの小さなクツ。
それはポトンと地面に落とされました。
すると──
キラキラキラキラ。
クツの底がキラキラと光りました。
『わあ』
みんなで声をあげました。
「すごいすごい。これはなに?」
「さあな、人間のクツだと思うんだが、よくわからん。ゴミ捨てばに落ちてたのをひろって来たんだ。すごいだろ。ポトンと落とすとキラキラ光るんだ」
ぼくもやりたい。ぼくもぼくもとみんながあつまってきます。
クウはその様子を後ろからニコニコと見つめておりました。
みんながおわったらぼくもやりたい。
そう思いながら「まだかな、まだかな」と待っておりました。
しかし、そのままねむる時間がやって来ました。
クウは「明日はできるかな」と思いながらねぐらに帰って行きました。
次の日もクウはみんなの後ろで待っておりました。
ポトンポトンと色んな子がくちばしでくわえては落とします。
そのたびに小さなクツはキラキラと光っておりました。
クウは「まだかな、まだかな」と待っておりましたが、またねむる時間がやって来ました。
次の日も次の日もおなじでした。
クウはうしろからキラキラ光るのをニコニコ見ておりました。
少したつとだんだんと数がへってきました。
一羽へり、二羽へり、三羽へり、
そして、小さなクツのまわりにはだれもいなくなりました。
クウはよろこびました。
やっとぼくの番がやってきた。
クウが近づくとそのクツはひっくり返っておりました。
クウはくちばしでやさしくつまむと起こしてあげました。
「やあ、ぼくはクウ」
ペコリと頭をさげてあいさつしますが、小さなクツは何も言いません。
クウはワクワクしながらくわえるとポトンと落としました。
小さなクツは光りませんでした。
「?」
クウはコテンと首をかしげました。
もう一度くわえるとポトンと落とします。
小さなクツはやっぱり光りません。
クウは「ああ、そうか」と思いました。
またおわってしまったのか、と。
クウはいつもそうなのです。
「まだかな、まだかな」と待ってはすべてがおわっているのです。
かなしくなったクウはじっと小さなクツを見つめました。
何回もポトンとされたせいでしょうか、よく見るとそれはとてもよごれておりました。
クウはくちばしを使って羽づくろいしてあげました。
少しだけきれいになった気がしてクウはニコニコ笑いました。
クウは思いました。
光らなくなったなら、この子はもう落とされなくてすむのだろう。
それはもしかしたら幸せなことなのかもしれない。
クウはパクリとくわえると自分のねどこに小さなクツを持って行きました。
みんな、笑いました。
光らなくなった小さなクツはだれもほしがりません。
ただクウだけがいつまでもいつまでも大切にしたのでした。




