表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

冬の童話祭り参加作品

カラスのクウ

作者: 水泡歌

 カラスのクウはいつもおそいのです。

「まだかな、まだかな」と待ってはすべてがおわっているのです。


 ある冬のことです。

 ねぐら近くの公園で一羽のカラスをみんなでかこんでおりました。

 中心にいる子は得意そうに胸をはります。

「おい、よく見ていろよ」

 くわえているのはひとつの小さなクツ。

 それはポトンと地面に落とされました。

 すると──

 キラキラキラキラ。

 クツの底がキラキラと光りました。

『わあ』

 みんなで声をあげました。

「すごいすごい。これはなに?」

「さあな、人間のクツだと思うんだが、よくわからん。ゴミ捨てばに落ちてたのをひろって来たんだ。すごいだろ。ポトンと落とすとキラキラ光るんだ」

 ぼくもやりたい。ぼくもぼくもとみんながあつまってきます。

 クウはその様子を後ろからニコニコと見つめておりました。

 みんながおわったらぼくもやりたい。

 そう思いながら「まだかな、まだかな」と待っておりました。

 しかし、そのままねむる時間がやって来ました。

 クウは「明日はできるかな」と思いながらねぐらに帰って行きました。


 次の日もクウはみんなの後ろで待っておりました。

 ポトンポトンと色んな子がくちばしでくわえては落とします。

 そのたびに小さなクツはキラキラと光っておりました。

 クウは「まだかな、まだかな」と待っておりましたが、またねむる時間がやって来ました。

 次の日も次の日もおなじでした。

 クウはうしろからキラキラ光るのをニコニコ見ておりました。

 少したつとだんだんと数がへってきました。

 一羽へり、二羽へり、三羽へり、

 そして、小さなクツのまわりにはだれもいなくなりました。

 クウはよろこびました。

 やっとぼくの番がやってきた。

 クウが近づくとそのクツはひっくり返っておりました。

 クウはくちばしでやさしくつまむと起こしてあげました。

「やあ、ぼくはクウ」

 ペコリと頭をさげてあいさつしますが、小さなクツは何も言いません。

 クウはワクワクしながらくわえるとポトンと落としました。

 小さなクツは光りませんでした。

「?」

 クウはコテンと首をかしげました。

 もう一度くわえるとポトンと落とします。

 小さなクツはやっぱり光りません。

 クウは「ああ、そうか」と思いました。

 またおわってしまったのか、と。

 クウはいつもそうなのです。

「まだかな、まだかな」と待ってはすべてがおわっているのです。

 かなしくなったクウはじっと小さなクツを見つめました。

 何回もポトンとされたせいでしょうか、よく見るとそれはとてもよごれておりました。

 クウはくちばしを使って羽づくろいしてあげました。

 少しだけきれいになった気がしてクウはニコニコ笑いました。

 クウは思いました。

 光らなくなったなら、この子はもう落とされなくてすむのだろう。

 それはもしかしたら幸せなことなのかもしれない。

 クウはパクリとくわえると自分のねどこに小さなクツを持って行きました。

 みんな、笑いました。

 光らなくなった小さなクツはだれもほしがりません。

 ただクウだけがいつまでもいつまでも大切にしたのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
きらきら光る靴、幼い子どもたちが履いているものですね! カラスたちがそれを落として楽しんでいる様子が目に見えるようでした。 そして、いつも遅いクゥちゃん。 ちゃんと順番を守っていて、やっと順番になった…
クウは優しい子だから、遅くたって、もう大事なものを持っていますね。 他のカラスたちにとっては価値がなくなった物でも、クウにとっては大切にしたい物で。 クウを抱きしめたくなりました。 読ませていただき、…
うっ(ノд-。)クスン 色んな意味で泣けますね。 いつもおそい。 それで出来ない事も多いでしょう。 でも、だからこそ手に入れられる事もあるのでしょう。 自分だけのリズム。 誰と比べる必要はないのです…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ