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一時の静寂

 まーちゃんへ


 カシェや神殿騎士たちは、ダルジャン市民と騎士団が侯爵が雇っていた傭兵の大部分を無力化したことに成功したことに驚きを隠せないでいる。


「どうやったんですか?」

 カシェの問いに私は簡潔に答えることにした。

「一つ目は私がとある屋敷にいると偽情報を流してから、一部の傭兵を誘い込みました。それから、閉じこめて、火攻めしました」

「二つ目は?」

「春を売る女性たちに協力をしてもらって、侯爵の独立を祝う宴会を市民で開くという名目で、傭兵たちを呼び出しました。それから、酒で酔い潰したあと、寝首をかきいたのです」


 カシェは感心している。


 私は言葉を続けた。

「これにより、侯爵の兵を百人まで減らすことができました」

「それなら、守備に専念せざるを得ない人数です」

 カシェは笑顔で言う。


 侯爵が雇った傭兵の質が低かったことも功を奏したし、ダルジャン騎士団や市民が侯爵に反旗を翻したのも成功要因だ。


 そして、現在、カオリヤを始めとしたルーンブルクの元諜報部隊である影が裏切ったため、市内における状況はこちらが優勢になっている。


「しかし、エルスピオの呪いは依然として脅威ですから、油断できません」

 私の言葉にカシェが固い表情をした。


 私がカシェに、

「なにはともあれ、数日後に到着する王の軍とカリシュタ軍での戦闘結果に全てがかかっています」


 今まで静かに話を聞いていた騎士団長のノイッシュが、

「アニエラ様は……王が負けた場合は……」

「残念ながら、私は王の奴隷ゆえ結果はどうであれ帰還せざるを得なくなります」

「やはり……」

 彼は絶望したように天を仰いだ。


 カシェが勇気づけるように、

「王の軍は必ず勝ちます! そして、きっと皆さんの生活も良くなりますよ」

「はい。我々としてはアニエラ様にずっと市にいていただき、我々を導いていただけるとありがたいのですが……」


 私はノイッシュの言葉に思わずくすりと笑ってしまった。

「私にはそのような器はありません」


 数日の猶予の後、とうとう王軍とカリシュタ軍が向き合った。

 私たちはそれを市壁の上から眺めている。

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