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嵐の前の静けさ

 まーちゃんへ


 戦いが終わって数日が経った。

 私とカシェとカオリヤは今、町の教会や民家とかを転々としながら、身を隠しているよ。


 朝早くに、潜伏している宿屋に従士の一人が飛び込んできて、

「侯爵が反逆者を事前に取り締まるための治安強化を目的に、自身が雇っている傭兵やレビジュの私兵を町へと送り込んでる!」

「なんだって!?」

 団長のノイッシュさんも驚いて声を荒げた。


 従士は憤りを隠せないように、

「公然と民家を漁って、アニエラ様を探してるんだ! それで、気に入らないやつは連行して拷問してやがる!」


 侯爵はルーンブルク再興を名目に、独立を企てようとしているから、亡国の王女生まれの私がどうしても必要なのだ。


 ノイッシュさんは拳を力強く握り、

「町を奴らの好きにさせてたまるか! ダルジャン騎士団行くぞ!」


 その場に居合わせた騎士や衛兵たちも強い決意に満ちた表情で頷いた。


 侯爵の兵は現在二百五十人ほどで、レビジュの私兵は五十人。


 一方の騎士団は正騎士が十人、彼らを補佐する従士が二十人。市民から募集されて普段は市の出入り口や市壁の警備をしている都市衛兵が五十人。


 人数的にはかなりの劣勢だ。


 昼前に騎士団は広場へと向かい、侯爵の傭兵の小競り合いをした。

 ありがたいことに、負傷者は出たけれど死者はいない。


 劣勢なのだけれど、立ち上がった騎士団の活躍を見た市民の一部が有志として協力を名乗り出た。


 もちろん、彼らに戦闘能力はないから、バリケートを作ったり、偽情報を流したりという後方支援担当だ。


 侯爵の傭兵への奇襲はカシェやカオリヤが担当し、私は潜伏地で侯爵の兵士やエルスピオと思われる術者が使う魔法を感知し続ける。


 戻ってきたカシェが、

「王都以外にも周辺の貴族たちが兵を出してくれたらいいんですけどね……」

「だといいのですが……」私は無理だろうと思っているから、気のない声で言った。

「僕の領地から兵を出せればいいんですけれど、僕ここですからね」

「王都に異変があったので、まず無理でしょう」


 貴族たちも自領の守りを固めなければいけない。


 市内での散発的な乱戦が続き、事態は膠着状態となった。


 私は窓の外を見た。空はきれいなオレンジ色をしている。

 ダルジャンの大聖堂の塔にある鐘を、神官が鳴らし、人々が家路へと急ぐ。


 騎士団に初めての死者が出たのは、夜中のことだった。


 カオリヤが燃やし尽くしたはずの大男の巨大な斧によって叩き潰されたのだという。


 死者の肉体に呪いをかけたのだと思う。

 かき消せればよかったけれど、結界の中で呪いを行使されると感知ができないんだ。

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