再びレビジュ氏へと再会へ
まーちゃんへ
ノイッシュさんのお宅に、彼が信用して、かつ侯爵に反対する騎士たちが数人集まってきた。
騎士の一人が、カシェの紋章を見て、本物の侯爵だということを認めつつも、不安げに尋ねた。
「本当に、王は我々に報奨を出してくださるのでしょうか。新しい領主になっても生活が変わらなかったり、いや、今より酷い暴政になっては……」
確かに、この人たちは侯爵の暴政に苦しんでいるようだし、王がどういう人か知らないから、疑ってしまうのも仕方がないよね。
私はその騎士を指差して、
「あなたはちょっとした回復魔法なら使えますね。そして、胸元にお持ちの物には、幸運の加護が与えられていますね」
騎士はびっくりして、胸元からネックレスを出した。
「な、なぜそれを……」
周りの騎士たちも驚いて、顔を見合わせている。
私は静かに言った。
「これが私の能力であり、私が王の奴隷である理由です。王はこの能力を他者に流出することを恐れています。だからこそ、私を王の元へ連れて行った者へ報奨を出すのです」
騎士たちもこれには黙るしかなかった。
さらに私は続けた。
「私は王の側に仕えているのでわかりますが、王は心がお優しい方です。皆さんの働きに感謝の意を示し、皆さんの待遇や次の統治者についても何かしらの配慮をしてくださるでしょう」
騎士たちはこれでだいぶ勇気づけられたみたいだ。
彼らにしてみれば、出世のチャンスでもある。
私は、
「手紙を書きますので、誰か王城へ行って、私がダルジャンにいることと侯爵の企み、背後にカリシュタやルーンブルクの残党がいることを伝えてください」
騎士の一人が名乗り出て、私は急いで手紙を書いた。
筆跡鑑定をすれば、私が書いた手紙だとわかるけれど、念には念を入れて、服の一部を切り取り、手紙に同封した。
今、私が着ている服は神殿の神官が作った特別な加護が込められた布だ。だから、誰かがなりすますことは不可能だ。
私が手紙を書き終えると、もうすっかり夜だというのに、騎士が早速王都へ急ぐと言う。
私は騎士を見送り、無事に手紙が届くことを祈った。
一段落ついたら、今度は夕食が振る舞われ、私は騎士たちと一緒の食事となった。
私は奴隷のため、床に座ろうとしたところ、ノイッシュさんが慌てて、声をかけた。
「アニエラ様。どうか我々と同じ卓にお座りください」
「私は奴隷のため、それでは皆様方に対して失礼に当たります」
「滅相もございません」
ノイッシュさんが首を横に振った。
カシェが、
「師匠。せっかくですから、座ってくださいよ。この人たちにしてみれば、師匠は貴族と同じですよ。侯爵の僕にしてみても、あなたは雲の上の人ですよ」
「それでは、失礼ながら卓に座らせていただきます」
私は若干の居心地の悪さを感じながら、椅子に座った。
ノイッシュの奥さんは恐縮しながら、
「高貴な方々のお口に合うかどうかわかりませんが……」
そう言って出してくれたのは豆と野菜の煮込み、黒くて固いパン。それに、チーズだ。
私は言った。
「ご安心ください。私や城の召使の方々が普段食べているものと一緒です」
「そうなのですか? てっきりもっと良いものを食べているのかと……」
「晩餐会などの催しがあれば、貴人の方々が残されたものをいただけることもありますが、滅多にありません」
日本だと、他人の食べ残しを食べるなんて汚いと言われるんだろうな。
でも、こっちの世界は晩餐会や催しでは経済力を示すために、貴族たちは食べ切れない量の食事を用意するのが普通だ。
だから、食べ残しもそれなりの量が出るのね。それは貧者に振る舞われたり、召使が食べることになるんだよ。
カシェも奥さんを気遣って、
「僕、今でこそ棚ぼた相続で侯爵ですけど、去年くらいまでは貧乏子爵として、一人暮らしだったから、毎日パンだけでしたよ」
宮廷魔術師なんだから、給料はいいはずなんだけどね。
私はパンを飲み込んでから言った。
「次はレビジュ氏との再会ですけれど」
「朝イチで突撃しますか?」
カシェが私に尋ねると、ルキスが自信ありげに言った。
「それでは、レビジュ氏の配下に捕らえられてしまいます。僕に任せてください」
「わかりました。お任せします。私はどのように動けば、レビジュ氏に安全に再会できるのですか?」私は運命を正しく視る魔術師に問うた。
侯爵の反乱に対抗するには、ルキスの言う通りに動くのが一番だ。




